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組み込みエンジニアは何を見るか

第10回 誰もやったことがないから組み込み開発は面白い

千葉大輔
2008/2/28

最近注目されている組み込みエンジニア。彼ら、彼女らは、どんな製品にかかわっているのだろうか。

 インターエナジーは、Bluetoothや無線LAN、NFC(Near Field Communication)といった通信機器を中心に、ハードウェアの開発からOS、開発ツール、ファームウェアの開発を行っている。同社の技術部 第2技術グループ テクニカル・マネージャである坂井浩司氏(29歳)は、それらの近距離無線通信の分野で製品開発を行っている。今回は坂井氏に組み込み開発に携わるようになった経緯や組み込み開発の醍醐(だいご)味について聞いた。

紆余(うよ)曲折の後に組み込み開発へ

インターエナジー 第2技術グループ テクニカル・マネージャ 坂井浩司氏

 高校生のころからデスクトップミュージックでPCに慣れていたという坂井氏。そのまま音楽の世界に身を置きたいという気持ちから、レコーディングエンジニアを養成する専門学校へ入学した。1年ほど学校に通いながら業界を眺めるうちに「この業界は下火になっている」と感じたという。アナログからデジタルに切り替わり、安価で高性能な機材が次々と登場し、それまでのレコーディング風景が一気に変わった。「業界や現場から人が減るのではないか」そんな予感がした。

 しかし、音楽の世界への未練は断ち切れなかった。安価で高性能な機材で現場が変わる。ならば、そうした機材を作るところに就職したいと思うようになった。そのために坂井氏は「大学に行くことが必要だ」と考えた。大学の電気工学科に入り、回路をはじめとしたハードウェアについて学んだ。

 大学生生活を終え、就職。「自分が持っているものから考えると、純粋にハードウェアをやるという選択肢と、ハードウェア寄りの部分でソフトウェア開発を行うという選択肢がありました」と坂井氏は当時を振り返る。ここで坂井氏が選んだのは、ソフトウェア開発だけを行っていた会社だったが、説明会や面接では、「これから組み込みを充実させていく」という雰囲気が感じられた。「ここならハードウェアについて勉強したことが役に立つかもしれない」。そう思った。

 坂井氏の期待とは裏腹に、入社してからは純粋にソフトウェア開発を行ったという。しかし、8カ月ほど働いたところで、会社の事業縮小に見舞われる。そんなときちょうど、当時その会社ののオフィスの隣に事務所を構えるインターエナジーに誘われ転職。念願の組み込み開発に携わることになった。

 「ようやく自分の強みが発揮できると思いました」

通信機器開発の難しさ

 転職した坂井氏は、Bluetoothの音声コーデックの実装開発や、無線LANをはじめとするさまざまな無線のパワー、チャネル、通信方式を識別する電波識別機の開発などの製品開発に携わった。

 もちろん、組み込み開発だけではなく、製品評価やテスト用のアプリケーションを作ったり、製品のOSやブートローダの開発なども担当した。現在もやはりBluetoothや無線LAN、NFCといった近距離無線技術を中心に開発業務を行う。

 通信系の製品開発の難しさについて、坂井氏は次のように話す。

 「無線関係で一番難しいのは、通信をする相手の機器が何か分からないということです。例えば、私は以前にBluetoothのスピーカーのファームウェアを開発したのですが、そのときに、ある携帯電話ではスピーカーとつなげるけどほかの携帯電話ではつなげないということがありました。そういった問題が、無線通信系の開発をするときに大変というか、まず壁になる部分です」

 無線通信の仕様は決まっているが、ちょっとした仕様の解釈の違い、あるいはまったくイレギュラーな実装があると動作に大きく差が出る。「ほかの会社の同じスペックの製品では動作するが、自社の製品では動作しない」ということも起こる。そういった問題の対処にどの企業も頭を悩ませているという。その「壁」を乗り越えるにはどうしたらいいのだろうか。

 「地道にやるしかないですね」と坂井氏は話す。通信先の機器がどんな実装をしているのか分からない中、発生している問題について考えられる可能性に対して、1つ1つ地道に対処していくしかないのだという。

組み込み開発。そのだいご味  

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