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若手エンジニアを育成せよ。

ロボット工学分野の新資格認定・検定試験

千葉大輔(@IT自分戦略研究所)
2007/12/26

 ゼットエムピー(ZMP)、FRI、パソナテックの3社は11月27日、学生や製造業のエンジニアに向けて、技術者育成を目的にロボット工学分野における資格認定と検定試験を行う新会社「ロボテスト」の設立を発表した。組み込みエンジニアを初めとして、人材不足が叫ばれる製造業において、広く活躍できる人材の育成に取り組むとしている。

 従来の産業用を初めとして、最近は業務用のサービスロボットや家庭用のロボットが登場するなど、ロボットの産業化が進んでいる。そして、ロボットに用いられる技術は、自動車から家電などさまざまな分野で導入されている。それに伴い、それらの技術を習得したエンジニアの存在が重要となる。

製造業における技術者育成のニーズ

 
  ZMP 代表取締役社長 谷口恒氏

 新会社の設立と、認定資格をスタートさせる背景として、ロボテストの代表取締役社長を務めるZMP 谷口恒氏は、これまでの教育事業を展開する中で、顧客である企業や教育機関と話し合っていくうちに、さまざまなニーズや課題が見えてきたいう。

 まず、企業のニーズとして「自動車や家電業界でロボット技術に対するニーズが高まっているが、そういった技術を教育するようなプログラムが不足している」「モノづくりの本質にかかわる基礎技術の伝承が求められている」「技術の細分化に伴い、特定領域の専門家が増えたが、全体を把握できるエンジニアを教育できていない」「採用時に、大学の学部・学科だけでは技術スキルの判断がしにくい」「転職時、社内での業務アサインの際にスキルを評価する仕組みがない」という課題が挙がってきた。2007年問題でこれまで社会を支えてきたエンジニアが企業を離れる中で、その後を引き継いで活躍する若いエンジニアの育成が必要だが、なかなかそうしたエンジニアを育成できていない。また中小企業では育成のためのノウハウもそろっていないのが現状だろう。

 そして、教育現場では 「学生が心をおどらせるような魅力ある教育プログラムが欲しい」「ものを作り、実験をして技術の本質を習得できる、実践に適した教材が欲しい」などのニーズが挙がってきたという。

 現場における教育ニーズから、エンジニア育成のためにロボット技術を核とした教育プログラムと、個々のエンジニアのスキルを評価するための検定試験を提供することにしたのだという。

業界内における人材不足への危機感

 現在の製造業における人材不足は深刻だ。組み込みソフトウェア技術者だけで見ても、それがよく分かる。IPAが2003年から毎年報告している「組み込みソフトウェア産業実態調査」では、国内組み込みソフトウェアエンジニア人口は約23万5000人と推定されるが、9万9000人の技術者がまだ不足しているという。とにもかくにも人材育成は、モノづくりの日本を担う産業界全体の問題として、急務となっている。

 こういった人材育成への危機感は、新会社を共同設立するFRI、パソナテックも同様に抱いている。

 
  新会社を共同で設立する3社の代表

 FRI 代表取締役 竹中恭二氏は「産業界に貢献するモノづくりの人材育成を通じて、将来の日本を支えていく活動ができれば」という思いからFRIを設立したという。竹中氏は現在のロボットに関して、「ロボットはセンサー機能、制御機能、移動走行機能、操作機能という4つの機能から成り立っているが、デジタル技術の発展により、ソフトウェアで何でもできるという錯覚に陥っているのでは」と問題喚起をする。「ロボットは非常に多様な技術の集積したシステムであり、実用性や信頼性を高めるためには、しっかりとしたハードウェア・基盤技術が強力に支える必要がある」と、実用ロボット開発においては幅広い技術知識が要求されることを強調し、「富士重工業の協力を得て、機構・構造設計やセンサー技術といった得意分野を生かして、モノづくりの本質に迫る実践向けのエンジニア育成コンテンツを作り、ロボットだけではなく広い産業分野でモノづくりの実践ができる人材育成に貢献していきたい」と話す。

 パソナテック 代表取締役社長 森本宏一氏は、「最近の製造業について、国際間の競争や企業間の競争ということが特に焦点が当たっていますが、そういった競争を考えるときに重要なのはエンジニア個人ということです。優秀な技術者の方々が素晴らしい技術を生み出せる構造を作れているのか。技術者のスキルで世界をリードすることが大切だと考えています」と人材育成の重要性を語る。それに加えて、「いろいろ顧客と話す中で必ずいわれるのは、技術者が足りないということ、企業が求める技術的なニーズを満たす人材がなかなかいない。そこで必要なのは業界内で人を取り合うのではなく、業界全体で人材育成をしていかなくてはいけないということです」と話す。

認定試験のスキーム

 3社の役割として、ZMPとFRIは教育コンテンツ、カリキュラムの提供、講師派遣を行う。パソナテックは資格認定と検定試験の策定スキームやアセスメントスキームの提供を行う。ロボテストでは、こうした教材の販売や研修に加え、資格認定と検定試験のアドバイザリーボードを設置し、コンテンツの改修などを行う。

 ロボテストは個人向けと法人向けにサービスの提供が予定されている。個人は学生やエンジニア、教師を対象に教材や、検定テキストの販売を行うほか講習会や、検定試験、資格の認定を行う。法人向けでは、企業や教育機関、自治体を対象に個人向けのサービスと合わせて、一社研修や講義請負なども予定している。

認定試験と講習の概要

 ロボット工学で用いられる技術を「機械設計」「アクチュエータ」「組み込みシステム」「電子回路」「ソフトウェア」「認識」「制御システム」の7つの領域にわけ、それぞれに対して、講習会や教材が提供される。そして、7つの領域内ではさらにこまかく技術要素ごとに分けられている。

 検定試験では7つの領域ごとのスコアで評価され、このスコアには有効期限が設定されるという。予定では検定は年4回実施される。また、講習会もこの7つの領域ごとに行われる。より高度な技術者向けには認定試験を実施、技術習得を示す資格の発行を行う。

 ロボテストの今後の予定は教材の販売、講義請負、一社研修から業務をスタートし、2008年に認定試験のベータテストを行い、2009年から本格運用を始めるという。谷口氏は「5年後には10万人規模の試験としたい」と豊富を語った。

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