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コラム:自分戦略を考えるヒント(45)
読書で鍛える自分戦略

堀内浩二
2007/9/28

 こんにちは、堀内浩二です。今回は「読書」についてです。

 最初に編集部から「来月は『読書』というキーワードでどうですか」といわれたときには、ちょっと気乗りがしませんでした。これほどいわれ尽くし、また皆さん1人ひとりが自分なりのやり方を持っているような事柄について、コラムにまとめるのはいかにも難しい。そこで1人の本好きとして、わたしなりの読書のやり方をご紹介したいと思います。

図書館を活用する。気に入ったら買う

 多くの自治体で、ネット経由での図書の検索・予約が可能です。わたしの市では一度に借りられるのは6冊までですが、20冊までは予約待ちができます。目を通しておきたいけれど買おうかどうか迷っている本は予約しておき、実際に読んでみてよかったら購入します。

 また書面で依頼すれば県下の全図書館を検索し、もしあれば取り寄せてくれます。絶版になった名著などもかなり発掘できます。地元の図書館が提供しているサービスはぜひチェックしておくべきでしょう。

知人・友人から紹介された本はできるだけ読む

 自分のことを理解している友人が薦めてくれる本は、貴重なヒットが多い。これがわたしの経験則です。ネット書店の「この本を買った人はこの本も……」式のアルゴリズムでは決して発見できない、でもなぜか自分の感性に合った本に出合えるのが、このルートです。

 本を薦めてもらうには、自分の好きな本について知ってもらわなければなりません。日ごろからブログで書評を書いたり、面白かった本について話題にしていれば、自然と互いの好みは知れてきます。

 ただし読書は時間を食う行為でもあります。自分の感想を述べたら、その本を読むかどうかは相手に任せています。ただ、1年に1〜2冊は「彼(女)も面白いと思ってくれるはず」と直感的に思える本が出てくることがあります。そういうときは、ここぞとばかり推薦します。

 上記の裏返しで、本を薦めることを「押しつけがましい」としてためらう人も少なくありません。そこで、紹介された本はできるだけ読んでみて、カジュアルにフィードバックをするようにしています。読み逃した本については、正直にそう伝えます。

 「あの本読んだ?」と聞くことは控えています。読んで面白かった本は自然と話題に上がります。話題に上がらないということは、読んでいないか読んだけれどつまらなかったかのどちらかでしょう。どちらにせよ、わざわざ確認するには及ばないと考えるからです。

本は大事にする

 本は線を引いても破いてもいい、自分の頭に吸収できればいいんだという人もいます。わたしはまったく同じ理由で、本をていねいに扱います。大事にすることで、いま目にしている情報が自分にとって重要であることが脳に伝わる……かどうかはともかく、そちらの方が自分の頭に吸収できると思うので。線を引くこともありますが、多くの場合はポストイットを貼っておいて抜き書き(後述)します。

著者の意図をくむ

 本を1冊書くのは大変な労力で、その割にほとんどの場合(経済的には)報われません。とすれば、著者にはそれなりの意図があるはずなので、「はじめに」「あとがき」などからそれをくむように努めています。そうすることで、通読してから「内容は良かったが、自分の役には立たなかった」というような批評をせずに済むと考えています。

批判のために時間を使わない

 世の中に良い本はたくさんあります。自分にとって学ぶことがなかった本の批判に時間を費やすよりは、次の本を探しに行きます。

印象的な部分は要約でなく「抜き書き」する

 学んだことを振り返るために書評にまとめるのも好きなのですが、「抜き書き」もやっています。気に入った文章は丸ごと、といっても最大でその本の半ページくらいになるよう厳選しますが、抜き書きをして保存しています。

 要約を心象画とすると抜き書きは写真です。著者の文体ごと書き写しておくことで、本の雰囲気や読後感を多少なりとも再現することができます。

 また、本当に良いと感じる文章は、編集を許しません。著者・翻訳者の方が心を砕いて作ったので日本語として優れているということもありますが、意味だけでなく文体や比喩、そのほかの調子をひっくるめ、オリジナルの文章でなければ伝わってこないメッセージというものもあります。

原則集を作る(偉い人たちの言葉だって借り物だ)

 難しい決断を迫られたときなどは、自分の判断基準となるような言葉に助けられることがあります。自分の「原則」のようなものを文章にまとめている人は少なくありません。わたしもそういう文章をいくつか作り、メンテナンスしています。

 いわゆる成功者や尊敬する大先輩の座右の銘や大事にしている言葉であっても、多くは故事成語であったり、人に教えてもらった言葉です。そういう意味では「借り物」の言葉です。ただし、経験の中でその言葉に自分なりの意味を見いだしているからこそ、「自分の言葉」「原則」として紹介できるのでしょう。

 そういった言葉をゼロから自分で紡ぎ出すのはとても難しいですし、世の中「良い文章」のひな型には事欠きません。ですから出掛けて行って、現在の自分にビビッとくる文章に出合うだけだと思っています。

 ちなみにわたしが一番読み返している文章は、ある人の墓碑(といっても原稿用紙1枚くらいの長い文章)です。墓碑ですから褒め言葉がズラリと並んでいます。「墓碑にこう書かれるような人間になりたいなあ」ということで、メモをためておくソフトの先頭に載せています。

筆者紹介
堀内浩ニ●アーキット代表取締役、グロービス経営大学院 客員准教授。アクセンチュア(当時アンダーセンコンサルティング)にて、多様な業界の基幹業務改革プロジェクトに参画。シリコンバレーに移り、グローバル企業のサプライチェーン改革プロジェクトにEビジネス担当アーキテクトとして参画。帰国後、ベンチャー企業の技術および事業開発責任者を経て独立。現在は企業向けにビジネスリテラシー研修を提供するほか、社会人個人の意志決定支援にも注力している。

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