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不定期コラム:Engineerを考える(3)
自分にとって資格とは


加山恵美
2003/4/17

資格は永遠のテーマ?

 資格は必要か不要か。資格は役に立つのか。資格は取得すべきか。

 エンジニアをしていれば、1度はこのような問いが頭をよぎったことがあるだろう。@ITのEngineer Lifeフォーラムで連載された「エンジニアに資格は必要か?」の記事の人気の高さ、それに関連した@IT会議室(現在では@IT自分戦略研究所会議室)の書き込みを見ても、資格の意義はエンジニアにとって普遍のテーマであることがよく分かる。加えて、意見が割れて論争になりがちなことも……。

 私はこのテーマへの答えが、1つである必要はないと考えている。私の考えは「人による」だ。各人の境遇や価値基準が多様なのだから、導かれる結論は十人十色となるだろう。つまり、誰にでも当てはまる正解はないと思う。大事なのは一般論として誰の意見が正しいかよりも、自分なりの結論を見いだすことにあるのではないだろうか。もちろん、以下の意見も私なりの意見だし、私なりの結論でしかないが。

 条件をよく見極めたうえでの資格なら、私自身は容認してもいいと思うが、それでも資格に過度の期待を寄せるのはよくないと考えている。確かに、名刺や履歴書に資格が並べば他者に好印象を与えられる可能性は高まるだろう(もちろん、勤めている企業の方針もあるだろう)。試験に合格すればそれなりの知識を習得した証にもなるだろう。しかし、万能ではない。認定証を手にしたその日から、安泰と幸福が保証されるわけではない。分かっていつつも、つい期待しがちなのが資格の落とし穴でもある。過剰に期待したり固執すると本末転倒になる。

資格のメリット

 資格の意義について考えるなら、1度は自分だけに焦点を当てて将来予想図を描いてほしい。期待とか理想ではなく、より客観的な要素で比較してみる。漠然とした想像をより明確にするのだ。自分が持つ条件に当てはめて、資格取得後にどんな効果が得られるのか。その効果を得るためにどれだけの対価を払わなくてはならないのか。

 一般的だが、いくつかメリットとなる項目と検討事項を挙げる。これらの条件が自分にどのくらい当てはまるのか、これらのメリットを自分はどのくらい受けられるのか考えてみよう。

●技術力の証明
自分の技術力を客観的な指標で証明する頻度と必要性がどれだけあるか

●技術の補強
受験勉強を通じて自分の知識や理解を深めることができるか

●会社の評価制度
いまの会社またはこれから受けようとする会社が資格取得者に対してどのような評価制度を持っているのか

 これらの項目と同列に並べるのは難しいが、気持ちの問題も無視できない。つまり資格によって自分の意識が高揚したり、自信を高めることができる人もいる。自信過剰では困るが、自分が前向きになれるならそれも立派なメリットとして数えてよいだろう。

私の個人的な資格体験

 かくいう私も資格を取ったことがある。情報処理技術者とあるベンダ資格だ。情報処理技術者は取らないと将来の給与に不利になるから義務的に取得した。一方ベンダ試験は積極的に取得した。いまから思えば「もどかしさ」も自分を後押ししたのだと思う。当時は親会社の合併により、若いエンジニアの配置は特に流動的だった。立場の不安定さや将来の不透明さに不安を感じていた。だから自分の技術と意欲を上司に誇示し、少しでも自分の求める仕事に自分をつなぎ止めておく碇(いかり)となるものが欲しかったのだと思う。もちろん多様な経験を積むことが重要だとも分かっていたが、私は何よりもまだその技術を追求したかった。エンジニアとしての行き先を少しでも自分でかじ取りできるようになりたいという「もどかしさ」があった。

 手前味噌でもあるが、自分の経験からも、資格取得へ向けて努力することは決して無駄だとは思わないし、むしろ応援したい。しかしせっかく努力するなら、確実に利益をものにしようではないか。利益は自分の満足感や達成感だけでも構わない。本当にその資格が欲しいのか。本当に必要なのか。自信を持って「イエス!」なら、気持ちが熱いうちに取ってしまおう。資格を取得したからといって、後に自分の障害となることはまずないだろうから。

 資格は自分のエンジニアキャリアにおける戦略の1つだ。自分を有利にするための戦術でもある。自分の業務や境遇にプラスとなる資格はきっとあるだろう。ただし、必須ではない。どんな資格なら自分に有利なのか、どんな勉強方法なら効率的なのか、自分にとっての最良の戦略を見いだしてほしい。

 自分の戦略といっても、自分だけで練る必要はない。情報収集、意見交換は十分意義がある。違う境遇や違う価値観の意見は大いに参考になるだろう。でも、忘れてはならないのは最終的な決断を下すのは自分自身であるということである。

筆者紹介
加山恵美(かやまえみ) ●茨城大学理学部化学科卒業。金融機関システム子会社とIT系ベンダにてシステムエンジニアを経験し、グループウェア構築や保守などに携わる。そのかたわらで解説書を執筆していたが、それが本業と化す。技術資料を提供することで、日夜システムと格闘しているエンジニアをサポートできればと願う。幼少からバレエを始め、現在コンテンポラリーダンスを習っているが、いまだに身体が硬いのが悩みとか。双子座A型。

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