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不定期コラム:Engineerを考える(11)
エンジニアは仕組みにこだわる

加山恵美
2005/9/13

エンジニアらしいと思う点は

 ITに限定することなく「エンジニアらしさ」があるとしたら、それはどんなものだろうか。そんなことを質問されたので考えてみた。ふとしたところで垣間見る「エンジニアっぽいなあ」と思えるような特徴を考えると、その1つに仕組みにこだわることが挙げられるかもしれない。

 一般的なエンジニアを考えるに当たり、どこまでがその範囲となるかあらためて疑問がわいた。そこで辞書で「エンジニア」をひいてみると「機械、電気、土木、建築などの技術者。技師」とある。専門スキルを持つことに加え、何かを作ること、またはその作られた特殊な機械を操作することが特徴になりそうだ。IT系の言葉を当てはめるなら、技術者は開発者、技師は運用管理者ともいえるだろうか。

 一般的な技術者や技師とイメージすれば近年出没した職業ではなくなる。直感的なイメージでは、機械に強いということだろうか。機械といっても、大きなものから小さなものまで、シンプルなものから複雑なものまである。もちろんコンピュータも含める。機械を扱うことや機能を見比べることが好きなど、機械にはこだわりを持つタイプといえようか。

 機械に強いといえば、年配でも技術職に就いていた人はパソコンも無難に扱えるようだ。さすがにパソコンを自作するような人はお目にかかったことはないが(でも探せばいそうだ)、冬になりパソコンの調子が悪くなったというのでパソコン本体の電源近くにヒーターを置く人がいた。「寒いとコンデンサーがね……」と語り始めて感服してしまった。パソコンが機械であるのは当然といえば当然だが、自分にはそういう感覚はなかった。「さすがエンジニア」と思わされた。

機械に対する視点が違う

 機械に強い人とそうでない人の違いを考えると、機械に対する視点が違う。一般ユーザーとして電化製品を見るときでも、常にその仕組みを考えているようだ。この部分とあの部分がこう働いているようだとか、この部品をこう動かすにはここの形状をこう工夫したのだろうとか。中には製造工程にも想像が及んだりする。特にオフ会に出掛けるとこういう人を山ほど見掛ける。

 逆に仕組みにはあまり興味がないタイプはというと、その分外観に目がいく。デザインはおしゃれかカッコイイか、家電なら配置する周囲との調和など。内部がどのように作られているのか、というよりは、外部から接触できる範囲でどう出来上がっているかだ。またその製品によって自分の生活にどんな恩恵があるのか。一般ユーザーなら至極当然な視点ではあるが、そうした視点を持ちつつもより内部の仕組みへと目を向ける割合が高いように思う。

 より端的にいうなら機械好きな人は、電気で動くものからガソリンで動くものまで、動くものはおおよそ好きのようにも思える。ただそうした動くものへの興味が興味だけに終わらず、自ら作ることに能力を発揮できるようになると、それがエンジニアの部類になるのかもしれない。そして技を極めると「匠」の境地へと到達するのだろう。

理論と結果との整合性にもこだわる

 私自身はというと、機械にはさほど強くない。少なくとも周囲のエンジニアと比べれば。コンデンサーといわれてもさっぱりである。

 ただ仕組みにこだわるといえば、身に覚えがなくもない。ソフトウェアでも理論の世界ではあるが、仕組みがある。いわゆるアーキテクチャだ。どういうプログラムが組み合わされて全体を構成しているのかなどには興味を持ってしまう。とにかくエンジニアの立場ならアーキテクチャを極めれば、運用でも最大限の効果を発揮することができるから仕組みを知ることは実利がある。パフォーマンスチューニングにこだわるのもエンジニアらしさなのかもしれない。

 そこでふと思うのだが、こうした仕組みにこだわるということは理論と結果の整合性にもこだわることになると思う。つまり「こういう構造になっているのだから、ここをこう変えればこういう効果が得られるはずだ」と考えるということだ。

 この「〜はずだ」は自分でも口癖のように多用しがちと自覚している。文章を書いていてもつい「〜はずだ」というフレーズがよく出てきてしまうのだ。日常でも「こういう仕組みなら、こうなるはず」と考えがちなのだ。ただしこれは考えものだと思う。

期待とストレス

 なぜなら「こうなるはず」と考えても、期待とおりにならないこともあり得るからだ。あまり「こうなるはず」と確信を強め過ぎると、視野を狭めがちになるし、想定外の結果に落たんすることにもなりかねない。もちろん結果を想像するのは悪いことではないし、何か見落としていたり別の原因があると違う結果が出てくることも想定できるような余裕を持てるようにしたい。

 エンジニアにはきまじめな人間が多いとか、その性格によりストレスが高いと聞くと、こうした「はず」的思考も関係あるのかなと思う。それになにせエンジニアには完ぺきさを求められることも多い。仕組みの理論に忠実に考えざるを得なくなる。だから難しいのではあるが、どこか適度ないいかげんさや柔軟さを持てるようにするのがエンジニアの課題かもしれない。と、自戒を込めつつ。

筆者紹介
加山恵美(かやまえみ) ●茨城大学理学部化学科卒業。金融機関システム子会社とIT系ベンダにてシステムエンジニアを経験し、グループウェア構築や保守などに携わる。そのかたわらで解説書を執筆していたが、それが本業と化す。技術資料を提供することで、日夜システムと格闘しているエンジニアをサポートできればと願う。幼少からバレエを始め、現在コンテンポラリーダンスを習っているが、いまだに身体が硬いのが悩みとか。双子座A型。

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