自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |


外資系コンサルタントのつぶやき 第13回
評価されるチャンスは2度

三宅信光
2002/7/12

   年に1度の評価のタイミング

 今回は、私のいる会社での評価のされ方と異動について紹介しましょう。これまでにも何回か評価や異動に関係した話を書いたことがあります(例えば、「第5回 技術スキルだけでは食えない」)。多少重複する点があるかもしれませんが、その点はご容赦ください。

 さて、評価はどのタイミングで行われるのでしょうか? 私の会社では、翌年度の年俸金額(給与は年棒で決まっています)の提示がある年1回だけです。このときには、上司から年間を通した評価が宣告され、それに基づいた翌年の年俸が示されるのです。そのときに示された金額に対して異議を唱えることができるかどうかは、私も知りません。制度としては異議を唱えても問題はなさそうですが、そうしたところで評価を変更することはできない、と聞いたことがあります(本当かどうかは知りませんが)。初めてこのことを聞いたとき、私は意外に思いました。私のいる会社には、ただでさえ自己主張の強い人が多いので、年俸に納得できず賃上げ交渉をする、といった猛者が多いのかと思っていたのです。実際、私は年棒に異議を唱えた人の話を聞いたことがありません。海外では賃上げ交渉もあるかもしれません。ただし、私の会社の人間は、提示された年俸に本当に不満があれば、すぐに転職を考えるだろうとは思いますが。

   それ以外にもある評価時期

 さて、年間を通しての評価は、いま書いたように、年1回の年俸提示時です。しかし、そのほかにも途中経過のように評価を聞かされる機会は何度かあります。所属する部門にもよりますが、自分のキャリアプランを上司や人事の人と話し合う場があります。だいたい年1回から3回くらい、その人のポジション変化などに合わせて行うのですが、そのときに会社への貢献度、前回のキャリアプランの達成度を評価します。

 キャリアプランの達成度は、期待された役割をこなすことができたか(会社への貢献度)、身に付けるべきスキルが期待どおり高くなっているかを評価し、伝えます。しかし、本人と会社側とでは認識にギャップがあることが多く、その点が議論となるわけです。状況によっては3、4時間ほど議論する人を見たことがあります。しかし、それが終わってもまだ議論が足りず、日を改めて再戦、といったこともありました。幸か不幸か私はそうした経験がなく、評価するときも評価されるときもスムーズに終わるのですが、それでもこのプロセスに1時間くらいは時間をかけます。

 評価でこれまで一番印象に残っているケースとしては、Aさんを思い出します。Aさんはある程度経験のあるコンサルタントです。本人が担当した範囲での仕事ぶりはほかのメンバーから信頼されています。ただし、コミュニケーションスキルに問題があるのと、ほかのメンバーをまとめる能力に欠けるところがあると判断していました。従って、リーダークラスの仕事を任せることはできないが、技術的なスキルは評価しているので、専門職として働いてもらいたい、とオファーしようとしたのです。

 しかし、Aさん本人の自己評価は、上司が自分を信頼してくれず、自分のやり方を認めてくれないため、能力を発揮できない、というものでした。それを証明するためにもチームをまとめる立場になりたい、だから現在の上司から離れたいという話だったのです。

   評価にはコミュニケーションが大切

 こうした事態になるかならないかは、評価する上司と、評価されるメンバーとの間で、日ごろのコミュニケーションがどの程度とれているかによって大きく変わります。このときのAさんの場合は、評価する側と評価される側で日ごろのコミュニケーションはとても悪く、両者の関係を修復するには難しいものがありました。つまり、Aさんだけではなく、Aさんの上司にも問題があったわけです。上司としては事あるごとに指摘していたつもりだったようですが、指摘する言葉には具体性が欠けていたようでしたし、Aさんも自分が持っている不満をもっと上司やその上のポジションにいる人間、あるいは人事部の人間に伝えるべきだったのです。

 結局Aさんは、別なプロジェクトに行くことになりました。そしてそのプロジェクトでも技術面では高く評価されたようですが、管理面での評価は悪く、結局本人が思っているようなポジションには就けなかったようです。しかし、別な上司が前の上司と同じような評価をしたことから、そうした評価にもある程度納得したようでした。

 さて、ここまでの話には驚くようなものはないと思います。最近では日本の企業でもキャリアプランを考えて、その評価について上司と部下が議論する、というスタイルはあちこちの企業で見られますし、目新しいものではありません。それでは、日本の普通の会社も、コンサルタント会社の評価方法に追いついた(?)のでしょうか?

   重要なのはプロジェクトでの評価

 それはたぶん違います。確かに、年何回か評価をされるタイミングがあり、そのときにある意味で最終評価がいい渡されます。しかし、最終評価の前段階として配属された各プロジェクトでの評価があるのです。

 部門にもよりますが、各プロジェクトは時間的に、また予算的にシビアな状況にある場合が多いのです。このことは、どんな開発をしていても同じかもしれません。時間と予算の制約のため、プロジェクトには余分な人間を抱える余裕はありません。従って、そのプロジェクトに有用な人間であるかどうかを非常に短いスパンで評価します。私がこれまで見た中で最も短かったのは、1週間程度でした。つまり、ある人がプロジェクトに参加してきて1週間たたずにレッドカードを突きつけられ、プロジェクトから去ることになったのです。

 その人(ここではBさんとしておきましょう)は、あるプロジェクトに特定の技術スキルを持っているという理由で配属されました。ある程度高いポジションで採用された人だったので、それなりのパフォーマンスは期待されていたのです。しかし、持っていると期待されていた技術についてBさんは、何とトレーニングを受けた程度の知識しかなかったのです。そこへいきなり実践的な知識を要求するのですから無理があります。

 しかし、こうした場合に私のいる会社では、「高いポジションなのだから何とかする」ことを要求します。Bさんはたまたまそのときは「何とかする」ことができませんでした。うまく動けないでいたBさんを見てプロジェクトのリーダーは3日目ぐらいから、「Bさんはダメだな」といい始め、1週間たたずに放出してしまったのです。

 この場合、Bさんのスキルを会社がきちんと見極めていなかったことにも大いに問題があります。私のいる会社では、社員のスキルについてきちんと把握できてないことが多く、こうした問題はよく起きます。しかし、それだからといって、プロジェクトを変更するような考慮はされません。

   プロジェクトでの評価は2回まで

 Bさんの評価は非常に悪かったはずです。そしてこうした評価がついてしまうと、どうしてもほかのプロジェクトから声が掛かりにくくなってしまいます。特に転職したばかりの人は、最初のプロジェクトで失敗してしまうと、どうしてもプロジェクトに入る機会が減り、さらに評価が悪くなりがちです。ただし、さすがに1度の評価ですべてが決まるわけではありません。最悪でももう一度チャンスがあります。そこで良い評価を得られればまた違った道が開けるわけです。しかし、次のプロジェクトで再度悪い評価を受けると、最悪の場合退職勧告になってしまいます。

 外資系コンサルタントも人の子。悪い評価を受けたとしても、再戦はあるのです。しかし、再戦のチャンスは何回もあるわけではありません。チャンスは2回。決して余裕のある数字ではありません。

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。