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外資系コンサルタントのつぶやき 第19回
データベース業界のビジネスモデル

三宅信光
2003/2/26

   あるデータベースコンサルタントとの出会い

 今回は、データベースに関連したお話をしたいと思います。といっても、データベース製品の話をするわけではありません。データベースベンダと呼ばれる会社も最近コンサルタント部隊を抱えており、そうした会社の1つと仕事をしたときのことを紹介しようと思います。

 データベースベンダのコンサルタントといっても、われわれから見ると、どうも2種類の方がいるようです。それは技術系の人と営業系の人です。技術系の方は、データベースに関するディープな知識を持っています。実際にシステム開発をしているときや、運用をしているときには、技術系の人と一緒にお仕事をする機会が多かったのですが、それが一段落すると、どうやら営業系の方との仕事(というより折衝でしょうか)が多くなってきたようです。

 Nさんというある技術系の方との仕事は、思っている以上にスムーズにいきました。また、大変楽しく刺激的でした。私がその技術系の方と馬が合いやすかったのかもしれませんが、Nさんはデータベースに関する深い知識を持ったコンサルタントで、さまざまな場面で助けてもらったり、助言をいただいたりといういう記憶ばかりです。

 私の会社は、以前紹介したとおり、深い技術知識を持つ人は少ないため、複雑な障害やパフォーマンスチューニングなどでデータベースベンダのコンサルタントに力を借りることが多かったのです。データベースシステムというと、いろいろな意味で安定性を求められますが、それなりにバグもあり、深い世界でのノウハウも必要となり、長く携わっていないと分からない微妙な部分が結構あるものだと痛感させられました。

   教えてもらうことばかり

 私がお付き合いさせていただいた技術畑のNさんは、私の素人っぽい(実際に素人なわけですが)質問にもていねいに答えてくれるだけでなく、ときとして“商売”抜きで障害対応してくれたこともありました。そうなると、われわれの対応も自然とていねいになっていきます。この当時、データベースについてさまざまなことを教えていただきました。

 このとき教えていただいたことは、その会社が一般にトレーニングを開催して教えていたことばかりでした。これは後で講義の内容を見て知ったのですが、それを受講すれば何十万円も掛かったことでしょう。まさに商売抜きの関係です(それが本当の意味でいいかはおいといて)。

 しかし、そのNさんも時とともに出世し、2年ほど前にいただいた名刺の肩書きには“マネージャ”の文字が……。Nさん当人は「現場に出られなくなってね」と寂しそうにおっしゃっていました。そのころ、担当しているクライアントで大規模なハードウェアの変更がありました。Nさんの会社からも若いエンジニアが数名、支援しに来ていましたが、後で聞いたところでは、Nさんが夜にやって来ては、徹夜で対応していたというのです(別にトラブルがあったわけではありません)。それを聞いて、変わらないなあと、なぜかうれしくなったのを記憶しています。

   困った営業担当

 さて、営業関連のMさんには、あまりいい印象が残っていません。あるクライアントからデータベースのサポート契約について、データベースベンダと交渉をしてほしいと依頼されたことがあります。そのクライアントは、ちょうど大規模な事業展開を終えたばかりで、まだ新規展開した事業状況を注意深く確認しているフェイズにあり、ITに限らず新規投資はもう少し時期が経たないと行わない意向があったのです。

 そのため、データベースに関してももうしばらくバージョンアップなどは行わず(後で述べるよう、バージョンアップが大規模な投資に結び付くためです)、データベースベンダとのサポート契約を延長しようと、そのクライアントは経営判断をしていました。

 私個人としても、現在クライアントが投資すべき時期ではないと判断し、クライアントの意見と一致していました。そこで、データベースベンダのMさんとの交渉で、まず最初にそうしたクライアントの状況を説明し、バージョンアップをクライアントに対してむやみに勧めないでほしいとお願いしたのです。

 しかし、しばらくしてクライアントの方から、「データベースベンダさんからバージョンアップの案内が届き、担当営業もしつこくバージョンアップを勧めるが、どうなっているのか? さらに、バージョンアップした製品上で稼働させる新しいシステムの提案までされたのだが……」といわれたのです。クライアントは私に交渉を任せていたので、それほど真剣には話を聞かなかったとのことでした。

   クライアントの状況よりも自社ビジネス優先

 結局私が担当営業のMさんに詰問する形になってしまいました。Mさんは、「私どもとしては、バージョンアップをお勧めします」といい、「バージョンアップをされた方が機能はアップしますし、サポートもより手厚くなるので問題はないと思いますが。また、ちょうど新しいアプリケーションを弊社が開発、販売したところですので、そちらもお勧めしました」とのこと。私が最初にいったことをすっかり忘れ(無視?)、クライアントの状況は見ないようにしているようです。

 バージョンアップに掛かる投資額はかなりのものです。というのは、データベースベンダは上位互換は保証するとはいうものの、実際には小さなリビジョンアップでも、従来問題なく稼働していたアプリケーションが、突如として動かなくなることをよく経験していましたし、ましてそのクライアントの基幹システムのパッケージは、バージョンアップしたデータベースを動作をサポートしないとこともあり、データベースのバージョンアップには慎重だったのです。

 もちろん、データベースベンダの営業担当のMさんもそれは知っていることです。クライアントは別にバージョンアップをしないといっているのではなく、現在はタイミングが悪いといっているだけで、それを理解してほしいというと、「ビジネス的なタイミングとはなんですか? 弊社としてはバージョンアップをお勧めしたいのですが……」との繰り返しです。これが20歳代の若い担当者なら私も納得した(あきらめた)のですが、それなりに年齢もいったポジションの高い方からいわれたことが、私にはショックでした。

 そのクライアントの状況はだれの目を通しても明らかでしたし、説明もしました。クライアントのことを思うのであれば、また本来クライアントの状況を理解したうえでビジネスは進めるものだと思います。この先の基本戦略を練っている時期のクライアントに対して、高額な投資を勧めることは、常識で考えれば分かることだと思うのですが。

 結局、データベースベンダの営業担当のMさんを説得して、サポート契約を延長する路線で話はまとまりました。しかし、それもMさんが約束した契約事項を守らなかったため、クライアントは激怒してしまいました。その会社のデータベースの利用を止めようかと、クライアントは真剣に検討したほどです。

   現在はデータベースのビジネスモデルの岐路にある?

 このように、クライアントの利益を考えず、自社製品のライフサイクルだけを押しつけるやり方はどうかと思います。データベースというのはシステムの基幹をなすものですから、容易に変えられません。たとえ上位互換を保証するといわれても、万が一のときは実務に多大な影響を与えますから、それなりの準備期間と投資が必要になります。

 これまでは、データベース製品をバージョンアップすることで、使いたかった機能や速度の改善など、それなりに利益を顧客に与えてきたのは事実です。しかし、機能は徐々に成熟してきており、バージョンアップによってもたらされる恩恵は、全体のうちの一部の顧客しか得られないようにも見えます。そのような現状においてデータベースベンダは、そのビジネスモデルを変革する時期に来ているのではないでしょうか。

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