
外資系コンサルタントのつぶやき 第2回
即戦力の中途採用者を待っていたもの
三宅信光
2001/7/21
| “即戦力”だからトレーニングがない |
“何も教えてくれない”“自分の居場所がない”“話にやたらと出てくる略語が分からない”、そして“いつ、いらないといわれるか分からない”。これは、わたしがコンサルタント会社に入社後1カ月ほど抱いていた会社への印象です。この最初の印象には誤解も本当のこともありました。当時は驚きだった“本当のこと”も、いまや体になじんで驚くこともありません。
最初に挙げた“何も教えてくれない”という印象は、どうやら2つの要因があったようです。1つ目はトレーニングのあり方、2つ目はスーパーバイザー(上司)からの指示のされ方でした。
前回(「転職して戸惑うことは“企業文化”の違い」)にも書きましたが、転職後1週間程度の簡単なトレーニングだけを受け、すぐに進行中のプロジェクトへ配属されました。この最初のトレーニングがあまりにも短かった。短いけれども密度の高い内容であったわけでもありません。特に定まったトレーニング内容はなく、フリーディスカッションなどが主体でした。
中途採用者に望むことはどこも同じ“即戦力”です。そのため、トレーニングに時間をかけたくないことは分かります。しかし、コンサルタント会社は内部トレーニングが充実していると聞いていたので、これはとても意外でした。もっともこれは誤解があり、トレーニングが充実していないのではなくて、“新人からの一貫したトレーニング”や、“本社関連のトレーニング”は充実しているのです。ただし、自分で行くという意思表示をする必要があることを、後から理解しました。
ただし、「入ったばかりの中途採用者向けトレーニングはない」のは事実です。もちろん、さまざまなキャリアを持つ中途採用者が入社するわけですから、定型的なトレーニングを用意しにくい事情もあるでしょう。さらに、社内のシステムや制度の説明もあるのですが、充実したものではないため、プロジェクト配属後に戸惑いました。それが、最初に触れた“何も教えてくれない”という印象につながるのです。
転職して1週間後に配属されたプロジェクトでは、いくつかのサブプロジェクトが同時に進行していました。わたしが入ることになったサブプロジェクトは、危機的状況にあり、成功を危ぶむ声が社内でも多かったそうです。担当チームの雰囲気は最悪で、同じプロジェクト内で働いているアルバイトの女の子にまで、「(わたしがいる)チームの部屋には行きたくない!」とまでいわれました。
そのサブプロジェクトのカットオーバーまで1年を切った段階でも、システムの概念図ができただけ。しかもチームメンバーの数も不足し、“何をしてもダメだろう”というあきらめの沈滞ムードがメンバーに漂っていました。サブプロジェクトの設計のときには、最終的にこの時点の3倍程度の人数になりましたが、それはまだまだ先のことです。
| 自分のチームの把握もできない |
プロジェクトのスーパーバイザー(上司)から、さまざまなことを教わったり、指示を受けたりするわけですが、わたしがプロジェクトに入ったころは、状況説明らしきものさえほとんどありませんでした。それどころかプロジェクトメンバーへの紹介もなし……。それがこの会社では“普通なこと”だと、その後しばらくして分かりましたが、当時は驚きました。メンバーを紹介してもらえないため、だれが何をやっているのかさえ分からず、チームの人に話しかけるきっかけさえつかみにくいものでした。チームの状況や自分のポジションも当然分かりません。チームの状況は、チームに入って1カ月後ぐらいになってようやく把握できましたが、自分のポジションを理解できたのは、それからさらに1年ほど経過したころでしょう。まあ当時はポジションがわからなくて当たり前だったのですが……。自分のポジションなんて、その時点ではなかったのですから。
プロジェクトに入った翌日、スーパーバイザーにサブチームリーダー4、5人を集めたミーティングを主催するようにいわれました。プロジェクトの状況も、他のチームメンバーの顔も分からないのですから、サブチームリーダーたちからの風当たりは実にきついものでした。“何も知らないおまえが、何わけの分からないこといってんだよ”と、はっきりとはいわれなかったのですが、雰囲気はまさにそのような感じです。ミーティングの進行途中でスーパーバイザーが適宜アドバイスをしてくれたので、何とかミーティングを終えることができたのですが、自分に期待されていることが何かをイメージできるような説明は、事前にはありませんでした。
冷や汗をかきながら司会を務め、次のミーティングの日取りを決めたときはホッとしたものです。その後もいろいろな作業をこなしましたが、「こんなことをやってよ」といった、アバウトな指示しかもらったことがありません。与えられた仕事の中身を自分で消化して、自分でやり方を考えて、自分で人と交渉しなければいけないのです。そのうち、それが当たり前だと思うようになっていました。
“何も教えてくれない”は、中途採用者に期待するものが即戦力である以上、どの会社でもある程度共通することかもしれません。しかし、外資系コンサルタント会社(すべてではないかもしれませんが)では、その姿勢が特に顕著だと思います。社内情報も自分でつかまなければいけないですし、そのためにはいかに早く人間関係を築いて情報を収集できるかが重要になります。それが外資系コンサルタント会社で、自分の居場所を確保する道でもあるのです。
外資系コンサルタントのつぶやき バックナンバー
- 第1回 転職して戸惑うことは“企業文化”の違い
- 第2回 即戦力の中途採用者を待っていたもの
- 第3回 出ないクイは捨てられる
- 第4回 明確なキャリア戦略を持つ人、持たない人
- 第5回 技術スキルだけでは食えない
- 第6回 クライアントに「知らない」とはいえない
- 第7回 コンサルタントへのあこがれと現実とのギャップ
- 第8回 コンサルタントのゴールはたったの2つ
- 第9回 優秀な選手が優秀な監督とは限らない
- 第10回 会社に自分の席がない
- 第11回 コンサルタントになる前に磨いてほしい能力
- 第12回 コンサルタントに英語は必要か?
- 第13回 評価されるチャンスは2度
- 第14回 大手ITベンダが上流工程に進出したがる理由
- 第15回 大手ITベンダが人材を外部に求める理由
- 第16回 コンサルタント会社の弱点とは
- 第17回 下流工程はクライアントに食い込む戦略
- 第18回 外国人上司との付き合い方は難しい
- 第19回 データベース業界のビジネスモデル
- 第20回 過酷なるITコンサルタントの日常
- 第21回 国内の大手ITベンダのスキルは低い?
- 第22回 つながっていないネットワークの向こう側
- 第23回 プログラミングスキルをもっと評価すべき
- 第24回 プロジェクトの危険信号は会議で分かる
- 第25回 海外へのアウトソーシングの是非
- 最終回 コンサルタントの存在意義って何だろう
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