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外資系コンサルタントのつぶやき 第4回
明確なキャリア戦略を持つ人、持たない人

三宅信光
2001/10/3

   新卒組のキャリア志向

 今回は、コンサルタント会社で働いている人の考え方を紹介しようと思います。ここでいう“考え方”とは、自分のキャリア、人生観のようなものでしょうか。もちろん私の会社にいる人間すべてが同じように考えているわけではありません。しかし、転職していまの会社にいる“転職組”と新卒から育った“新卒組(生え抜き組)”には、それぞれ独特な傾向があるように思えるのです。

 私が転職してもう5年近くになります。その間に多くの転職者を見てきましたが、“新卒”の新入社員はそれ以上見てきたと思います。新卒の人間にはいろいろなタイプがいましたが、“優秀”と思える人は決まって、「この会社は自分のキャリアの1つのステップにすぎない」と考えているようです。

 新卒組は、ここ(コンサルタント会社)である程度の実績を積み、スキルアップしてさらなるキャリアアップを狙います。それが彼らの常識のようです。「この会社で定年まで働く」という「就社」意識などはみじんもありません。

   会社は“場”を提供するだけ

 自分のキャリアについて考えた結果を、すぐに行動に移す者もいます。入社1年足らずでネットビジネスを自分で興すといって休職した者もいましたし、別のビジネスを興し、それが軌道に乗ったといって入社後半年もせずに退職した者もいます。私と同じ年に入社した新卒組の会社残存率は、なんと50%を割っています。

 会社がトレーニングを用意してくれた場合、それを受けるのは当たり前です。しかし、「面白くないトレーニング」や「自分に役に立たないトレーニング」と彼らが考えれば、できる限りさぼる、あるいは手抜きをします。逆に「面白いトレーニング」や「役に立つトレーニング」と思えば、どんなに無理をしてでもきちんと受講します。そういう意識でトレーニングを受けているので、講師も単にテキストを棒読みするようでは、受講生から突っ込まれて立ち往生してしまいます。

 さらに、会社が提供してくれるトレーニングなどだけで、自分のスキルがアップすると考えている者は少ないようです。自分がどうしたら成功できるか、さまざまなところで試してみたり、同期で激論を交わしたり、常に“何か”をしているようです。とにかく、彼らに共通しているのは、会社は単なる“場”にすぎないと割り切っているということでしょう。

 話が面白く、私自身の刺激にもなるので、若い社員と飲みに行くことがあります。これは、社会人4年目ぐらいの人たち7、8人と飲みに行ったときのことです(そのうち半数の者は、すでに別の会社へ転職)。そのとき、飲みながら“この先どうしていくか”、という話題になりました。半数以上の者は、「現状にまったく満足していない。いまの会社で学べることはもう学んだ。もう一度大学に戻り、再度勉強したいことがある」といい出しました。そこで、「行くのなら、アメリカの大学か、日本の研究室か」「MBAはもう古い。では、何をするべきか」といった議論を始めました。私が以前勤めていた会社では、とうてい考えられないような話題ばかりでした。

 入社のときから常にそうした意識を持っているためか、キャリアが上がれば上がるほど自分のキャリアに対する意識は強くなるようです。私が入社して半年ほどたったころ、周囲の人が職場で平然と転職の話をしていたので驚いたことがあります。しかもその話を熱心にしている人たちの中心に、自分のスーパーバイザーがいました。私は彼に「転職するのですか?」と聞くと、「だれだって(転職を)考えていますよ。うちの会社で転職を考えていない人なんかいませんよ」といわれました。その後ほかの人たちにも聞くと、確かに同様の答えが返ってきました。

 このように考えている人たちは、転職を意識することで、自分の市場価値をいかに上げるかということを常に現実的な課題として考え、実践しているようです。自分の市場価値は自分で作り出す、それができなければ会社の中でも評価されない、それが当たり前の社会なのです。

   重要なことは明確なキャリア戦略を持つこと

 私の会社に転職してくる人たちは、それなりにキャリアを意識している人たちだろうとは思うのですが、それでも新卒組のメンバーと比べると、かなりの落差を感じます。私の会社では、年に1、2回、今後の個人のキャリアについて個別に話し合う機会があります。私も自分の部下たちと話をするのですが、転職組は自分のキャリアについて漠然と考えている人が多いようです。

 例えば転職組の部下に、「マネジメント志向なのか、スペシャリスト志向なのか?」という、コンサルタントとして基本的な質問をします。マネジメント志向とは言葉どおり技術よりもチームの管理などに特化していくタイプ、スペシャリストとはIT関連や会計業務など、特定の領域の知識を深めていくタイプです。この質問に、「どちらか分かりません」と答える部下が多いのです。そこで、もう少し時間をかけて話し合っていくと、結局技術を磨きたいという結論になるのも転職組の特徴です。しかし、さらに突っ込んで自分が磨きたい技術とは何かと聞いても、はっきりとしている人が少なく「スペシャリスト志向です」と答える人の大半は、「どの領域か分かりません」と答えるのです。

 自分の目指す方向について、「会社が指定してくれるものだ」と思っている人がまだまだたくさんいます。そうでないという人も、「学ぶ機会は会社が与えてくれる」ものだと思っているようです。そんな意識では周囲のコンサルタントたちと肩を並べて仕事することはできません。周りは、自分が何をしたいか、そのためには何をしたらよいか、常に考えている人たちなのですから。

 ある程度はこちらから「こんなふうにしたら?」といった示唆はします。しかし、それでもはっきりしない、自分から考えようとしない人には、「この会社には向いていないのでは?」という判断を下すこともあります。いわれる本人にとっても、私にとってもつらい判断です。みんな成功する夢を持って入社したのでしょうから。しかし、自分自身の目標がはっきりしないまま先に向かえば、もっと厳しい状況に陥るのが目に見えているのです。

 自分のキャリアについていかに明確な目標を持つか。これはコンサルタントとして成功する必須条件だと思います。

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