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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”

第13回 プロジェクト成功につながる100年の杉苗

野村隆(eLeader主催)
2006/3/25


将来に不安を感じないITエンジニアはいない。新しいハードウェアやソフトウェア、開発方法論、さらには管理職になるときなど――。さまざまな場面でエンジニアは悩む。それらに対して誰にも当てはまる絶対的な解はないかもしれない。本連載では、あるプロジェクトマネージャ個人の視点=“私点”からそれらの悩みの背後にあるものに迫り、ITエンジニアを続けるうえでのヒントや参考になればと願っている。

リーダーシップトライアングルにおける位置付け

 前回「『見える化』だけでは見えないもの」に引き続き、システム開発プロジェクトにおけるリーダーシップを中心に、「私の視点=私点」を皆さんにお届けします。

 今回の内容は、リーダーシップトライアングルのVisionとLoveに関係しています。VisionとLoveについては、本連載第9回「ソフトウェアは目に見えない」、第10回「正しいことをし、行動力を発揮するココロ」を参照いただければと思います。

図1 リーダーシップトライアングル。今回はVisionとLoveに関連した内容を紹介する

100年の杉苗を植う

 今回は、二宮尊徳(幼名の二宮金次郎の方が有名かもしれません)が遺した以下の言葉を中心に考えていきます。

遠くをはかる者は富み
近くをはかる者は貧す
それ遠きをはかるものは百年のために杉苗を植う

 100年も生きる人はほとんどいないですよね。にもかかわらず、100年後のために杉苗を植える人。こういう人は、自分のためではない長期的な事項に取り組む人だということでしょう。自分のためではない長期的な事項に取り組む人は富むということだと、私は理解しています。

 最近の風潮として、「自己実現」を主張し、スキルや資格を過度に求める人をよく見掛けるように思います。何だかいま風の考え方でカッコいいと思われる方も多いでしょうが、こういう人を見ると、自分のことだけ考えているような印象を受けます。

 まあ確かに、自分がカワイイというのは誰もが持つ感情なのでしょうが、自分だけがよければいい、他人はどうなってもいいという考え方はどうでしょう。やはり自分のためでなく、他人のため、社会のために貢献するという視点が必要だと思います。

 「他人のため、社会のために役立とうという考えを持ち、長期的なビジョンを持って実際に行動に移す人が、最終的には自分自身を富ませる」というのが、二宮尊徳の考え方であると理解しています。

新卒面接で思うこと

 さて話は変わりますが、私は毎年のように新卒の学生の就職面接をしています。今年もそういう季節になりまして、毎月数回は面接をします。

 面接をしていて最近特に思うことが、IT業界、特にシステム開発(SI)業界についてよく勉強している学生が多いということです。本当に感心するくらい勉強している人に会います。

 そういう人の面接をすると、自然な話の流れで、将来歩もうとしているキャリアについて議論をすることが多くなります。するとやはりどこか甘いというか、理想ばかりいっている学生が多いのです。

 このようなときは親切心も手伝ってか、思わず理論的な不整合を突いて詰問し、学生を困らせてしまうことがあります。結局、「この人は新卒で仕事の経験がないのに、ここまで攻め込んでどうする!」と気付いて過度なツッコミはやめるのですが。

 当然ながら新卒の学生は、開発のアルバイトをした経験があるなどの例外を除いて、SI業界での仕事がどんなものか知るはずもないし、必ずしも知っている必要はないわけです。仮に知っていても、SI業界での仕事の知識が面接の合否に直結するわけではありません。

 ここでいいたいことは、SI業界の知識は面接の本質ではないけれど、SI業界のことを知っている学生によく会うということです。

 前途有望な新卒の学生が、程度の差こそあれ、ほとんど何も知らずにSI業界に入ってきて新たなキャリアを歩む。こういう人に会うたび、皆さんの人生に幸多かれと祈らざるを得ません。

多様化する将来のビジョン

 このような人が毎年新卒でSI業界に入ってきます。今後キャリアを重ね、プログラミングや設計手法を学ぶでしょう。場合によってはハードウェア、OSやネットワークの基礎を学んだり、ユーザー仕様の要件定義の手伝いをしたりするかもしれません。さまざまなキャリアを積み重ね、だんだんと戦力になっていくわけですね。

 一方、システムの開発を中心とするSI業界の仕事は多様化の一途をたどっています。

 かつての企業システムは、経理や事務作業といった社内業務の合理化の一環として、限られた部門に導入されるのが通例でした。営業やマーケティングといった部門の人たちは、経費精算くらいでしかシステムを使いませんでした。つまり社内基幹システム全面更改のような大規模プロジェクトであっても、調整・交渉する対象は社内の限られた部門であり、コミュニケーションもそれほど困難ではありませんでした。

 しかし、いまや全社員がPCを持ち、電子メールやインターネットを使うのは当たり前となりました。いままでシステムを使わなかった部門の人たちも、営業部門は営業支援と称する社内システムを、マーケティング部門もデータウェアハウスと称する社内システムを使うのが当たり前となりました。現在の社内システムのユーザーは多岐にわたります。

 企業間データ連携もビジネスに欠かせないものになっています。インターネットビジネスを展開する会社であれば、システムそのものが会社の収益の源泉の大半を占めるわけで、24時間365日稼働が当たり前です。

 このようなことは私がここで長々と説明するまでもないですが、コンピュータシステムとひと言でいっても、10年くらい前と比べ、爆発的な勢いで多様化しているということです。

 コンピュータシステムそのものの多様化に伴い、システムを設計・開発・導入するという作業自体も多様化しています。

 単にシステムを設計・開発・導入するといっても、業務ユーザーへの対応、ユーザー要件定義、システム設計・開発・テスト、ユーザーテスト、マニュアル作成、システム定着化、システム運用設計・導入、ハードウェアサイジング・導入設置、全体のプロジェクト管理などなど、書き切れないほど多様な作業があるわけです。

 コンピュータシステムが多様化し、システム開発の仕事も多様化しています。縦横に多様化した状況において、自分の歩むキャリアパスを見つけなくてはいけない時代になりました。就職活動中の学生の将来に幸多かれと祈ると同時に、SI業界に新しく加わる人が、縦横に多様化するキャリアパスの中から自分に合ったものを選び、すくすくと育つことができるかなと不安になります。

   

今回のインデックス
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(13) (1ページ)
 ITエンジニアを続けるうえでのヒント(13) (2ページ)

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