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ITエンジニアを続けるうえでのヒント〜あるプロジェクトマネージャの“私点”


第32回 欲しいのは、PDCAサイクルが短い人

トライアンツコンサルティング
野村隆

2007/12/19

Pが異様に長い人

 次に、もう一方の「PDCAサイクルが短い人」について解説させてください。PDCAサイクルが長い人、特にPlanのステップが長い人は、考えるだけで行動しない結果に終わってしまうことがあり、これもこれで問題です。

 例えば、システム開発の提案段階で、お客さまが何かに悩んでいるが、悩みが何か分からないという局面があります。

 相手の悩みが分からないときは、相手に直接聞くのが一番だと私は思っています。かっちりした資料を用意する前に、まずは相談する方が誤解も少なくなるし、相手はできるだけ早く悩みを聞いてくれることを望んでいるでしょう。

 しかし、あるとき私が一緒に仕事をした人は、「手ぶらではお客さんの前に行けない。資料を文書化して持参しなくては失礼に当たる」という発想、つまり、ちゃんとPlanしないと駄目という考えの持ち主でした。

 この考えに基づき、ある日私たちは、お客さまの悩みを想定した資料を深夜までかかって文書化しました。そして翌朝、お客さまとの打ち合わせに資料を持っていきました。

 でもこの資料は、お客さまの要望・悩みを考慮していない、独り善がりの考えを文書化しただけの内容でした。内容が独り善がりなので、お客さまに受け入れられるわけがないのです。「悩みの相談には乗ってほしいが、こんなことで悩んではいない。的外れだ! お前は何も分かっていない!」と怒られるところから、お客さまとの会話が始まるわけです。これでは効率が悪いですよね。

 これでは、文書化する意味がないので文書化の時間がもったいないと思います。また、お客さまに聞けばいいものを、聞かないで独り善がりの文書を作成するという段取りも悪いです。最悪なことは、せっかく苦労して文書を作成したのに、お客さまの印象はかえって悪くなっているという状況です。

 私の経験から考えると、失敗を恐れるタイプの人は、このようにPlanのステップが長く、考えるだけで行動しないことになりがちです。

 この連載の第3回「失敗を恐れず行動しよう」では、失敗を恐れて行動ができなくなるという学校教育の弊害について解説しています。失敗を恐れ、過度にPlanに時間をかける、もっというと「Planする段階で時間をかけて検討したのだから、Doの段階で失敗してもいい訳が立つ」という発想に至っては、学校教育の弊害の1つだと思います。

 そうではなく、PDCAのサイクルを早く回せる人、Planしたら失敗を恐れずにDoに移せる人が望ましいのです。PDCAの精神からすれば、Dで失敗しても、Cでチェックして、Aという是正措置を取ればいいのですから。

心掛けだけでも、仕事は変わる

 PDCAサイクルを基準に、いま求めている人材像についてお話ししましたが、皆さんの参考になったでしょうか。

 具体例を引き合いにいろいろ書きましたが、私自身も毎日の作業において「ああ、もっと考えて行動すべきだった、PDCAのPを軽視したなあ」と思うときもあれば、「うーん、今回は、考えすぎて頭でっかちになってしまった。PDCAのPを短くすべきだったかな」などと反省するときがあります。

 まだまだ修業中ですが、PDCAサイクルをきちんと踏もう、PDCAサイクルを短くしようと心掛けています。

 心掛けるだけで、仕事の質は変わります。自分の行動を振り返って、「Pが長いかも」とか「DとAだけになっていないか?」と自問自答するだけでも、効果はあると思いますよ。ぜひ、お試しください。

 

今回のインデックス
 PDCAサイクルの、DとAだけな人
 Pが異様に長い人

筆者プロフィール
トライアンツコンサルティング
エンタープライズアプリケーションサービス ディレクター 野村隆

無料メールマガジン「ITのスキルアップにリーダーシップ!」主催。早稲田大学卒業。アクセンチュアにて、金融・通信業界の業務改革・大規模システム導入プロジェクトに多数参画。ITバブルのころには、少数精鋭からなるITベンチャー立ち上げに参加。大規模(重厚長大)から小規模(軽薄短小)まで、さまざまなプロジェクト管理を経験。SIプロジェクトのリーダーシップについてのサイト、ITエンジニア向け英語教材サイト人材派遣情報サイトも運営。



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