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パソコン創世記


弱小「マイクロ部」の誕生

富田倫生
2009/8/19

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 ある機能を備えた電卓向けに開発されたLSIには、その機能を実現するために必要な回路がきわめてコンパクトに作り付けられている。それを裏返せば、ある1種類のLSIは、他の機能を備えた電卓の部品としては使えない。もしも3種類の機能の異なった電卓を作るとすれば、3種類のLSIを用意する必要があり、そのたびごとに膨大な回路の設計作業を行うことになる。

 それに対し、半完成品でそこにソフトウエアを追加してはじめて機能するLSIを大量に作っておく。この半完成品LSI、いわばできそこないLSIに、付け加えたい機能を実現するソフトウエアを加えてやれば、それ用のLSIに化ける。もしもこうしたできそこないLSIが作れれば、ソフトの種類だけ化ける可能性を持ったものを一挙に作り上げてしまう超輪転機方式が可能になる。

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 ビジコン社は、従来の常識からは考えられないできそこないLSIの開発を、当時はまだほんの小さかった半導体メーカー、インテル社に依頼した。できそこないLSIの開発を担当していたビジコン社のスタッフ4名は、基本的な構想を固めてアメリカに渡り、インテル側の担当者と設計図の作成に着手した。

 スタンフォード大学のコンピュータ研究所で働いたのち、1968年のインテル創立とほぼ同時に同社に移っていたマーシャン・E・テッド・ホフは、ビジコンのアイディアをさらにもう一歩推し進めた。

 ビジコンではあくまで、電卓用LSIでプログラム可能なもの、言い換えればソフトウエア追加によって異なった機能を持つものを望んでいた。電卓用部品として限定したものでかまわないと考えていた。

 それに対しホフは、できそこないの度合いを少し高め、それによって応用範囲をさらに広げることを考えた。電卓にしかならないLSIではなく、電卓にもなるLSIを目指したのである。作業途中から担当をはずれたホフに代わってこのアイディアを設計図にまとめ上げたのは、ビジコン社の嶋正利とインテル社のフェデェリコ・ファジンだった。

 世界初のマイクロコンピュータ、インテル社のi 4004(4ビット)は、望まれた力よりもはるかに大きな可能性を秘めて誕生した。その後、嶋正利はインテル社に引き抜かれて、8ビットの代表的なマイクロコンピュータ、i 8080をファジンとのコンビで開発。さらにのちには、ファジンとともにインテルを去り、ザイログ社を創設して同じく8ビットの代表格となったZ80を開発している。

 4004の開発にめどがついた時点で、ビジコン社社長、小島義雄は記憶装置にたくわえたプログラムをマイクロコンピュータで処理し、インターフェイス回路を通じて情報の出し入れを行うというマイクロコンピュータのシステムに特許が取れないものかを考慮したという。だが、LSIの技術も存在し、プログラムをたくわえておいて実行するという方式もコンピュータでは行われていたことから、小島は特許の取得を断念することになった。

 しかし、専門家のあいだでは、この新しい技術に特許性は認められたのでないか、とする声が強い。

 歴史に「もし」はありえないとしても、これほど好奇心を刺激するものもないことも事実だろう。特許庁の馬場玄式は、『インターフェース』誌1977年10月号でこの魅力的なシミュレーションを行っている。

 「(マイクロコンピュータに関する特許を)外国にも出願してあったとすると、この関係の売り上げが1兆〜10兆円としても、実施料2〜3%として200億円〜3000億円の実施料が入ることになる(あの『IBM帝国』の1976年度の利益が6000億円である!)。インテル社にMCS-4(4004を使った、マイクロコンピュータのセット)の原型を発注した日本のビジコン社が特許の権利化に2、3億円の投資をしていたら、マイクロコンピュータによる『ビジコン帝国』が誕生していたであろうに! しかし、いまとなってはすでに遅い。まさに〈幻の帝国〉である」

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