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パソコン創世記


響く歌声

富田倫生
2009/9/24

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本連載を初めて読む人へ:先行き不透明な時代をITエンジニアとして生き抜くためには、何が必要なのでしょうか。それを学ぶ1つの手段として、わたしたちはIT業界で活躍してきた人々の偉業を知ることが有効だと考えます。本連載では、日本のパソコン業界黎明期に活躍したさまざまなヒーローを取り上げています。普段は触れる機会の少ない日本のIT業界の歴史を知り、より誇りを持って仕事に取り組む一助としていただければ幸いです。(編集部)

本連載は『パソコン創世記』の著者である富田倫生氏の許可を得て公開しています。「青空文庫」版のテキストファイル(2003年1月16日最終更新)が底本です。「青空文庫収録ファイルの取り扱い規準」に則り、表記の一部を@ITの校正ルールに沿って直しています。例)全角英数字⇒半角英数字、コンピューター⇒コンピュータ など

 フォークソング自体が日本で聞こえはじめたのは、タケシの高校入学の時期よりもさらに2、3年前にさかのぼる。

 ギターを抱えての弾き語りというスタイル、あるいはギターの奏法などにおいて、1960年代半ばから広がりはじめたフォークソングには復古的なにおいも入りまじっていた。

 しかし年若い世代は、フォークソングをまったく新しい種類の音楽として受け取った。音楽のプロたちによって作られ、演奏される、他人からの供給物ではなく、自らをとらえなおすための道具、自己表現の手段として、フォークソングを利用しようとしたのである。

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 この流れの中から、アメリカではボブ・ディランが生まれ、日本でも高石ともやや中川五郎、そして岡林信康といったヒーローたちが生まれてくる。彼らの多くは、音楽の専門性を否定したところからスタートしたにもかかわらず、自らがプロになっていくという自己矛盾にその後悩まされることになるが、そのことは逆にこの時期のフォークソングの持っていた一種の新しさを示しているともいえよう。

 そしてこの時期、フォークソングは直接に政治の場に登場してきたのである。

 安田講堂攻防戦の直後、新宿西口の地下広場で、長髪の貧相な若者たちがギターを抱えて歌いはじめた。若者たちは、毎週土曜日の夕方になると決まって現われ、彼らを取り囲む人の数もしだいにふえ続けていった。彼らはしだいに、自らを東京フォークゲリラと名乗りはじめ、マスコミで一斉に報道されるようになる5月までに、土曜日ごとに持たれた歌の集まりは、集会と呼ぶべき規模にまで膨らんでいた。

 そして5月17日、新宿西口地下のフォーク集会の規制に、初めて機動隊が動員された。だが機動隊による実力規制は、むしろ集会への参加者をふやす効果しかもたらさなかった。

 それから6週間後の6月28日、西口広場のフォークソング集会にはこれまで最高の約7000人が集まった。

 この日の早朝、新宿郵便局に郵便番号自動読み取り機が搬入され、これに抗議するデモ隊は夜になっても局を取り巻いていた。一応歌い終わったフォーク集会の参加者は、デモ隊に合流しようと動きはじめた。

 地上で待機していた機動隊員約800人はこの動きを規制。西口広場にはガス弾約100発が撃ち込まれ、64人が逮捕された。

 この事件後、警察は西口地下広場は道路交通法上の道路であると発表。駅のカンバンからは広場の文字は消え、「西口通路」と書き換えられた。

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