自分戦略研究所 | 自分戦略研究室 | キャリア実現研究室 | スキル創造研究室 | コミュニティ活動支援室 | エンジニアライフ | ITトレメ | 転職サーチ | 派遣Plus |

ここでも生きる! エンジニア経験

第3回 ITエンジニア経験を生かし法律のプロに!

加山恵美
2007/12/21

ベンチャーで働きながら受験勉強

 この勉強と仕事を両立していた期間では、時期により仕事と勉強の比重は変わるものの、通常の就業時間は会社で働き、平日の夜や週末が受験勉強の時間となった。試験は5月から10月末までかかるので、その時期は受験勉強の比重が高くなるが、それ以外の時期は仕事も精力的に取り組んだ。

 この2社目のベンチャー企業ではWeb系のシステム開発に携わった。FLASHの制作や、ColdFusionを使った開発、データベース管理などを担当した。ただしベンチャーでの就業は単に生活費を稼ぐための日々ではなかった。主業務のシステム開発をこなしながらも、契約や起業するための法律に目を向け考えるようになっていた。

 「ベンチャーが持つ多彩なアイデアや社員のエネルギーなどを見て、エンジニアやベンチャーがより一層生き生きと活躍できるように、(弁護士となり)法律面でサポートできるようになりたいとより強く考えるようになりました」と佐藤氏はいう。

 そして念願がかない、2005年の旧司法試験で無事に合格した。受験期間である2社目で働いていた期間はおよそ3〜4年だという。佐藤氏は司法試験に合格するまでの間について、「エンジニアというよりは社会人経験者としてですが、学生と比べて時間を効率よく使うことができたと思います」と、社会人経験が生きていたと話す。

エンジニアの気持ちが分かる弁護士に

 司法試験に合格すると、次は司法修習生となる。法曹資格を取得するための研修期間だ。司法試験合格後は裁判官・検察官・弁護士のいずれを志望する場合でも、司法研修所にて実践的な法律実務を学ぶ。

 修習生の間には裁判官や検察官についても学び、弁護士以外の道にも進めたが、佐藤氏は最後まで「弁護士志望であることはぶれなかった」という。それはこれまで約8年間のITエンジニア経験から、ビジネスの世界で活躍する弁護士を思い描いていたからだ。

 現在佐藤氏はITエンジニアとしてではなく、弁護士として顧客と接するようになった。顧客の多くはベンチャー企業である。佐藤氏は「ベンチャー企業、特にIT関連の人と話をしていると、新しいビジネスモデルについての熱意が伝わってきてとても楽しいです」と話す。ITの現場で働いた経験があるからこそ、相手のいうことがよく伝わり早く理解できるのだろう。

 「IT業界は急速に進化を続ける分野です。ほんの1年ほど離れていただけでも、新しい用語や技術が出てきています。これからも勉強を続けないと話についていけなくなるのではないかと、気を引き締めています」と佐藤氏はいう。

 あらためてエンジニアから弁護士へという転職について聞くと、佐藤氏は「確かに『珍しい経歴ですね』といわれます。しかし私自身としては長年の経験や熟考した結果であり、あまり突飛なことをしているという感覚ではないのです」と話す。

歩み出した弁護士への道

 弁護士となると、佐藤氏のように企業法務を担当する弁護士もいれば、一般民事を担当する弁護士もいて、活躍の幅は広い。佐藤氏はITエンジニア経験があり、IT業界のビジネスに焦点を絞っていたため、現在の事務所との相性はぴったりだった。古田&アソシエイツ法律事務所はベンチャー企業の創出育成を支援することを主業務としており、その分野の専門家も多いため、佐藤氏にとって「とても勉強になる」という。

 弁護士として、事務所に身を置くようになって、まだ数カ月ではあるが佐藤氏は自分の立場の変化を実感している。弁護士としては“新人”ではあるが、当然ながら「法律のプロとして扱われるため、責任を感じています。特に法律に関して話すときは(弁護士の発言だと)言葉の重みが違うので気を付けています」とのこと。

 「弁護士もエンジニアも、建設的な考え方が必要です」と、両者の考え方に共通点があると佐藤氏は考えている。「広い視野で考えれば違う分野といえども、エンジニア時代の経験を生かすことができると考えています」と佐藤氏。

 子ども時代の弁護士へのあこがれ、ITエンジニアとしての経験。この2つを通じて、佐藤氏は「法律のプロフェッショナルになり、ITのビジネスを支えたい」という気持ちを温めてきた。ITのビジネスでも法律は無関係ではない。若い企業であればなおさら法律の専門家によるサポートは重要である。それを感じ取り、佐藤氏は弁護士という道を選んだ。

 ITエンジニアを続けていれば30歳中ごろから40歳代で開発部署を率いる管理職に就いていたかもしれない。だがそうしたキャリアパスより、佐藤氏には弁護士への道に目が向いた。佐藤氏にとって弁護士が本当に適職だったかどうか、その答えはまだ分からないかもしれない。だが少なくとも、佐藤氏は弁護士としての確たる自覚を持ち、その道を歩み始めた。

前のページへ

自分戦略研究所、フォーラム化のお知らせ

@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。

現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。

これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。