第1回 「分からないんで教えてください」はいけないの?
ナレッジエックス 中越智哉
2007/4/26
この春に大学を卒業し、ある中堅SI企業に就職した中山しんじ君。初めての経験にとまどいつつ、周囲のサポートを受けながら、社会人としてもITエンジニアとしても成長していきます。皆さんもしんじ君と一緒に歩んでみませんか。 |
■しんじ君登場
ここは東京都内の中堅SI(システム開発)企業、アットイットシステム社。輝けるITエンジニアを志す1人の青年が、新入社員としてやってきました。彼の名は中山しんじ。この物語では「しんじ君」と呼ぶことにしましょう。
しんじ君はこの春、故郷である北海道の理科系大学を卒業し、アットイットシステム社に採用されました。
コンピュータに興味があり、関連の雑誌や書籍はよく読んでいましたが、専攻はコンピュータサイエンスの学科ではありません。システム開発はおろか、コンピュータプログラミングもほとんど未経験です。
でも……。しんじ君は就職担当の教官とのこんなやりとりを覚えていました。
しんじ君 | IT業界に就職するには、やっぱりプログラミングとか、システム開発の経験がないと厳しいんでしょうか。 |
教官 | そうだね、もちろんあるに越したことはないけど、実際にはそういった経験のある新入社員は少なくて、多くは未経験者なんだよ。 |
しんじ君 | そうなんですか。ということはもしかして文系でIT業界に入る人もいたりするんですか? |
教官 | もちろん。会社によっては理系、文系が半々だったり、もしかすると文系の学生の方が多かったりすることもあるんだよ。 |
しんじ君 | え〜、そうなんですか。そうか、じゃあ僕みたいに経験がなくても頑張れば立派なITエンジニアになれるっていうことですね。 |
教官 | そうです。だから自信を持って就職活動をしなさい。 |
しんじ君 | はいっ! 頑張ります! |
以前のしんじ君は、IT業界というとハードルが高く、未経験者お断りというような印象を持っていました。しかしそれも自分の頑張り次第と分かったことで、いまはやる気に満ちあふれています。アットイットシステム社の面接官も、そんなしんじ君の意欲を認めてくれたのでしょうね。
■しんじ君、システム開発部へ
無事アットイットシステム社に入社したしんじ君。ビジネスマナーなどの基礎研修を終え、今週からいよいよ現場に配属です。
応募時からシステム開発業務を希望していたしんじ君は、そのとおりシステム開発部に配属されました。研修中は決まった座席がなかったしんじ君はじめ新入社員たちですが、今日からは自分の机が与えられます。
システム開発部の上野部長から、部のメンバーの紹介があり、続いて配属された新入社員の自己紹介がありました。システム開発部には、しんじ君のほかにも若尾さんという女性の新入社員が配属となりました。若尾さんもしんじ君と同じく、プログラミングやシステム開発は未経験のようです。最初の機会なので、しんじ君と若尾さんは全部署にあいさつに回ります。
上野部長 | 以上がシステム開発部のメンバーです。では今度は新入社員の自己紹介だ、まずは中山君からいこうか。 |
しんじ君 | あ、え、はい。え〜と、中山しんじです。北海道出身です。システム開発の経験はありませんが、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします! |
一同 | パチパチパチ……。 |
そんな感じであいさつも終わり、真新しい自分の席に座ったしんじ君が一息ついていると、上野部長が1人の社員を連れてしんじ君の席にやってきました。
上野部長 | 中山君、ちょっといいかな。 |
しんじ君 | はい、何でしょうか。 |
上野部長 | うん、君たちの自己紹介のときに一緒に紹介すればよかったんだが、忘れていてね。こちらは君のメンターを担当する面田君だ。 |
面田さん | 面田です。どうぞよろしく。 |
しんじ君 | 中山です。よろしくお願いします。あ〜あの、ところで上野部長……。 |
上野部長 | 何かね? |
しんじ君 | 「メンター」って何でしょうか。 |
上野部長 | お、そうか。そこから説明しないとな。メンターというのは、相談相手みたいなものだよ。会社のことで分からないことがあれば彼に聞いてくれ。 |
しんじ君 | そうなんですか。 |
面田さん | 遠慮せず何でも聞いてください。 |
しんじ君 | あ、はい。よろしくお願いします! |
と、そんなこんなで配属1日目が終了し、帰宅の途に就いたしんじ君。ずっと実家で過ごした学生時代から一転、上京して1人暮らしとなり、自炊にも挑戦しています。今日も慣れない料理に取り組みながら、大学時代の友人の北村君にメールしてみました。
しんじ君 | 今日から配属。そっちはどう? |
北村君 | こっちは先週末に配属だよ。歓迎会でけっこう飲んで次の日キツかった……。 |
しんじ君 | ところで、メンターって知ってるか。 |
北村君 | 何それ? 新しい食べ物? |
しんじ君 | 違うよ! 新人の面倒を見てくれる人だよ。 |
北村君 | へー、そうなんだ? うちの会社はそういうのないかも。 |
そんなやりとりをしているうちに、今晩のおかずの焼き魚を焦がしてしまうしんじ君でありました。
今回のインデックス |
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