Engineer Life
第5回 読者調査結果発表
〜エンジニアの集合研修の利用実態とその課題〜
小柴豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2003/1/17
変化し続けるITの世界で働くエンジニアにとって、自らのスキルアップは日々の業務と同様に(あるいはそれ以上に?)重要な関心事だろう。スキルアップには書籍の購読やOJTなどいろいろな方法があるが、新しい分野を効率的に学習するには、集中した時間の中で講師について学ぶ“集合研修”が有効といわれてきた。ではITエンジニアは、現在どの程度集合研修を活用しているのだろうか? Engineer Life フォーラムが実施した第5回読者調査から、その利用実態と課題を報告しよう。
1年間の集合研修利用の平均は?
初めに読者の集合研修の利用頻度について、過去1年間の実態を尋ねた結果が図1だ。回答者全体の半数に近い47%が「1度も利用していない」ほか、利用者の中でも「1回のみ」または「2〜3回」との回答が大半であり、平均利用回数は全体で1.2回/年となった。スキルアップに関心の高い@IT読者に尋ねた数字であるため、エンジニア全体ではさらに利用頻度が低い可能性もあるだろう。
図1 最近1年間の集合研修利用頻度(N=455) |
集合研修の利用は減少傾向に
次に上記集合研修の利用頻度がどう変化しているのか、最近1年間の傾向を尋ねてみた。結果は図2のとおり、「利用頻度は増えている」人が全体の11%にとどまったのに対し、「減っている」は36%に達しており、集合研修の利用機会の減少傾向が明らかになった(図2)。
図2 最近1年間の集合研修利用頻度の変化(N=455) |
集合研修の利用頻度の減少理由は?
ところで集合研修の利用が減っている背景には、どのような課題があるのだろうか? 利用が「減っている」と答えた読者を対象に、その理由を尋ねたところ、「業務が多忙になり、受講する時間がない」がトップになり、「勤務先の教育予算が削減された」がそれに続く結果となった(図3)。
図3 集合研修の利用頻度が減少する理由(複数回答:集合研修利用減少者n=163) |
確かに集合研修はほかのスキルアップ法に比べ、時間や費用面の負担が大きい。会社業績や業務スケジュールの影響も受けやすいだろう。しかし、本当に必要なものであれば、時間もお金もなんとか工面するのではないだろうか? その意味では、時間/金に次いで挙げられた「受講したい内容に合ったコースが提供されない」ことの方が、より重要な意味を持つように思われる。こうした“受講ニーズとコース内容のミスマッチ”がある限り、たとえスケジュールを調整し、金額を安くしても、この先集合研修の利用頻度が上がることはないだろう。
教育ベンダ選択で重視すること
では、このような“集合研修 逆風の時代”に選ばれる教育ベンダとは、どんな特徴を持っているのだろうか? 読者に研修事業者を選ぶ際の重視点を尋ねたところ、「特定テーマについて深い知識/ノウハウがある」および「講師の質が高い」の2点が上位に挙げられた(図4)。
図4 集合研修事業者選択時の重視点(3つまでの複数回答:勤務先集合研修実施者:n=335) |
提供コースの内容面では、カバーする分野の「広さ」よりも「深さ」が重視されている点が興味深い。図3の研修利用減少理由の4番目にも、「書籍やWebなどほかの情報源が充実し、研修の必要性が薄れた」ことが挙げられており、集合研修には他情報源を超えた専門性が求められていることが分かる。
またコース内容の専門性が高まるほど、それを教える“講師の質”が重要となるのも当然だろう。集合研修が今後エンジニアのスキルアップに生かされるためには、マスプロ的な研修ではなく、受講ニーズに合わせて細分化されたコース/講師を提供する必要があるようだ。
読者のコメントより | |
|
集合研修で学びたい分野
最後に、読者が今後“集合研修を利用して”学びたいと思っている分野は何かを紹介しておこう。さまざまな選択肢を用意したところ、「プロジェクト管理(PM)」や「オブジェクト指向分析/設計(OOAD)」を選ぶ読者が多くなった(図5)。個別のプログラム実装技術などに比べ、PMやOOADは本を読んだだけでは分からない/身近で試すのが難しいという共通点がある。書籍やWebなどの情報環境が充実した今日でも、集合研修の可能性は、まだ開拓の余地がありそうだ。
図5 集合研修で学びたい分野(N=455) |
調査概要
調査概要 | |
調査方法
|
Engineer Life フォーラムからリンクした Webアンケート |
調査期間
|
2002年11月11日〜12月6日 |
有効回答数
|
455件 |
関連記事
・教育ベンダが教える
セキュリティ技術の学び方(Engineer Life)
・オブジェクト指向開発を極める実践トレーニング(Development
Style)
Engineer Life 読者調査結果発表 |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。