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ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス

ITアーキテクトが見た、現場のメンタルヘルス

第10回 欲しいものを手に入れるには「場所」が重要

樋口研究室
樋口節夫
2008/6/20

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常にコンピュータ並みの正確さを要求されるITエンジニアたち。しかし、ITエンジニアを取り巻く環境自体に、「脳を乱す」原因が隠れているという……。ITアーキテクトが贈る、疲れたITエンジニアへの処方せん。

 コンピュータの仕事をすれば、将来にわたって役立つスキルや知識が身に付く。そう思って会社に入ったのに、会社は何も教えてくれないし、与えてくれない――「こんなはずではなかった」と落ち込んでいるITエンジニアは多いのではないでしょうか。今回は、手に入りにくいものを手に入れるための、上手な発想法を考えてみましょう。

技術や知識を手に入れたい

 樋口研究室のオフィスに通う、3人のITエンジニアの話をします。3人とも違う会社に勤めていて、もっと技術や知識を手に入れたいと思っています。でもなかなかうまくいきません。話を聞いていると、会社の考え方や規模によって、社員の教育の方法が全然違うことがよく分かります。

 Aさんは、社員約30人のソフトウェアベンダに勤めています。

 先日、会社の営業がお客さまにパッケージソフトを売ったそうです。以前から動いているお客さまのシステムに組み込むには、ソフトの改修が必要です。Aさんは、そのリーダーに任命されました。これまで設計の仕事が多かったAさんは、お客さまや協力会社の管理もしないといけないリーダーの仕事に、多少不安がありました。

 Aさんはあるとき、新聞でプロジェクト管理の基礎を学ぶ講座を見つけました。期間は2日間。Aさんはいまの会社に入ってから、じっくり研修を受けた記憶がありません。良い機会なので、この講座に出席しよう。そう思って社長(小さな会社なのでAさんの上司は社長です)に申し出ました。すると社長が、こんなことをいったそうです。

 「教育はムダ。現場に勝る教育はない。私はそれでやってきた」

 Aさんはショックを受けたそうです。でも社長のいうことも分かるといいます。Aさんの会社は、社長と役員の技術力で築き上げた会社です。社員は生え抜きの技術者ばかり。自分のスキルは、自力でゲットする。これが会社の考え方です。

 「現場を見て学ぶ」。これは正論だとAさんも思っていました。でも変化の速いITの世界です。せめて何か武器を持って現場に出ないと、すぐに戦死するかもしれない。Aさんはそういうふうにも考えていました。Aさんはいいます。

 「自分は、会社で全然メンテナンスされていない。頑張ろうとは思っているけど、ちょっとつらいなあ。そう思いました」

 続いてBさんの登場です。Bさんは、社員約300人のシステムインテグレータに勤めています。

 Bさんの仕事は、お客さま先でのシステム開発です。あるとき、1つの仕事がようやく納期を迎え、次の仕事までにちょっと余裕ができたそうです。Bさんの会社では、1年間で決まった時間の研修受講を認めています。でもお客さま先に出ていると、その時間を確保できません。ですから仕事と仕事の間は、研修を受けるのに良い機会だそうです。

 Bさんはネットで、自分の仕事に役立ちそうな研修やセミナーをピックアップして、上司に出席の許可をもらいに行ったそうです。でもそのとき、上司からいわれた言葉にBさんは驚きました。

 「有料研修はダメ。無料の研修を選ぶように。そういわれました」

 な、なんと、無料の研修? そんなの存在するのですか……。Bさんはそう思ったそうです。上司がいうには、ソフトウェアベンダやメーカーが無料のセミナーを実施しているそうです。それを選びなさいといわれたのです。

 Bさんは再度、ネットで検索しました。でも「無料」とか「タダ」というキーワードでヒットするのは、展示会や製品の紹介セミナーばかり。Bさんが参加したい技術のセミナーなどありません。Bさんは検索に疲れてしまって、結局、参加をあきらめてしまったそうです。Bさんはいいます。

 「経費の削減も分かりますが、私への経費も削減されたようで、ちょっと寂しい……」

教育制度が充実していても

 最後はCさんです。Cさんは、社員約3000人のITサービス会社に勤めています。

 Cさんの会社は、教育制度が充実しています。メンター(相談役)制度では、社員に相談役の先輩社員が付いてくれます。Cさんにも、スキルが高いと評判の先輩がメンターに付きました。

 初めCさんは、仕事の相談に乗ってもらえることがうれしかったそうです。でもしばらくしたら、先輩の話を聞くのがちょっと面倒くさくなってきたそうです。Cさんはいいます。

 「最初のうちは、自分にスキルがないために、先輩のいっていることが理解できないのだと思っていたのです」

 Cさんはあるとき、この悩みを同僚に打ち明けてみました。すると同僚も、この先輩に対してCさんと同じように思っていたのです。Cさんは、ほかの同僚にも尋ねてみました。するとその同僚も、先輩に対して同じように思っていることが分かりました。

 Cさんは気付きました。そもそもこの先輩、話す言葉が難しすぎるのではないか……。先輩の言葉には、専門用語や省略語、カタカナ言葉が多いのです。例えば「お客さまと会う時間を増やすと売り上げが伸びる」。そういえば済むものが、先輩がいうと「カストマーとのフェイスタイムをアップさせるとプロフィットがゲットできる」、こんな感じになるそうです。Cさんはいいます。

 「スキルは、うまく相手に伝達できてこそ価値があるのかなあ。そういう感じがしました」

 確かにそうですね。社内に教育するための仕組みをつくったら、それを運用する先生も教育しないといけない。そう思いました。

 技術や知識を手に入れるのは、難しい作業ですね。お金や時間もかかります。会社では、自分の思いどおりにお金や時間を使えるわけではありません。会社の思いと皆さんの思いを一致させない限り、欲しいものは手に入らないと思います。

手に入れるための行動三角形  

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