第1回 パン屋さんの貸借対照表を作ってみよう
日本公認会計士協会準会員
小澤文子
2008/4/15
企業の情報システムにおいて、各種業務システムと会計システムとの連携は重要であり、ITエンジニアが会計システムに触れる機会も多いのではないでしょうか。本連載では、基本的な会計知識を解説します。ITエンジニアとして会計システムに携わった経験のある筆者が、ITエンジニアに役立つ簿記・会計の基礎知識をお伝えします。会計システムにかかわらないという人も、簿記・会計に親しんでいただければと思います。 |
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本連載は、新人プログラマのイナバ君が、公認会計士の卵であるブンコさんから会計の基礎知識を学ぶ、物語形式の解説記事です。連載第1回の今回、イナバ君はパン屋さんを事例にして貸借対照表と損益計算書について学習します。
3月に九州のグルメ大学を卒業して4月から東京・東銀座にある会社、食通テックのプログラマとして就職したイナバ君。まだ23歳なのに体重が123kg、ウエストが123cmもあるメタボエンジニアです。恰幅(かっぷく)がよく、デーンと構えて見えるためか、同期からは“イナバ部長”というあだ名で呼ばれています。しかしイナバ君は、見た目はオジサンでも中身は新人です。まだまだ分からないこともいっぱいあるのです。読者の皆さん、イナバ君の成長を温かく見守ってくださいね。
登場人物 |
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名前:イナバ君(あだ名はイナバ部長) 立場:新人プログラマ 出身:九州 体重:123kg ウェスト:123cm |
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名前:ブンコ先生 立場:公認会計士の卵 趣味:子ども、動物と遊ぶ 心境:一生懸命なイナバ君が可愛い |
■新人プログラマの悩み
来月から、企業の会計システムの開発プロジェクトに入るんです。さっそくプロジェクトリーダーから「簿記の勉強をしておくように!」といわれているのですが、何から手を付けたらいいのか……。簿記って難しいんじゃないですか? そもそも会計システムと簿記って、どんなつながりがあるのですか?
イナバ君を指導してくれるのは、公認会計士の卵のブンコ先生です。ブンコ先生は、イナバ君の会社の研修で教えている外部の講師です。普段から動物と子どもが大好きなブンコ先生。生徒にも愛情を持って接しています。
たしかに、簿記の知識を習得するためには、ある程度の簿記のルールや、ちょっとした専門用語を覚える必要はあるわね。でも、逆に考えると、そのルールや専門用語さえ押さえてしまえば、あとは機械的に処理できるシンプルな面もあるの。
うーん、まだまだ不安が……。
それじゃ、いきなり簿記の勉強に入る前に、そもそも会計とは何か、からお話ししましょうか。■1.会計とは何か
手始めに、カンタンな連想ゲームから。「会計」と聞いて思い出すことは?
飲み会が終わって代金を支払うとき、お店の人に「お会計お願いしまーす」っていいますよ!
うんうん、「お勘定!」ともいったりするわね。ほかには?
この間は、結婚式の2次会で会計係を頼まれました!
なるほど。それは出席者からの会費を集めて会場に支払いをしたり、終わってから収支報告をしたりっていう、お金の管理をする役割ね。このように、「会計」はいつでも「お金」と関係があるってこと。
【キーワード】会計 |
会計(かいけい)とは、金銭や物品の出納を貨幣を単位として記録、計算、管理することである。(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』より) |
とすると、企業が行う「会計」は、企業の経済活動をお金の視点で表現したものといえるわね。さらに、誰に対して報告するのかによって、財務会計と管理会計という2つの領域があるのよ。
【キーワード】財務会計と管理会計 |
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財務会計 | 管理会計 | |
目的 | 外部報告目的 |
内部報告目的 |
報告内容の規制 | 各種法律により規制されている | 企業独自のルールによるものであり、特に決まったものはない |
報告様式の規制 | 各種法律により規制されている | 企業独自のルールによるものであり、特に決まったものはない |
情報の性質 | 過去の実績情報 | 過去の実績情報だけでなく、将来の予測や見積もりなども含む |
財務会計の方が、報告内容や報告様式について厳格に規制されているんですね。
そのとおり。財務会計は、企業の外部に公表されるものだから、その社会的影響は大きいわ。それに、情報の利用者にとっては、1つの企業だけでなく複数の企業の報告を比較できることも必要。だから、共通のルール(法律)に従って報告がなされることが求められるの。
イナバ君、パン屋を作る(貸借対照表も作る) |
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