Oracleエンジニアを目指す
ORACLE MASTER Gold ポイント解説
第1回 Gold取得のための勉強方法と教材選び

小野寺智子
2001/12/20

■この連載の目的は?

 さまざまな分野で欠かすことができないデータベース。その代表がOracleデータベースでしょう。このOracleデータベースには、技術者向けに認定試験があります。それが「ORACLE MASTER」(OM)です。ベンダー資格では難しい方にランクされる人気資格の1つで、受験者数も年々増えているようです。もともとはITエンジニア向けの資格ですが、近年ITが注目されるようになり、エンジニアではない一般の人も受験しているようです。

 OMには、Oracleデータベース入門レベルを認定する「Silver」、基本的な運用/管理が行え、ユーザーへの指導ができる上級レベルを認定する「Gold」、そしてOracleデータベースのエキスパートであると同時に、Oracle Certified Professional(OCP)に世界的に認定される「Platinum」となっています。

 本連載では、すでに「ORACLE MASTER Silver」(Silver)を取得し、これから「ORACLE MASTER Gold」(Gold)取得というステップアップを考えている方に、各カテゴリのポイントを解説し、その中でも特に間違いやすいところ、理解しにくい個所を、図解と例を挙げながら解説していきたいと思います。Silverと異なり、Goldからは実践的な内容が問われるため、問題量も多く難しくなります。そのため、あきらめてしまう受験者も少なくありません。そんな方でも見て分かるように頑張っていきたいと思います。

 記念すべき1回目は、時間に追われてなかなか勉強時間を取れない方の勉強方法について、どのような教材を使って勉強したらよいのか、Goldに向けて準備することなどを、私の経験から紹介したいと思います。

■勉強時間の確保

 仕事をこなしながらGoldの資格取得のために勉強するのは大変なことです。Goldは、Silverの取得が前提となっており、Silverの2科目(「SQL」と「Oracle入門」)、さらに、「PL/SQL」と「DBA」の2科目の試験に合格しないとGoldに認定されません。

 私がSilverを取得するために勉強を始めたころは、会社での残業が多く、なかなか勉強時間を取ることができませんでした。そのため、工夫して勉強時間を確保したのです。それは貴重な昼休みの時間です。昼休みに食事を早く済ませると、残る時間が40分弱ありました。これを1週間続けると約3時間確保できることになります。昼休みだからゆっくりと食事をして楽しくおしゃべりしたいと思いましたが、これを我慢して試験を受ける日まで、毎日40分弱の時間を確保しました。

 さらに、空き時間はどんなタイミングで発生するかわかりません。例えば、交通渋滞でバスが遅れます。すると、バスが遅れる分、空き時間(待ち時間)が発生します。偶然空いた時間ですが、その時間で何か1つぐらい覚えることができます。そのため、私は日ごろから問題集とノートを持ち歩いていました。問題集のような重い本を持ち歩きたくないと思う方は、翔泳社のの「オラクルマスター教科書」のチェックシートを切り離して持ち歩くのがいいかもしれません(後述)。そして休日は、できる限り勉強に専念します。朝早くから図書館に行くのもよいでしょう(私も何度か行きました)。

 しかし、やみ雲に時間を確保しても、その時間で何をするかが問題となります。私は、休日には各カテゴリをすべて読み返し、苦手なところを重点的に勉強しました。昼休みの40分は、「OLN」(Oracle Learning Network)を利用して学習しました。確保した時間内で何を勉強するかは、事前に計画を立てておくと効率的に勉強ができると思います。

■学習のために使用した教材は

(1)参考書・問題集は自分が使いやすいものを選ぶ

 代表的な参考書としてどこでも取り上げられるものとしては、リックテレコムの『オラクルマスターハンドブック』シリーズと、翔泳社の『オラクルマスター教科書』シリーズがあります。Silverを取得する際に両方の本を使用した結果、使いやすいと感じたのは、『オラクルマスター教科書』の方でした。そのため、Goldを取得する際には『オラクルマスター教科書』(下で紹介しているのはPL/SQL編ですが、ほかにGold DBA編もあります)だけを使用しました。この本にはチェックシートが付いているので、その部分を切り離して持ち歩くと便利なのです。また、勉強の最後の仕上げとして、IDGジャパンの『直前必修問題集』シリーズを使いました。本番の試験に近い問題が収録されています。

オラクルマスター教科書
Gold PL/SQL編

林優子著、日本オラクル監修
翔泳社
2000年10月
ISBN4-88135-927-4
3800円


直前必修問題集
ORACLE MASTER Gold


NRIラーニングネットワーク著
IDGジャパン
2000年12月
ISBN4-87280-420-1
3200円

(2)研修に行く

 PL/SQLは、研修に参加して勉強しました。私が選んだ「PL/SQL基礎コース」という研修は、私が住んでいる仙台でも行われています。仙台で受講する場合は、2日間で約10万円ぐらいの費用だったと記憶しています。しかし、私はあえて地元で受講せずに東京で1日集中コースを受講しました。交通費などを合わせると、仙台で2日間受けるのとほぼ同額の費用がかかりますが、たまに東京に行って刺激を受けることもいいだろうと思って決断したのです。

 このように、PL/SQLに関しては研修で1日集中コースが設けられているので、休日しか時間が取れない方にもお勧めできます。しかし、実際に受講してみると内容がきついことは事実です。単純に考えても、2日間コースの倍の速度で進まないと、内容が終わらない計算です。そのため、研修を受ける際は、ある程度予習してから受けることが大切だと実感しました。しかし、とにかく研修に参加することは、資格取得の一番の近道だと思います。

(3)研修に行けないのであればOLNを

 OLNとはOracleが提供しているeラーニングのことです。自分の好きな時間に好きなだけ自己学習ができます。インターネットに接続できるPC環境さえあれば、どこからでも利用できます。ただし、Media Playerなどが必要となります。OLNの「BA8i」は、最近グレードアップして理解度チェックテストや各カテゴリが充実しました。DBAに出てくると噂される「順番を並べる」といった問題も、実際の試験と同じ形式でチェックテストにあります。ただし、OLNは利用期間によって金額が変わるため、例えば3カ月で申し込んだ場合、3カ月以内に資格を取得することを目標にして学習するといいでしょう。そのほか、「e-test」では自分のスキルを確認することができます。

OLNの理解度をチェックするテスト。プルダウンメニューから解答を選びます。全問正解しないとバツ(×)が表示されます

システム・テクノロジー・アイの「istudy」

(4)istudy

 システム・テクノロジー・アイの「istudy」は、CD-ROM版とオンライン版の2種類があります。オンライン版の方が、CD-ROM版を購入するよりも金額の面ではリーズナブルです。なお、『オラクルマスター教科書』は、システム・テクノロジー・アイのWebサイトで購入すると、ポイントが付きますし、注文した翌日には届きます。

 istudyは、実際の試験と似たような問題を実際の試験と同じ形式で行えます。解説も問題ごとに付いています。

■PL/SQLを受けるに当たって

 PL/SQLを勉強する前に、プログラミング経験のない人は、できれば経験のある人に少し教えてもらうか、分かりやすく説明している本を読み、ある程度プログラムがどのようなものかを理解してから勉強を始めてください。なお、データベーストリガやプロシージャはGoldでは出題されません。

 私も当初、まったくプログラム経験がなかったので、オーム社の『プログラミングがわかる本』を参考にしました。

■DBAを受けるに当たって

 一番範囲の広い科目です。しかも、暗記しなければならないことが多いのですが、最も良い学習方法は、理解することに尽きます。カテゴリは全部で20もありますから、自分の得意な(または得意そうな)カテゴリから始めるか、出題範囲の高い順から勉強するか、事前に計画を立てると効率的に勉強ができると思います。

コラム:Oracleとの出合い
 私がOMを受けるきっかけとなったことをお話ししましょう。

 私がOracleに出合ったのは、昨年(2000年)の2月です。介護保険という新しい保険制度が導入され、そのために開発したシステムのサポート要員として、派遣会社から開発会社に派遣されたのです。その開発会社では、それまでは別のソフトウェアで開発していたのですが、複雑な介護保険制度に対応すべく、思い切ってOracleに切り替えたということでした。

 私のサポート業務は、当初はPCの操作指導ということでした。そのころはまだOracleの素晴らしさを知らずにいました。そのうち、あまりの人手不足のため、障害が起きた場合の要員としても手伝うことになり、Oracleの素晴らしさを知り、この製品についてもっと勉強したいという思いを強くしました。

 さらに、その会社のシステムは、あまりにもバグが多く、Oracleの特性を生かし切れていないパフォーマンスで、その状況のままシステム開発・導入を推進していたのです。もっと驚いたことは、その開発会社ではOracleで開発を進めているにもかかわらず、Oracleの研修を受けたエンジニアがだれもいなかったことです。そのため、サポートは客先で怒鳴られ、ただひたすら頭を下げるしかありませんでした。開発会社の本社に連絡をしても電話がつながらない、つながってもOracleが分かる人間はわずかしかおらず、その人ばかりが対応に追われる状態でした。

 そのような状態を見ると、さらにOracleを覚えたいという欲求が募りました。後にOMのことを知り、何の抵抗もなく受験に踏み切れたのは、Oracleの良さを知ったのに、それをうまく使いこなせなかったことにいら立ちを覚えたからです。自分の立場も、派遣スタッフですから、いつどうなるかは分かりません。自分が説得力のある資格を取得できれば、自分もクライアント先の企業も満足できる仕事ができるようになると思ったのです。

 OMの資格を知ってからOracleの世界に入る方、私のようにOracleに出合ってから資格試験を考える方、さまざまな方がいらっしゃると思いますが、このように素晴らしいデータベースに出合えたことは、自分にとってとても幸運だったと思っています。


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