
第1回 「ITエンジニアは職人気質を取り戻すべき」
萩本順三(匠Lab 代表取締役)
2008/11/26
(1)ユーザーも開発者も理解しづらい産物を作りかねない
ユースケース記述からロバストネス図へつなげると、アクターとシステムの挙動を精密にとらえようとしすぎ、いつの間にか、ユーザーから見たシステムの使われ方をユーザーの視点で説明する観点を忘れてしまう。その結果、ユーザーが理解できないユースケース記述になる。揚句の果てには、システム開発者でさえユースケース(要求)とは程遠い世界にどっぷりと漬かってしまうのである。
図3 ユースケースが要求から仕組みの世界へ変化する
(2)分析モデルを作るまでに多くの工数を要する
先にも述べたが、ロバストネス分析は教育的であり、実際の開発には不向きである。なぜなら、ロバストネス活用のゴールは、ビジネスの中で重要な語彙(ごい)をクラス名とした、実装アーキテクチャに依存しない基本構造を分析モデルとして構築することにあるからだ。しかし、分析モデルは、要求開発(注)段階で作成されたビジネスシナリオや業務フローから抽出すれば、容易に作成できるものである。それなのに、多大な時間をかけて、ロバストネス分析で分析モデルを作る意味があるのだろうか?
また、一度ユースケースに分類した業務概念を、ロバストネス分析でバラバラにし、共通点を見つけながら分析モデルを作り上げるというのは、実は大変難しい作業である。
もしロバストネス分析を使うとするなら、ToBeビジネスを理解する段階で、概念モデルを作成しておくことが重要である。もちろん、私はそのように教育してきているのであるが、いままでの問題プロジェクトを見ると、概念モデルがなく、ロバストネス分析を介して分析モデルを作成していくやり方がまん延しているようなのだ。
図4 ユースケース記述からロバストネスへつなぐ流れの問題点
| (注)要求開発:システム開発の前段階でToBeビジネスをデザインしITにつなげていくための考え方で方法論として要求開発アライアンスが提供している。 |
◇◇◇
いかがだろうか。ユースケースモデルは使い方を誤ると要件定義の問題だけではなく、設計にも支障がでてしまう。ここでは、解決策のヒントについて少しだけ書いている。読者も、この問題をどう捉え、どうしたら解決できるのか、しっかり考えておいてほしい。さて次回は、分析モデル・設計モデルについて、現状の問題を明らかにする。
| 筆者プロフィール | ||||
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ソフトウェア開発の匠 バックナンバー
- 第1回 「ITエンジニアは職人気質を取り戻すべき」
- 第2回 分析モデルはユーザー視点でシンプルに
- 第3回 「現状のソフトウェア開発は間違っていないか?」
- 第4回 アジャイル開発と反復開発の落とし穴
- 最終回 ソフトウェア開発の革命
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