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>>各回の解説お茶でも飲みながら会計入門

第8回 キャッシュ・フロー計算書の仕組みと見方

文:吉田延史(日本公認会計士協会準会員)
イラスト:Ayumi
2009/1/22

意外と知られていない会計の知識。元ITエンジニアの吉田延史氏が、会計用語や事象をシンプルに解説します。お仕事の合間や、ティータイムなど。すき間時間を利用して会計を気軽に学んでいただければと思います。


今回のテーマ:キャッシュ・フロー計算書

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 キャッシュ・フロー計算書は、上場企業が開示する財務諸表の1つであり、一期間中の資金の収支を明らかにするものです。損益計算書はその期間の経営成績を表すためのものですが、このキャッシュ・フロー計算書は、一定期間における実際の収支が分かるものです。キャッシュ・フロー計算書は、損益計算書と貸借対照表をベースに作成しますが、表示方法が特徴的で、見にくい部分があります。今回は、キャッシュ・フロー計算書の仕組みと見方について解説します。

nobu 【1】実際にキャッシュ・フロー計算書を見てみよう

 キャッシュ・フロー計算書は、通常、連結ベースでの開示しかありません。ソフトバンクグループの平成20年度3月期の有価証券報告書から、連結キャッシュ・フロー計算書を実際に見てみましょう。

 どういった活動から収入・支出があったかによって、I営業活動II投資活動III財務活動に大別し、表示します。

I 営業活動区分

 営業活動区分では、文字どおり、本業による収入・支出を計算します。ソフトバンクグループの概略を下記に記載します。

I 営業活動区分

(単位:百万円)

1.税金等調整前当期純利益

225,887

2.減価償却費

220,254

     :

11.受取利息及び受取配当金

△3,754

     :

13.売上債権の増加額

△309,196

     :

小計

311,066

18.法人税等の支払額

△52,815

     :

営業活動によるキャッシュ・フロー

158,257

出典:ソフトバンク

 これを見ると、以下のような疑問が生じることと思います。

(1)「1.税金等調整前当期純利益」には営業活動以外から得た損益も含まれているのではないか?

(2)「2.減価償却費」は費用だから△(マイナス)ではないか?

(3)「11.受取利息及び受取配当金」は収益だからプラスではないか?

(4)売上債権が増加したことでなぜ、キャッシュ・フローが△(マイナス)となるのか?

(5)「18.法人税等の支払額」は営業活動ではないのではないか?

 (1)〜(5)について回答するためには、営業活動区分の計算について、体系を明らかにする必要があります。そこで体系を上記概略に加えてみます。

I 営業活動区分

(単位:百万円 )

計算体系

1.税金等調整前当期純利益

225,887

<STEP1>
連結損益計算書の「税金等調整前当期純利益」からスタートする
2.減価償却費

220,254

<STEP2>
支出がないのに営業費用として計上されている項目をプラスする

     :

 

11.受取利息及び受取配当金

△3,754

<STEP3>
営業活動外の損益をなかったことにする

     :

 

13.売上債権の増加額

△309,196

<STEP4>
営業活動に関係する資産・負債の増減によるキャッシュ・フローの調整を行う

     :

 

小計

311,066

以上を計算し、小計を算出
18.法人税等の支払額

△52,815

<STEP5>
法人税などの支払額を含む、どこにも分類できない項目を調整し、営業活動によるキャッシュ・フローの合計額とする

     :

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

158,257

 

 上述の疑問について、以下に回答します。

(1)税金等調整前当期純利益には営業活動以外から得た損益も含まれているのではないか?

⇒そうであるからこそ、STEP3で営業活動外の損益を調整します。

(2)減価償却費は費用だから△(マイナス)ではないか?

⇒減価償却費はSTEP2の支出がない費用に当たりますので、プラスします(第4回「システム導入にかかるコストを損益インパクトで見る」参照)。

(3)受取利息・受取配当金は収益だからプラスではないか?

⇒STEP3 営業活動外の損益はなかったこととするため、相殺の意味で収益をマイナスします。

(4)売上債権が増加したことでなぜ、キャッシュ・フローが△(マイナス)となるのか?

⇒STEP4 売上債権の増加により利益は増えますが、資金はまだ手元にきていませんので、利益からマイナス調整を行います。

(5)法人税等の支払額は営業活動ではないのではないか?

⇒法人税等の支払額は、どこにも分類できません。そのため、営業活動の小計以下で計算します。

II 投資活動区分、III 財務活動区分

 投資活動区分では、営業活動外の資産項目につき項目別に収入・支出を総額で記載します。財務活動区分では、営業活動外の負債・純資産項目につき項目別に収入・支出を総額で記載します。投資活動の概略を記載します。

II 投資活動区分

(単位:百万円)

2.投資有価証券等の取得による支出

△45.576

3.投資有価証券等の売却による収入

44.175

投資活動によるキャッシュ・フロー

△322,461




nobu 【2】キャッシュ・フロー計算書作成に必要な会計データ

 最後に会計システム上、必要なデータを見ておきましょう。営業活動区分については、営業活動区分の小計から上の項目については、貸借対照表と損益計算書のデータを流用することができますので、キャッシュ・フロー計算書として特別な記録を必要としません。営業活動区分の小計以降と、投資・財務活動区分については、実際の収入・支出を別途考慮し、データとして保持する必要があります。

 黒字倒産する会社は、利益が上がっていても、キャッシュ・フローでは支出超過であることが多く、そういった情報を見ることができる点からも、キャッシュ・フロー計算書は重要です。やはり、損益と資金の両面から会社を見ることが重要ですね。それではまた。

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筆者プロフィール
吉田延史(よしだのぶふみ)
京都生まれ。京都大学理学部卒業後、コンピュータの世界に興味を持ち、オービックにネットワークエンジニアとして入社。その後、公認会計士を志し同社を退社。2007年、会計士試験合格。仰星監査法人に入所し現在に至る。

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