第12回 ITエンジニアになぜ会計は必要なのか
荒井亜子(お茶でも飲みながら会計入門 編集担当)
2009/3/31
| ITエンジニアに“意外と知らない”会計知識をお伝えする連載、「お茶でも飲みながら会計入門」の筆者インタビュー。そもそもこの連載は何のためにあるのか? |
■お茶でも飲みながら会計入門の現状と課題
@IT自分戦略研究所に、「お茶でも飲みながら会計入門」という連載がある。会計システムに携わるITエンジニアに、業務知識として会計の入門知識をお伝えする連載だ。忙しいITエンジニアは、会計知識の習得にテクニカルスキル習得ほどの時間を割くことはできないだろう。ならば仕事で一息付くとき、例えばコーヒーやタバコで一服するすき間時間に読み切れる量、負担にならない軽さで、会計の知識を提供できたら、と始まった企画だ。
連載を開始して10回が過ぎた。筆者の吉田延史さんは会計士の業務の合間を縫って一生懸命企画を考えてくれている。@IT自分戦略研究所も吉田さんと協力し、新聞や経済誌に頻出する会計用語を分かりやすく伝えるということに注力してきたつもりだ。ところがこの連載、編集担当自ら告白するが、思いのほか読者からの反応が薄い……。第11回の「任天堂の減益から読む、円高が会計に与える影響」を除けば、PV数(ページビュー:ページの閲覧回数)はあまり芳しくない。このまま続けていていいのか、悩むところだ。
実際、危機感を抱いたのは吉田さんの方が早かった。吉田さんから@IT自分戦略研究所に対し、連載について再度打ち合わせをしたいと申し出があった。吉田さんとの度重なる反省会をとおして、見えたことがあった。内容に日商簿記検定1級レベルのワード(繰延税金資産、・パーチェス法や持分プーリング法)が出てきたりと、入門にしては少し難しすぎたこと。そもそも読者の皆さんが会計を必要と感じていないのかもしれないということだ。前者については、記事中で簿記1級の知識がなくても理解できるよう配慮し解説したつもりである。一方、後者については、連載をとおしてなぜITエンジニアに会計が必要なのかを読者の皆さんにきちんとお伝えしていなかった。これを重く受け止め、今回は「ITエンジニアになぜ会計が必要なのか」、連載の意義を伝えられればと思う。
■自らの経験から、ITエンジニアに会計は必要だと思う
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| 吉田延史さん●2000年4月、オービックに入社。2005年7月、公認会計士の勉強を開始する。2007年1月、公認会計士になることを決意し、オービックを退社。同年8月の公認会計士試験に合格。同年12月、仰星監査法人に入所。特技はゲーム。カプコンのヴァンパイアで、1998年に全国1位になった。「その記録はいまだに破られていない(はず)」と自負する。 |
吉田さんは京都大学 理学部 数学科を卒業後、2000年オービックに入社。ネットワークエンジニアとして、TCP/IPやVPNといったテクニカル用語に囲まれ勤務していた。会計システムに直接かかわる機会はなく、はじめのうちは業務で会計を必要に思うことはなかった。
だがITエンジニアとして働いていると、業務に会計が影響していると感じることが多々あったのだという。「例えば、3月にITエンジニアが忙しいのは会計が影響しているからです。3月決算の会社であれば、営業が売り上げを3月に計上するために顧客から検収書を取ることに奮闘します。するとITエンジニアは3月中に納品することを迫られ、忙しくなりますよね」(吉田さん)
業務に会計が影響すると感じていたのは吉田さんだけではなかった。当時の上司からも「システム構築に携わるなら、ある程度会計の知識を持っていた方がいい」といわれたことがあったという。
「どんなシステムでもシステム停止になる恐れはあります。例えば、サーバのバックアップに失敗し、サーバが停止したとします。その影響範囲はシステムによって違いますよね。人事のシステムだったら本業に影響するほど出ません。人事の人は困りますが、顧客に対しての影響はほぼないでしょう。でもこれが販売管理のシステムだったら話は違います。顧客の商売に直接的な影響を及ぼしてしまいますから。上司がいいたかったのはそういうことだと思います」(吉田さん)。
「今日出荷しないといけない製品」のデータがなくなると、どれを出荷していいかも、どの納品書を運送会社に渡すべきかも分からない。運送会社はどこに何を運べばいいかが特定できず、出荷がストップする。顧客の商売が止まってしまう。
元ネットワークエンジニアの吉田さんは、「ネットワークのエンジニアであっても、顧客がシステムを業務で使う温度感を知っておかないといけないと思いました。業務の裏には会計があり、会計上にどう数字が転記されていくのかという仕組みを知ることは重要です」と力説する。
出荷管理システムのみならず、販売管理や受注管理、債権管理のシステムでも同様のことがいえる。売り上げや売り掛けの管理、代金の回収にはすべて会計が絡む。
当然ながら、実際にサーバのバックアップに失敗するトラブルに直面したとき、必要なのはテクニカルスキルである。停止したサーバを会計の知識で直せるわけではない。会計の知識は目先のことを考えればいらないもの。だが、顧客が考えていることや業務上どこがクリティカルなのかを把握するには、会計や業務の知識(例えば、受注→売り上げる→代金回収といった仕組みなど)は勉強しておかないといけないのだ。
| ITエンジニアが身に付けるべき会計知識は、 “ビジネス・営業系”と“システム系” |
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お茶でも飲みながら会計入門 バックナンバー
- 第1回 連結決算って何を連結しているの?
- 第2回 有価証券報告書で気になる企業の給与水準が分かる
- 第3回 黒字倒産が起きるわけとその対策
- 第4回 システム導入にかかるコストを損益インパクトで見る
- 第5回 決算書をお化粧する、連結外しの仕掛け
- 第6回 IT企業で仕組まれやすい、循環取引の構造
- 第7回 国際会計基準が日本にもやってくる
- 第8回 キャッシュ・フロー計算書の仕組みと見方
- 第9回 会計監査でIT全般統制をチェックする理由
- 第10回 税法と企業会計のずれから生まれる繰延税金資産
- 第11回 任天堂の減益から読む、円高が会計に与える影響
- 第12回 ITエンジニアになぜ会計は必要なのか
- 第13回 自分が払った消費税、どうやって納められているの?
- 第14回 買収の対価って? ローソンのam/pm買収に学ぶ
- 第15回 損益計算書に登場する5つの利益
- 第16回 システム受注にも使われるリース取引の会計処理
- 第17回 エンジニアのための景気底打ちとIT投資の仕組み
- 第18回 トヨタが赤字でも株主配当できた理由
- 第19回 値下げの限界はどこ? 高速道路800円の真実
- 第20回 JALの危険性が分かる貸借対照表の読み方
- 第21回 出光の営業利益が80億円増加した理由
- 第22回 会計界の洗練されたプログラミング言語――複式簿記
- 第23回 知っておいて損はない! 給与明細の見方
- 第24回 年末恒例イベント「年末調整」を理解する
- 第25回 還付超過はなぜ起こる? 法人税を理解する5W1H
- 第26回 公認会計士の「就職難」はなぜ起こっているのか?
- 第27回 倒産してもJALはなくならない! 会社更生法を知ろう
- 第28回 「事業仕分け」「修正予算」って何?国家予算の全体像
- 第29回 元ITエンジニア3人が語る、会計士も楽じゃない!
- 第30回 意外と知らない? 「退職金」の種類と計算方法
- 第31回 「なぜあんなに高額?」役員給与を決めるのは誰か
- 第32回 キャッシュ・フロー計算書から「粉飾決算」を読み解く
- 第33回 エンジニアも知っておきたい! 営業の基礎知識
- 第34回 すべての道は会計システムに通ず。会計システム入門
- 第35回 『美味しんぼ』の究極のメニュー、製造原価はいくら?
- 第36回 日本企業の決算日、「3月末」が多い4つの理由
- 第37回 ゲームと現実の違いは? 「桃鉄」で減価償却を考える
- 第38回 会計士が「これはよい」と心底思う「会計の良書」4選
- 第39回 総額2兆円分! なぜ円高だと“為替介入”するのか
- 第40回 武富士の経営破たんから、貸倒引当金を理解する
- 第41回 アプリ開発で独立するなら、知っておきたい所得税
- 第42回 アプリ開発で独立したら、消費税をどう納めるのか?
- 第43回 勘定科目はサーフィンに似ている? 原価計算入門
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- 第58回 残ったレッドブルはいくら? 「商品の繰越処理」基礎
- 第59回 エンジニアの勉強会費は資産か費用か―繰延資産
- 第60回 会計におけるWAN構築、「本支店会計」を知る
- 第61回 大王製紙の貸付金問題は、なぜ発見が遅れたのか
- 第62回 「会計のデバッグ」がお仕事! 監査法人入門
- 第63回 オリンパスによる損失隠しの「飛ばしスキーム」
- 第64回 ITベンチャーが採用する、ストックオプションの正体
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