元ITエンジニア3人が語る、会計士も楽じゃない!お茶でも飲みながら会計入門・番外編(29)(1/4 ページ)

» 2010年03月24日 00時00分 公開
[荒井亜子@IT]

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ITエンジニアになったものの、技術があまり好きではない、労働環境がきつい、将来のキャリアが描けないといった理由から、ジョブチェンジを図る人がいる。今回@IT自分戦略研究所は、ITエンジニアから会計士にジョブチェンジした男女3人に、ジョブチェンジ後の心境について語ってもらった。議題は、ITエンジニアと比べた仕事のつらさ/醍醐味(だいごみ)、労働環境、将来のキャリアビジョンなど。お酒を酌み交わしながらのざっくばらんな覆面座談会で、会計士業界の裏話も炸裂(さくれつ)した。


 医師、弁護士と並び三大資格と称される公認会計士(参考:Wikipedia「公認会計士」)。その社会的地位や給与にあこがれる人は多い。ITエンジニアにも一定数の人気がある(*1)が、果たしてITエンジニアが次のキャリアに会計士を選ぶことは幸せなのか?

(*1)@IT自分戦略研究所が2009年11月に実施した読者調査では、「1年以内に取りたい資格」のビジネス系資格の第7位に「税理士または公認会計士」がランクイン。IT投資が経営戦略と隣り合わせである以上、会計知識の重要性を感じるITエンジニアは少なくないだろう。

◆会計士の仕事と座談会参加者の紹介◆

会計士は監査と会計の専門家である。主な仕事は、独占業務である監査、経営コンサルティング、株価算定、上場支援(IPO)、税務である(詳しくは「公認会計士の『就職難』はなぜ起こっているのか?」)。特に、多くの会計士が従事する仕事が監査だ。公認会計士試験合格者のうち内定者の約96%は監査法人に就職している(金融庁の資料「合格者アンケート調査結果」より)。今回集まっていただいた3人の会計士も、監査法人に勤務し監査業務に従事している。なお、本音トークの覆面座談会であるため3人の名前はすべて仮名、顔はイラストでお届けする。


まずは自己紹介

―― ITエンジニアを辞めて会計士になろうと思った動機を含め、これまでの経歴をお願いします。

石田 前職では、日系の大手システムインテグレータでネットワークエンジニアをしていました。この先ずっとITエンジニアで居続けることに漠然とした不安があり、公認会計士くらいインパクトのある資格を取って安心したい気持ちがありました。2005年(25歳のとき)に勉強を開始して、2007年11月に「公認会計士試験」(*2)に合格し、12月に監査法人に就職しました。

(*2)公認会計士試験の流れ:「短答式試験」(第1回短答式試験(12月下旬)、第2回短答式試験(翌5月下旬))→「論文式試験」(8月下旬に3日間)→合格発表(11月)。ちなみに、公認会計士として登録するには、試験のほかに「業務補助」(2年以上)が課せられる。さらに、試験合格後、実務補習(約3年)と修了考査をクリアする必要がある。

鮫島 大学では経営や経済を学び、新卒で外資系の大手コンサルティング企業に就職しました。プログラマを経てSEとして戦略系コンサルティングやBPR(Business Process Reengineering)に携わりました。ITエンジニアで居続けることに不安を感じたのは、中国 大連でブリッジSEをしたときです。大連の優秀なSEが、仕様書を英語で読み、疑問点はきちんと質問し、業務知識まで理解したうえで開発している姿を見て、日本人エンジニアに危機感を覚えました。オフショア開発が進むと、日本人エンジニアは自身の価値を上げるか単価を下げるしか生き残るすべはないでしょう。しかし、単価を下げたら日本では暮らしていけませんから、優秀なうえに日本人より単価が安い彼らと競争していくのは厳しいものがあると感じました。

 また、SE時代の先輩の「クライアントの経営戦略を読めないでプロジェクトに入る意味はない」という発言です。クライアント企業の経営ビジョンや今後の方向性を分かったうえでコンサルしないと、とんちんかんな発言をしてしまうんですよね。

 さらに、コンサルティング企業を辞めた後、フリーランスでSEをする中で、ベンチャー企業を立ち上げた会計士と触れ合う機会があり、独立してやっていくにも会計の知識は必要だと気付き、資格を取得しました。監査法人では2008年から働いています。

雪橋 大学の数学科を卒業して、メーカーでプリンタなどのハードウェアに組み込むソフトウェアを開発していました。わたしは正直、プログラミングがあまり好きではなくて、一生ITエンジニアを続けていくことはしんどいと思っていました。

 会社を辞めて、しばらくはスキーのインストラクターをしていました。でもそれだけでは食べていけず、焦っていました。すでに年齢が30歳を超えていたので、ある程度難しい資格を取らないと仕事が見つからないのではと、“難しい資格ランキング”に載っていた会計士・税理士に目を付けました。会計士資格を調べると税理士登録もできることを発見し、「じゃ、会計士」というノリで会計士に決め、何をするかも分からずに取りあえず目指し、資格を取得しました。監査法人では2007年から働いています。

ITエンジニアの仕事と受験勉強との両立

―― 合格率はわずか10%の公認会計士試験。試験に合格するのに、米国公認会計士は1000時間、日本の公認会計士は3000時間の勉強が必要ともいわれます。働きながら受験して合格した人はわずか数%しかいないのが現状です。ITエンジニアとして多忙に働きながら、皆さんはどのように勉強されたのですか。

石田 勉強はむちゃくちゃ大変でした。平日は毎日ITエンジニアの仕事が20時くらいまであったので、平日に勉強時間を取るのはほぼ無理でした。土日に3〜5コマの講義を消化するのですが、通っていた予備校はそんなハードスケジュールになることを想定していないので、全カリキュラムを一校舎で終えることができず、午前中は池袋、午後は横浜、夜は水道橋と、授業のために校舎をハシゴしていました。試験までの最後の半年は、会社を辞めて勉強に専念しました。そのときは、朝から勉強ができることに感動しましたね。

鮫島 約2年間、フリーランスでSEをしながら会計士の勉強をしました。最後の1年は仕事を辞め、予備校の授業に専念しました。

雪橋 わたしの場合、ITエンジニアを辞めていて後がなかったので、1年で全カリキュラムを終えるコースを取り、2回目で合格しました。

石田 すごい! 普通は1年半か2年でカリキュラムを組むので、1年は本当にタイトなスケジュールですよ。これで受かるのは、日商簿記1級など会計のバックグラウンドがあるか、よっぽど気概の強い人。上級者向けカリキュラムですね。

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