プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

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第10回 自称・非コミュの人に試してほしい「伝え返し」技

ピースマインド
カウンセラー 石川賀奈美
2011/3/11

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コツ(3):「伝え返し」と「問い掛け」を駆使する

 「自分は正しい」という意識が強いと、話し方が一方的になりがちです。この影響は、時間差で現れてきます。正論を言われた相手は会話の中ではうなずきます。しかし、心の中には面白くない気持ちが残っています。

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 ちょっとしたきっかけ(トラブル発生など)で面白くない気分をぶつけてきたり、コミュニケーションそのものを避けられたりして、結果的にチーム行動がままならなくなってしまいます。「相手の感情にまで配慮できない」と思われるかもしれませんが、気を付けるポイントは2つだけです。

  • 相手の言葉をそのまま伝え返す

  • 相手から答えが出るような質問をする

 スケジュール調整や仕事の依頼などでは、下記のように応用してみてください。

 相手:この日程では難しいですね

 自分:この日程では難しいんですね(伝え返し)

 相手:ええ、○○○と××に時間がかかると思います。

 自分:○○○と××に時間がかかる……(伝え返し)。必要な時間はどれくらいでしょうか(相手の気付きを促す質問)

 相手:○○○には2カ月、××の方は3週間というところでしょうか。うーん、そうか、××の方を前倒しでやれば間に合うかもしれませんね

 相手は、伝え返しによって受け止められた感じを持ちます。その後、現実を検討するための質問を投げ掛けます。こちらの言いたいことが相手から出てくるよう、相手が見落としていることについて質問します。

 ほんのちょっとした工夫ですが、伝え返しはコミュニケーションの成否に大きな影響を与えます。

【カウンセラー用語辞典】 伝え返し
 カウンセリングの中で重要なのは「相手の話を相手の伝えたい気持ちごと正確に聞くこと」である。この目的を達成するために「相手の使った言葉を変えずにそのまま返す」方法を用いる。これを「伝え返し」と呼ぶ。

 伝え返しは、ただ機械的に相手の言ったことを繰り返せばよいわけではありません。話し手の言葉のニュアンスや感情を味わいながら返すことがポイントです。話し手は、聞き手の声で自分の言葉を耳で聞くことで、気付きを得られます。

コミュニケーション方法が分からないという若いメンバーに

 最後に、メールによるコミュニケーションに慣れている若手メンバーについて考えます。入社前からメールでのやりとりが日常化しているため、隣の席の人との雑談や日常会話が苦手という人も多いようです。

 そのような若手メンバーには、こちらから話し掛けてモデルを示し、慣れていってもらいましょう。話す内容そのものは、他愛ないもので構わないと思います。「難しいことをいう必要はないんだな」と、若手メンバーに気付いてもらえれば成功です。「相手の顔や表情を見て、話をする。そこで分かることが大事なんだ」と語ってみてください。

 チーム内では、

  • 決定事項など記録の意味合いのあるものはメールで

  • 意見を出し合う場合は打ち合わせで

と取り決めてしまうのも1つの手です。

 チームで仕事をすることの醍醐味(だいごみ)は、補い合い、助け合いながら一緒にやることにあると思います。そこに人がいれば、コミュニケーションが生まれます。失敗を恐れすぎないようにしましょう。人とともにいることは、面倒だけど成長できます。皆さんが、そんな“成長できる”チームを作るよう願っています。

参考文献

  • 星野欣生著『人間関係づくりトレーニング』金子書房、2003年

筆者プロフィール
profile  ピースマインド 石川賀奈美
 臨床心理士、産業カウンセラー。米国フォーカシング・インスティチュート認定フォーカシング・トレーナー。現在、ピースマインドで成人を対象に幅広い相談に応じるとともに、定期的に企業に赴き、社員のカウンセリングを行う。高齢者虐待防止に関連し、在宅介護者のカウンセリングにもかかわっている。著書に『SEのためのうつ回避マニュアル 壊れていくSE』(翔泳社刊、分担執筆)がある。「出口のないトンネルはない。しばし、一緒に光を目指して歩いていきましょう」

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