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プロカウンセラーに学ぶチームビルディング

プロカウンセラーに学ぶチームビルディング術

第12回 漫画の“やる気なしリーダー”に学ぶ、奉仕のリーダーシップ

ピースマインド・イープ
カウンセラー 石川賀奈美
2011/6/15

チームビルディングとカウンセリングには共通点がある。「人の話をきちんと聞く」「相手の立場になって考える」――口でいうのは簡単だが、実行するのは難しい。訓練を受けたプロカウンセラーからカウンセリングで使うコミュニケーションスキルを学び、メンバーとの信頼関係構築、チーム内のモチベーション維持、すみやかな情報伝達のために生かそう。

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混乱時に必要なのは“強い”リーダーなのか?

 今回は、漫画『NARUTO ―ナルト―』の登場人物を取り上げて、「そもそもリーダーシップ」とは何か」を解説します。紹介するのは、主人公ナルトの仲間の1人で、忍者の小隊長として任務を遂行する「シカマル」です。

※『NARUTO ―ナルト―』:岸本斉史氏による忍者を描いた人気漫画。『週刊少年ジャンプ』(集英社)誌にて1999年から連載中。

 なぜ『NARUTO』なのか、なぜシカマルなのか? おそらくこう感じる読者は多いでしょう。

 シカマルは優れたリーダーではありますが、チームをぐいぐい引っ張っていくタイプではありません。リーダーといえば「カリスマ的な1人のリーダーがチームを統率、牽引していく」というイメージがありますが、このようなスタイルには限界があると考えています。

 リーダー1人の力にチーム全体が頼ることは、リーダーの裁量がすべてを決めるというリスクがあります。そうではなく、メンバーそれぞれの知恵と能力を集め、チームならではのパワーを生みだしていく――混乱時には、このようなリーダーシップとチームビルディングが求められているのではないでしょうか。

やる気なさ全開のリーダー、シカマル

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 シカマルは、ぼんやり雲を眺めるのが好き、勝負に勝っていながら自ら昇格試験を棄権してしまうような、いわゆる“やる気の見えない”忍者です。「めんどくせえ」が口癖で、スタミナや忍術が特に秀でているわけでもありません。しかし、実は卓越した頭脳を持つ戦略家です。

 上司であり、師匠でもあるアスマは、やる気を見せないシカマルの態度を「冷静な判断力によるもの」「己の能力と技の技術を知り尽くしているからこそ(中略)最悪の窮地と見れば冷静に引き返すこともできる」と小隊長としてのシカマルを評価しています(『NARUTO―ナルト―』 巻ノ十三)。

 そんなシカマルが、小隊長としての初任務に臨みます。急な命令だったため、メンバーは寄せ集め。そんな状況でも、瞬時にメンバーの得意分野を考慮し、チームとして最適なフォーメーションを組み立てて出発します。さらに、この任務の意義は「自分たちの里(組織)の仲間を助けること」であるとメンバー全員に伝え、メンバーのベクトルを1つにします。

 任務は、メンバー全員の命が危険にさらされるほど過酷なものでした。この中で、シカマルは「仲間を信じる」という揺るがぬスタイルを貫きます。厳しい戦いであったにもかかわらず、仲間うちで「弱い」と評価されていたメンバーの力を信じ、ある敵との戦いを任せます。

リーダーとしての“スタイル”を持つ3つの強み

 2007年度、2008年度のラグビー大学選手権で2連覇を成し遂げた、早稲田大学ラグビー蹴球部前監督の中竹竜二氏は、「リーダーにはスキル習得よりスタイル確立が大事」と説いています(『リーダーシップからフォロワーシップへ』より)。

 スキルは“点”ですが、スタイルは“線”です。シンプルに言えばブレないこと、一貫性や「その人らしさ」こそが、リーダーに必要な条件なのです。

 中竹氏によれば、スタイルを持つ強みは3つあります。

(1)スタイルは、逆境でこそ力を発揮する

 逆境や苦しい場面において、人が取る行動パターンはある程度、決まっている。逆境でこそその人の真価が問われる。日々のスタイルは逆境の時にこそ強く現れる。

(2)スタイルを持つと、チャレンジができる

 スタイルを確立すると、困った時に「自分のスタイルはこうだった」と“立ち戻る場所”ができる。立ち戻る場所があるという安心感があるからこそ、そのスタイルを軸に新しいチャレンジができる。

(3)スタイルの共有ができる

 確立したスタイルが組織内で浸透すれば、組織内で“あうん”の呼吸で通じるコミュニケーションが成立する。結果として、パフォーマンスを向上でき、強い組織になる。

 「スタイルに善し悪しはなく、とにかく強烈に持つことが大切」と、中竹氏は説いています。

混乱期で実力を発揮する“サーバント・リーダーシップ”

 シカマルに学ぶもう1つの視点が「サーバント・リーダーシップ」です。

 シカマルは状況把握の確かさが強みですが、決して1つ1つの行動をメンバーに指示するわけではありません。状況を踏まえながら、多様な個性を持つメンバーを支持して任せます。

 しかし、結果として初任務は失敗に終わります。成果を得られず、自分の力不足で仲間の命を危うくしたことについて、シカマルは自責します。しかし、父親から「本当に仲間を大切に思うなら、“仲間のために”自分がより強くなることを考えろ」(“ ”は筆者付記)という叱責の言葉を受け、立ち直ります。

  • メンバーに進む方向を示し、進んでいくメンバーを支持してフォローする

  • メンバーの前を行くのではなく、後ろからフォローする

  • 誰よりもメンバーのことを信頼し、思う気持ちを「チームの原動力にする」

 これは1つのリーダーシップです。こうしたリーダーシップを「サーバント・リーダーシップ」と呼びます。

ぐいぐい引っ張るのではなく、奉仕するリーダー  

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