@ITで学ぶITアーキテクトの基本

谷古宇浩司(アットマーク・アイティ 編集局)
2004/12/16


UMLの基礎的な理解、モデリングノウハウを獲得するにはどうしたらいいだろうか。その回答の1つは、@ITの記事を読むことにある。では、どんな記事を読めばいいのか。そこで@IT IT Archtectフォーラムを担当している編集者に、フォーラムの中から有効な記事を厳選してもらい、その読み方を伝授してもらおう。


ソフトウェア開発をめぐる最近の状況

 これまで、ソフトウェア開発の上流工程の話題に登場する企業は、ツールベンダならIBM(ラショナル)やボーランドであり、ケント・ベック(Kent Beck)氏やマーチン・ファウラー(Martin Fowler)氏のような独立系コンサルタントだった。しかし最近、この市場にマイクロソフトの顔が見え始めてきた。

 2004年10月26日(米国時間)、マイクロソフトが発表したVisual Studio 2005 Team System用の新しいビジュアル・モデリングツール(コードネーム:Whitehorse)は、ソフトウェア開発のトレンドを占ううえで無視できないインパクトを持つ。

 というのも、マイクロソフトはWhitehorseのリリースに先立ち、「ソフトウェア ファクトリー(Software Factories)」という同社独自のソフトウェア開発の進化に向けた壮大なビジョンを発表したのだが、このビジョンにおいてマイクロソフトは、職人の手でコツコツと行われてきたソフトウェア開発の工程そのものを根本的に見直し、工業化への道を拓くことを宣言した。同社では「ソフトウェア ファクトリーの手法により、各業種内に共通する機械的な単純作業の多くは自動化され、より創造的なソフトウェア開発が可能となる」と予測をしている。

参考URL
Microsoft .NET Architecture Center(Software Factories)

 ソフトウェアファクトリーが体系付けるこのような考えは、必ずしも新しくはない。むしろ、われわれがこれまで散々聞かされてきたソフトウェアエンジニアリングの1つのアプローチにすぎないのかもしれない。また、マイクロソフトの取り組みが業界全体から全面的に認められているとも限らない。米マイクロソフトの研究部門責任者リック・ラシド(Rick Rashid)氏は、OOPSLA ’04で[The Future of Programming]というタイトルの基調講演を行ったのだが、一部の参加者からはその“商業主義的な内容”を強烈に批判されたという。しかし、ソフトウェア業界の巨人であるマイクロソフトがビジョンを示し、概念を体系化し、製品開発戦略にまで落とし込んでいるという事実は無視できない。

 現在、マイクロソフトが世界規模で粛々(しゅくしゅく)と行っている活動の1つに、エンジニアに対するモデリングスキルの普及、教育活動というのがある。大々的に発表されている活動ではないのでまだ日陰の活動ともいえるのだが、これがマーケット創造のための種まきという位置付けにあることは明らかであり、マイクロソフトはすでに、ソフトウェアファクトリーが実現するであろうソフトウェア開発プロセスの実現に向けて現実的な手を打ってきているのである。その結果、将来的には、特定業種向けに特化したアプリケーションをツールによって半ば自動的に開発できる夢のような時代が来るかもしれない。だが、そんな時代が来る前にわれわれがやらなくてはならないことは山のようにある。

来るべきソフトウェア開発現場の未来に向けて

 @ITのIT Architectフォーラムでは、“来るべきソフトウェア開発現場の未来”に向けて必要になると考えられる知識をさまざまな角度から精査し、公開している。マイクロソフトに限らず、ボーランド、IBMといった開発ツールを提供する企業では、最新のツールを使いこなすための基礎知識としてUML(Unified Modeling Language)の基本的な記述方法やモデリングという作業のノウハウをエンジニアに対し、いろいろな場面を通じて提供している。もちろん、開発のプロセス全体を俯瞰(ふかん)する広い視点での考察と経験があればいうことはないが、導入としては十分だろう。IT Architecフォーラムが公開するUMLの基礎的な記事としては、以下の2つの記事がお勧めである。

@ITでの参考ページ:UMLの基礎中の基礎を解説
5分で絶対に分かるUML (IT Architect)

@ITでの参考ページ:オブジェクト指向を学ぶための基礎講座
ここから始めるオブジェクト指向 (IT Architect)

 UMLの基礎的な知識とオブジェクト指向の基礎は密接にリンクしている。それらの関係を把握したら、UMLを駆使してモデリング作法の基礎訓練をする機会がほしい。「【改訂版】初歩のUML」は、UMLを活用したモデリングの初歩を丁寧に解説した連載記事である。UMLという記法の解説ではなく、モデリングの本質的な意義や効果を通して、モデリングという作業の必要性を詳細に解き明かす記事となっている。UMLとモデリングの基礎的なノウハウを頭に入れた後には、一歩進んだモデリング技術の応用テクニックを身に付けたい。応用テクニックと一口にいってもその範囲は広い。連載「UML BASIC LECTURE」は筆者が自らの実務経験を通じて導き出したUMLモデリングの勘所を伝授する記事である。

@ITでの参考ページ:UMLを活用したモデリングの初歩
【改訂版】初歩のUML (IT Architect)

@ITでの参考ページ:モデリング技術を磨きたいエンジニアに
UML BASIC LECTURE (IT Architect)

 UMLの記法、モデリングの実践ノウハウといった実務的な情報とともに、アーキテクトという職業にまつわるさまざまな知識を頭の片隅に入れておくことは決して無駄な作業ではない。例えば、「実行可能な知識とソフトウェア」という連載は、ソフトウェア開発の本質を真摯(しんし)に見つめ、現在のソフトウェア開発の現場で問題視される多種多様な課題を分析している。技術ノウハウを獲得することが対症療法とするなら、「実行可能な知識とソフトウェア」のようなエッセイは、病気にならないために毎日行う体操みたいなものかもしれない。即効性はないが、長い目で見れば必ず役に立つものである。そういう意味で、米国の著名なアーキテクト マーチン・ファウラー氏を囲んだ座談会レポートからも示唆に富んだコメントを得られるだろう。

@ITでの参考ページ:アーキテクトに関連するさまざま知識を分かりやすく解説
実行可能な知識とソフトウェア (IT Architect)

@ITでの参考ページ:マーチン・ファウラー特別ラウンドテーブル 現場レポート
パターンを学べばどんな技術にも対応できる (IT Architect)
アナリシスパターンは難しすぎる? (IT Architect)

 以上、紹介した7つの記事(連載)は、数多くあるIT Architectフォーラムの中から抜粋したものである。UMLの基礎的な理解からモデリングノウハウの獲得に有効な記事ばかりである。これらの“基礎編”をクリアし、さらに応用的な記事へと進んでいってほしい。

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