今年開始予定の大型資格
ITコーディネータは使える資格か?

加山恵美
2001/7/6

1. 日本の経済再生を支える人材育成

ITコーディネータが生まれた背景

 ITコーディネータとは、1999年6月、通商産業省(現経済産業省)産業構造審議会情報産業部会 情報化人材対策小委員会の中間報告で提言された「戦略的情報化投資による経済再生を支える人材育成」に端を発する。この報告書には、経済再生を目的としたIT系の人材育成を推進させようという提言があったのだ。

 報告書では、日米の情報化投資と経済状況の比較において興味深い事実を指摘していた。それは、日本の情報化技術への投資額は米国に次いで世界第2位の位置を占めているにもかかわらず、投資が経済の状況に反映されていないというのである。米国はIT投資額とともにダウ平均株価も上昇を続け、1990年代後半にさらにその勢いは加速していた。それに比べて日本は、IT投資額は2000年問題対策もあって上昇気味だったが、先の見えない不況から抜け出せず、日経平均株価は下がる一方だった。

 もちろん、日経平均株価とダウ平均株価を経済状況の指標とすることは、必ずしも正しいとはいえないし、株価の下降や日本の不況と情報化投資が直結しているとは限らないので、この比較結果ですべてを証明できるわけではない。ただ、日本の情報化投資は空回りしてしまった部分があることを示唆する1つのデータといえるのではないだろうか。

 それでは、米国の成功と日本の空回りの違いは何に起因するのであろうか。米国では1980年代〜1990年代にインターネットやデータベースなどの新しいIT技術を経営にうまく結び付け、徹底的に活用することによって大きな成果を上げることができた。加えて政府の理解もあり、官民一体となったIT推進運動が功を奏したともいえる。

 一方の日本でも、業務革新の名の下に新技術導入は多くの企業や組織で行われた。しかし、実際には従来の組織とビジネスモデルを前提とした業務効率化のための投資が多く、新しいビジネススタイルを前提とした“IT化時代”のための投資が少なかったことなどから、無駄な投資となる例が多かったようだ。

 この原因としては、次のような問題があったからだと考えられる。

  • IT化は社内のシステム部門任せで経営的な観点からの検討が不足
  • 従来の構造や経営などに縛られて柔軟性が欠如
  • ITを支える人材の流動性の不足
  • 情報化への投資をビジネスモデルの革新や新たな利益構造を創出するために活用するといったような社会的なインフラの不足

 特にこれらの問題は、日本の産業構造の中核をなす中小・中堅企業で表面化している。中小・中堅企業における情報化対策の遅れは、経営者のITの知識不足や認識不足だけでなく、その経営者をITの視点から支援できる人材の不足が大きな影を落としている。つまり、IT技術(しか知らない)専門家ではなく、経営的な観点も持ち合わせて戦略的にIT化を押し進められる人材が不足しているのである。

 そこで生まれたのが、経営者のIT化を支援するための「戦略的情報化投資活性化プロジェクト:ITSSP」と、経営的観点から戦略的情報化を推進する人材を育成するための「ITコーディネータ制度」である。これらは経済産業省、情報処理振興事業協会、経営情報化推進協議会を母体とした公的プロジェクトである。このITSSPとITコーディネータ制度については、1999年から以下の段階を追って活動を行っている。なお、ITSSPは3年間の時限プロジェクトである(活動期間は1999年〜2001年)。

第1段階:中堅・中小企業経営者への普及啓発(ミッショナリー活動)
 全国28カ所でセミナーを開催(合計約5000名の参加)。約500もの企業を個別訪問し、情報化投資の実態に関する調査およびコンサルテーションを実施。

第2段階:経営者への情報化戦略立案サポートツールの提供
 経営者同士が意見交換を行う交流会を実施し、ITの重要性について問題認識を深めた。ITSSPのWebサイトに「IT ソリューション・スクエア・プロジェクト」を開設し、経営者を対象とした情報提供や相談コーナーの運営を行う。

第3段階:ITコーディネータ制度
 ITと経営の両方に通じた情報化投資の企画・立案のプロとして、経営者を支援する良きパートナーとなる人材の育成と認定を進める。

 基本的に現在までほぼ第2段階まで終了し、今年は第3段階であるITコーディネータ制度の構築が本番となる。次に、このITコーディネータについて見てみよう。


 
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ITコーディネータとは?

Index
ITコーディネータは使える資格か?
1. 日本の経済再生を支える人材育成
  2. ITコーディネータとは?
  3. ITコーディネータの行く末は?
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