LPICに見るLinuxを学ぶ意味とは

LPICに見るLinuxを学ぶ意味とは

荒井亜子(@IT自分戦略研究所)
2007/12/12

今年9月27日にLPI-Japanから発表されたリリースによると、Linux技術者認定試験の受験者総数が全世界で延べ15万人に達し、そのうち約6割が日本国内の受験者であるという。Linuxエンジニアのニーズが世界的に拡大している中、なぜ日本で増加が著しいのか。特に、日本でLinuxエンジニアが必要とされる理由、ITエンジニアがLinuxをはじめオープンソース技術開発を学ぶ意義とは何か。LPICの認定をする組織LPI-Japanの理事長 成井弦氏に話を聞いた。

企業から需要が高い資格、LPIC

LPI-Japan 理事長 成井弦氏

 LPIC技術者認定試験(以下、LPIC)の受験者総数のうち、約6割が日本国内の受験者だという。その理由はどこにあるのだろうか。さらに、Linuxを学ぶ意義とは何だろうか。

 まず、日本のLPIC受験者数が世界の受験者数の約6割を占める理由についてLPI-Japan 理事長 成井弦氏に尋ねると、次のように答えた。「NEC、日立製作所、富士通がLPICのプラチナムスポンサーであることが非常に大きい」(成井氏)。これらの大手電機メーカー3社をはじめ、多くの企業が社員にLPICを取得するように促し、積極的にサポートをしていることが日本で受験者が多い理由だという。

 成井氏は、「組み込み分野でLinuxが多く用いられていることもLPIC人気の理由」と述べた。家電や携帯電話などのOSにはLinuxが使われていることが多く、組み込みエンジニアもLPICを受験することが多いようだ。

 さらに、ロボット工学における日本の優位性も日本で受験者が多い理由になるそうだ。2007年11月29日付の日本経済新聞朝刊14版第3面の記事によると、「産業分野で日本は世界一の『ロボット大国』。日本の産業用ロボット稼働台数は約37万台で北米やドイツを大きく上回る」とある。成井氏は「日本が世界で一番進んでいるといわれているロボット工学だが、多くのロボットのソフトウェアはLinuxをベースに開発されている。それ故にLPICを取るエンジニアも多い」という。

 では、数あるLinux関連の資格の中で、LPICが伸びている理由は何だろうか。その点について、成井氏は理由を3つ挙げた。「1点目は、LPICの中立性、つまり、試験問題が特定の会社に依存していないこと。2点目はLPI-JapanがNPO法人であること。3点目は、LPICの運営にNEC、日立製作所、富士通といった大手電機メーカーがかかわっていること」(成井氏)

企業からのニーズが高い問題を開発

 そもそも、LPICにはどんな問題が出題されるのだろうか。「LPICの試験はレベル1〜3がある。レベル3を受けるためにはレベル2、レベル2を受けるためにはレベル1が前提になる。レベル3は、Linux、UNIX、Windowsという3つのOSの統合環境を理解できることが求められる。レベル1、2は、ある意味上位資格のサブセット。レベル1ではエンドユーザーがLinuxサーバのインストールを行う技術を、レベル2ではネットワークの構築ファイルの管理や、Sambaと呼ばれる環境を理解することなどが求められる」(成井氏)。LPICレベル3は、さらに必須科目のCoreと選択科目のSpecialtyに分かれていて、Coreを取得後は、さらに選択科目を選んで受験し、Specialtyという専門的な資格を追加していく形態を取っている。詳しくは、LPI-JapanのWebページをご覧いただきたい。

 また、LPICの試験問題の特徴は、問題を作るときに企業からの意見を積極的に取り入れている点だ。資格はあくまで一定の知識レベルを認定したものであって、実務で役立たないといわれることを意識しているためだ。実務との相関関係を強く保つため、「どうも最近の試験は現場とずれている」という指摘があれば、LPI-Japanの中にある試験開発ワーキンググループで協議する。その後、LPI-Japanがスポンサー企業と問題についてディスカッションを交わす。そこで改変の余地があると判断されれば、試験開発に参画している世界中の人たちとディスカッションをし、試験の内容を改変していく。LPIは、企業が求める技術や受験者の動向に目を向け、試験問題の開発に生かす。成井氏に企業からのニーズが高い分野について尋ねると、「LPICの問題そのもの」という答えが返ってきた。

最近の受験者の弱点分野

 続いて、昨今の受験者がどのような分野を苦手としているのかを聞いた。「特定の分野ということはないが、多くの人は、コンピュータすなわちパソコンというイメージを持ち、その背後にあるサーバをあまり意識していないようだ。1960〜70年代のエンジニアといまのエンジニアを比べると、OSがどう動いているのかという理解が弱い。サーバを学ぶうえではOSの中身を知る必要がある」(成井氏)。また、組み込み系のソフトウェア開発を行っているエンジニアにおいては、「コンピュータのハードウェアの知識が弱い」(成井氏)という。

 こうした弱点を補強しLPICをレベル3まで取ればそれで一流のエンジニアと呼べるかというと、成井氏はそうではないと答える。成井氏によると「LPICは全体の50%でしかない」という。では、残りの50%は何だろうか。


今回のインデックス
 企業でLPICが人気の理由(1ページ)
 Linuxを学ぶ意義とは? (2ページ)

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