翔泳社『SEの現場2003』との共同企画
若手エンジニアへのお薦め書籍はこれだ
翔泳社『SEの現場2003』、アットマーク・アイティ
2003/5/3
IT業界では、毎年多くの新人エンジニアが誕生する。ここでは、そうした新人エンジニアや、これから新しい技術にチャレンジしようと考えているエンジニアに、さまざまな本を紹介しよう。なお、本特集は翔泳社『SEの現場2003』とアットマーク・アイティとの共同企画である。
若手SEに読んでほしい本ベスト10
|
ここでは、翔泳社が発行したSEのためのIT業界入門誌『SEの現場2003』と共同でIT業界の著名人、ライター、編集者にアンケートを行い、若手SEなどに読んでほしい本を10冊選んでもらい、それをポイント形式で集計した結果だ。なお、アンケートに協力いただいた方のベスト5とコメントも掲載している。
なお、このランキングは「若手SEへ勧める10冊」というテーマで、識者、編集者の皆さんにジャンルフリーで書籍を10冊選んでいただいた結果を基に、ポイント形式で集計して得られたもの。
アンケートを集計してみると、基本/基礎を学ぶもの、古典的名著、SEの心得を説いたものが上位にランクインした。まずは、基礎をみっちり身に付け、SEたるものとは何かを体得すべしということであろうか。なお、技術書が上位にこなかったのは、ジャンルが幅広いため、各人が選んだ本がかなりばらけたからだろう。まずは1位から5位までを見てみよう。
1位(74ポイント) | ||||
|
2位(62ポイント) | |
プログラムはなぜ動くのか――知っておきたいプログラミングの基礎知識 矢沢久雄著、日経ソフトウエア監修 日経BP社 2001年10月 ISBN4-8222-8101-9 2400円(税別) |
|
第2位に入ったのは、『プログラムはなぜ動くのか』。ベストセラーになっているので、ご覧になった方も多いと思う。この業界にいる人ならずとも一度は疑問に思うだろう「プログラムはなぜ動くのか?」に対して、丁寧に答えた書だ。今後いかに新しい技術が出てこようとも、プログラムの基礎の部分は変わらないだろう。本書はその基本を教えてくれる。 |
3位(48ポイント) | |
人月の神話――狼人間を撃つ銀の弾はない(Professional computing series
別巻3) フレデリック・P.ブルックス Jr.著、滝沢徹、牧野祐子、富沢昇訳 ピアソン・エデュケーション 2002年11月 ISBN4-89471-665-8 2900円(税別) |
|
第3位は、『人月の神話 [新装版]』。「人月」とは、「次のプロジェクトは30人月で」などで使う人月のことである。本書では、ブルックスの法則(遅延したプロジェクトへの要員追加は、さらなる遅れをもたらす)が有名だろう。本書からはほかにも、パンチの効いた格言がいくつも生まれている。初版は1975年。ソフトウェア工学の古典中の古典だ。しかし、それだけいまも昔も問題点は変わらないということかもしれない。ちなみに、著者は知る人ぞ知る往年の名機IBM360システムおよびOS/360の開発リーダーだ。 |
4位(46ポイント) | |
憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座――C++による実践的ソフトウェア構築入門 Tucker!著 翔泳社 1998年5月 ISBN4-88135-619-4 3200円(税別) |
|
第4位は、Tucker!氏の『憂鬱なプログラマのためのオブジェクト指向開発講座』(やたら長い名前なので、略して「憂オブ」と呼ばれている)。何かと分かりづらいと悪評高い「オブジェクト指向」だが、本書では現場のエンジニアに取材した具体的な例を基に、分析/設計/実装というソフトウェア開発の流れをトータルに把握することができ、さらにC++による実装まで学べるお得な1冊である。 |
5位(42ポイント) | |
誰のためのデザイン?――認知科学者のデザイン原論(新曜社認知科学選書) D.A.ノーマン著、野島久雄訳 新曜社 1990年1月 ISBN4-7885-0362-X 3300円(税別) |
|
第5位は、『誰のためのデザイン?』。認知心理学者であり、ユーザーインターフェイス研究の草分け的存在でもある著者が、デザイン原理について初めて書いた1冊だ。ユーザーとして使っていると「作り手の論理を押しつけるな!」と怒りたくなるデザインもあるだろう。翻って自分の作ったプログラムは大丈夫だろうか。「使いやすい」とはどういうことか、開発側の論理を押しつけていないか、あなたも再考してみないか。 |
■6位から10位まで
6位から10位までは、次の表の結果となった。
|
|||||||||||||||
6位から9位までの書籍。同票で9位に2冊並んだ |
第6位は『システム障害はなぜ起きたか』。みずほ銀行が昨年起こしたシステムトラブルは記憶に新しいところ。あのトラブルは起こるべくして起きた事故と思った人も多いだろう。規模の違いこそあれ「システム障害」に見舞われたことがない人はいないだろう。「みずほの教訓」を自分に生かすためにもぜひ読んでおきたい。
第7位は、効率だけを重視していては、新しいアイデアや変化に向けた対応ができないと説いた『ゆとりの法則』。デマルコならではのユーモアたっぷりに書かれている。同じ著者の『ピープルウエア』『デッドライン』もお勧め度が高い。
第8位は『SEの現場2003』。昨年刊行された『SEの現場』は、若手SEのスキルとキャリアに焦点を絞った1冊としてかなり注目された。本書はその2003年版となる。
続いて第9位は『基本から学ぶソフトウェアテスト』。テストの基本から実践的なテストのスキル、テストプロジェクトの管理まで、開発の現場に即したノウハウが満載。ただし、かなりボリュームがあるので心してかかるべし。
同点第9位に入ったのはMITの入門コース用テキストにもなっている『計算機プログラムの構造と解釈』。非常に難しい本だが、それ以上に計算機プログラムの楽しさも教えてくれる本である。
ちなみに、11位以降は『SEの持つべき「思想」』(11位)、『珠玉のプログラミング』(12位)、『達人プログラマー』(同12位)、『コンピュータシステムの基礎』(14位)、『ネットワークはなぜつながるのか』(15位)、『プログラミング作法』(同15位)、『ソフトウェア職人気質』(同15位)と強力なラインアップが続く。
ここで、少数派の面白かった意見を紹介しよう。馬場氏は第6位に、ちょっと変則ワザの「日本経済新聞」を挙げた。SEといえどもビジネスマン、経済の動きには目を配らなくてはならないということだろうか。そのほか、『プロフェッショナルの条件』(峯本氏第1位)、『人を動かす』(倉氏第3位)、『イノベーションのジレンマ』(矢沢氏第4位)などビジネス書も多い。また、比較的新しい本が多い中、『ソフトウェア考現学』(小山氏第1位)『基本算法』(dotNETマガジン第10位)などかなり初版の古いものもあった。
なお、アンケートデータは次ページ以降にすべて紹介してある。それぞれの方のベスト5、コメント(「気になる1冊」もしくは「SEが読むべき本について」)もある。熟読してさらに自分に合った1冊を見つけてほしい。
最後に、アンケートにご協力いただいた皆さまにはここであらためてお礼を申し上げたい。
書評にあるボタンをクリックすると、オンライン書店で、その書籍を注文することができます。詳しくはクリックして表示されるページをご覧ください。 |
1/2
|
アンケート協力者のコメントへ |
@IT自分戦略研究所は2014年2月、@ITのフォーラムになりました。
現在ご覧いただいている記事は、既掲載記事をアーカイブ化したものです。新着記事は、 新しくなったトップページよりご覧ください。
これからも、@IT自分戦略研究所をよろしくお願いいたします。