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就活学生のための注目イベントレポート

東京Basic Technology勉強会 vol.7@桐蔭横浜大学 レポート
学生は「言語の基礎」「質問力」「勉強力」を身に付けよ


岑康貴(@IT自分戦略研究所)
2009/7/16


ITエンジニアが、大学で情報系学生に「学生のうちに学ぶべきこと」を教える特別講義を実施。技術面から精神面まで、さまざまな名言が飛び出した講義の模様をレポートする。

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 ITエンジニアのkwappa氏が主催する「東京Basic Technology勉強会」(通称「とべとべ」)は、「プログラマとしての技術力を高めるため、基礎技術を重点的に勉強する」という趣旨で行われているIT勉強会だ。2009年7月10日、桐蔭横浜大学で第7回が開催された。

(注)IT勉強会については、連載「学生のためのIT勉強会入門」および「コミュニティ活動支援室」各記事を参照してください

 第7回は同大学 助教の山口大輔氏の協力の下、「特別講義」として実施された。同大学の情報系学生をはじめとした「IT業界を目指す学生」向けの講義で、内容は「研修担当者に聞く、学生のうちに学ぶべきこと」と「実践的IT勉強会参加術」の2部構成。kwappa氏が講師を務め、Ustream.tvで中継を行った。

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■ SIerの新人なのに「興味が持てません」?

 kwappa氏は初めに「学生向けの特別講義を行うに至った経緯」を説明。勉強会の開催場所を探していたところ、「大学を使ってはどうか」と持ち掛けられたことが1つだが、もう1つは「あるブログを読んで驚いた」ことがきっかけだと語った。

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 「SIerに勤めるエンジニアさんが新人研修で新人に教えているときのことが書かれていたんですが、新人が技術的なことに関して『一切分かりません』『興味が持てません』といったそうなんですよ。ちょっと衝撃的ですよね。これは新人も先輩も不幸ですよ。そういう不幸を減らすためのおせっかいをしに来ました。学生のうちに何を学んでおくべきか、研修担当者にアンケートを取りました」

 特別講義の開催に先立ち、kwappa氏はWeb上でアンケートを実施した。IT業界で「指導」を担当している人(新人研修の講師やOJTの指導者など)に対して、学生向けのメッセージや学生時代に学んでおいてほしいことを調査した。第1部はこの内容を元に講義を行った。

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■ 手続き型言語の「基礎」を学んでおくべし

 kwappa氏は最初に「新人研修の実態」について、アンケートを元に説明。何人かの新人研修の例を挙げ、次のような傾向を導き出した。

  • 新人研修の期間は1カ月から6カ月:ただし、ビジネスマナー研修などもこの期間内に行われる
  • よくあるパターンは「座学」「個人演習」「チーム演習」「OJT」の4つ:企業によっては座学がなかったり、演習がなかったりすることがある
  •  合わせてkwappa氏はアンケートから次のようなコメントを抜粋した。

     「新人研修において、プログラミング経験者は全体の半分くらい。未経験者との差は顕著だが、徐々に狭まっていく。ただし、研修中に経験者に追い付く(または追い越す)ということはない」

     以上のことからkwappa氏は「企業は研修をしてくれるが、時間は十分ではない。技術的な経験は必須ではないが、やっておくに越したことはない」と説明。「個人的なおすすめ」として次のように語った。

     「学生のうちに、何か1つでいいのでプログラミング言語の基礎をつかもう。基礎とは具体的には制御構造や配列など、言語特有の話に行く以前のこと。言語に関しては、Cなどの手続き型言語がいいと思う」

     この「おすすめ」の背景として、実際の開発現場で要求されるスキルを大学の授業や企業の研修ですべてカバーするのは困難だが、手続き型言語の基礎ができていれば何とかなる、とkwappa氏は自身の経験を踏まえて説明し、「OOP(オブジェクト指向プログラミング)? その前にやることはたくさんある」と語った。

     また、学生の特権として「失敗できること」をkwappa氏は提示した。「プログラミングに関して、学生のうちにたくさん失敗しておくといいでしょう」とも語った。

    ● まとめ1:技術について

  • 研修「だけ」に頼らず、自分自身で理解しよう
  • 基礎として何か1つプログラミング言語を習得しておこう
  • 言語に依存しない基本的な考え方に慣れよう
  • ■ 分からないことはどんどん聞く? それとも自分で調べる?

     続いてkwappa氏は技術以外で学生のうちに学んでおくべきことをアンケートから抽出し、その中でも多かった「質問力」と「勉強力」について説明した。

     「質問力」については、「迷っていないでどんどん質問してほしい」「1人で黙々とできることは限界がある。品質も悪くなるし、評価もされない」という意見と、「質問するのはいいが、自分でも調べてほしい」「自分なりに調べて分からないことを聞くようにした方が、問題解決能力が身に付くし、問題解決の近道」という正反対の意見を合わせて紹介した。後者に関しては「専門用語で『ググれカス』ですね」と笑いを誘った。

     「正反対の声が同じくらいあがっている。つまり、先輩も迷っているんです。『なんでもっと早く聞きに来ないんだ』という人は『迷った時間が相手のためになるだろうか』と考えています。逆に『自分で調べたのか?』という人は『教えることが相手のためになるだろうか』と考えています」

     こうした「先輩の迷い」を踏まえた上で、kwappa氏は「分からないことは勇気を持って聞く。1人で悩んでいても解決しないことだってあるし、コミュニケーションという意味でもどんどん聞いた方がいい」と主張。ただし注意として「まずは自分で調べること。例えば15分だけ自分で調べて分からなかったら聞くとか、自分なりに基準を作るといいでしょう」とアドバイスした。

     また、kwappa氏は「聞いたら聞きっぱなしにするのではなく、フィードバックしよう」と付け加えた。

     「自分にとっても相手にとっても身になるような質問をしてほしい。まずは『ここまで調べてこういうことをやったんですけど、ここから分かりません』というように経緯を提示してください。そして、確実に理解してから先に進んでください。問題の本質を理解してから先に進むのが重要です。最後に、質問のタイミングが適切だったかを確認してください。これは質問した先輩に直接、聞いていいと思いますよ」

     これらのアドバイスを通じて、kwappa氏は「適切な質問力を身に付けてください」とまとめた。

    ● まとめ2:質問力について

  • 分からないことがあったら勇気を持って聞こう
  • ただし、まずは自分で調べよう
  • フィードバックをしよう
  • ■ 社会人の勉強は「質」が違う

     さらに、kwappa氏は「勉強力を身に付けよう」と主張。「出欠や課題、試験はバラ色のキャンパスライフの敵ですが、社会に出ると全部なくなります。だから、社会人になったら勉強する姿勢を持たないと、あっという間に落ちこぼれてしまいます」と、勉強することの重要性を強調した。

     勉強力について、kwappa氏はアンケートから次の言葉を引用した。

     理解があいまいなうちに先に進むことは、絶対にNGです。

     技術の世界は他人に説明できるように理解しておかないと、どこかで破たんをきたします。学んだことの上に新しいことを学ぶからです。基礎的な知識をちゃんと体系立てて構築しておかないと、後々苦労します。

     分からないのは当たり前だし恥ずかしいことではないのですが、分からないままにしておくのは絶対ダメです。

     さらに、kwappa氏はほかのアンケート回答者の「失敗したらその理由を理解した上で次は成功させてほしい。最初から成功した場合は、なぜ成功したか分からないということがないように」という言葉を引用し、「仕事やプログラミングには、失敗にも成功にも理由がある。それを理解して先に進んでほしい」と語った。

     また、「情報のチャンネルは1つではない」とkwappa氏はいう。「技術的な知識を得るためには、先輩に邪険にされてもどうにか聞き出したり、キーワードを工夫し、検索するなどして、ある程度のところまで調べきることが大事」というアンケートのコメントを引用し、「先の質問力ともつながるが、特にITエンジニアは常駐や派遣という形態で働くことがあるので、さまざまな手を駆使して調べるのはすごく重要なスキルです」と語った。

     最後に、kwappa氏は「会社が興味を持っているのは『成果』のみ。『成果』を出すためには『実力』が必要です。『実力』を高めるには『勉強』が必要なんです」とまとめた。

     「小中学生のころは勉強をしなくてもオール5だったという人も、大抵は社会に出ると能力が『売り切れ』ちゃうんです。そうすると、あとはもう勉強するしかない。社会人の勉強は自分の能力を高めて成果を出すためのもので、テストで満点を取ることが目的ではありません。勉強の質が変わるということを意識してくれるといいと思います」

    ● まとめ3:勉強力について

  • 社会には出欠、課題、試験はないので、自分で勉強する姿勢を持とう
  • 分からないままにせず、必ずきちんと理解してから先に進もう
  • 社会人にとっての勉強は、会社が求める「成果」を出すためのものだと意識しよう
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