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PR:中国のオーナーシップを日本の価値に――新生SJIの事業戦略

情報サービスのSJIは、2009年11月にデジタル・チャイナと資本・業務の両分野で提携することを発表した。中国市場に活路を見出すSJIの事業戦略を追う。

 景気低迷や少子化問題で国内市場が沈下する中、中国市場に活路を見出す、ある企業が注目されている。日本と中国において情報サービス(主にシステム開発)の提供を行う「株式会社SJI」だ。SJIは、元は「株式会社サン・ジャパン」として、早期から中国でのオフショア開発を手掛けるユニークな老舗IT企業だった。2003年のJASDAQ上場後、純粋持株会社への移行を経て、今年7月、国内の主要事業会社を合併し、SJIとして新たなスタートを切った。11月には、中国最大手のITサービス企業である「デジタル・チャイナ・ホールディングス」(神州数碼控股)と資本・業務提携について合意し、本格的な中国市場開拓を計画している。本稿では、SJIの強みと事業戦略について掘り下げていく。

中国でのオフショア開発暦20年。
日中をまたに掛けたSJIの事業内容

 SJIは、グループ全体で日本に約1000人、中国に約1500人の技術者を有し、連結売上高は約257億円(2008年度)、中国各所に事業子会社を抱え、日中で事業を展開している。同グループの事業内容は、日本および中国顧客を対象にしたシステム開発事業がメイン。中国でのオフショア開発実績は約20年に及ぶ。また、システム開発に付随してパッケージソフトやハードウェアの販売も行っている。

 中国顧客向けのSIビジネスは、中国国内向けシステム開発を手がける「科大恒星電子商務技術有限公司」(略称EBT)とハードウェアの販売を含めたSI事業を展開する「北京宝利信通科有限公司」(略称 LDBL)の他に、2008年2月には、M&Aで中国の石油化学エンジニアリング企業を子会社化し、中国の石油関連会社に向けてもシステムの導入やハードウェアの販売を行う。最近では、中国最大手のITサービス企業であるデジタル・チャイナ・ホールディングスと資本・業務提携をし、中国市場開拓に邁進している。

 日本の企業であるSJIが、なぜ中国でこれほどの実績を積めるのか。その答えは、中国との関係の強さ、つまり経営体制にある。

SJグループのヘッドクォーター・SJIのルーツと特徴

 SJIは、SJグループのヘッドクォーターである。持株会社としてSJグループの管理運営を行うと共に、事業会社としてITコンサルティング、ソフトウェア開発、オフショアを中心としたアウトソーシング等を行っている。

 SJIのルーツは1985年に遡る。SJIの現 代表取締役社長の李堅氏と現 代表取締役副社長の琴井啓文氏は、当時、中国の国費留学生として日本の大学(東京大学、京都大学)にコンピュータサイエンスを学びに来ていた。彼らは1989年に設立されたシステム設計・開発を行う「株式会社サン・ジャパン」に初期メンバーとして参加し、現在のSJIの原型を作った。つまりSJIのルーツは、中国の国費留学生によるベンチャー企業であり、中国に太いパイプを持つ、ユニークな成り立ちなのだ。

 SJIの役員構成にも注目したい。創業者の李氏、琴井氏のほかには、元 株式会社NTTデータ 取締役の平田昇氏が代表取締役会長、元 株式会社電通国際情報サービス 常務取締役 木村裕氏が取締役、現 NTTコムウェア株式会社 部長 矢吹義明氏が社外取締役を務めている。日本のIT業界のトップクラスの人材が脇を固め、経営をハンドリングしているのだ。こうした経営体制を強みに、日本と中国の両市場をまたに掛け、シームレスに事業を展開している。そのため、商習慣の違いや言葉の壁といった、オフショア開発で一般的に挙げられる問題点を一通りクリアできるのだ。

中国現地法人EBT及びLDBLの業績が好調。
低迷気味の日本市場に対しては国内3社合併で営業力強化

 中国でオフショア開発を行う日本のIT企業の多くが、中国を低コストの生産拠点とみなす中、SJグループは早くから中国を巨大な市場ととらえ、中国でSI事業を展開してきた。これらを主導してきたのが1990年に設立した中国現地法人「聯迪恒星(南京)信息系統有限公司」(略称LDNS)と、2000年設立の中国現地法人「科大恒星電子商務技術有限公司」(略称EBT)である。両社は日本向けオフショアで先行し、要求の厳しい日本市場向けで磨かれた技術・ノウハウが中国国内の顧客に対しても大きな武器となり、受注を増やしている。

 現在の日本経済は不況のまっただ中にある。IDCの発表によると、日本国内のIT市場は2009年に大幅に縮小し、2010年は極めて低い成長率に留まるとある(参考)。一方、中国をはじめとしたBRICs諸国における2010年のIT市場は、8〜13%の成長が見込まれるという(参考)。中国政府は景気の下支えを目的とした内需拡大政策を実施し、2010年までに約60兆円という多額の財政支出を行っている。政府主導の社会インフラ整備で、IT投資の増加は十分期待できる。中国市場には追い風が吹いている。

 日本のIT投資が軒並みへこむ中で、EBT及びLDBLは、中国政府が主導する電力や通信といったインフラ系のシステムを開発しており、現在の業績は非常に好調だという。

 このようにSJグループは、日本市場と中国市場という、いわば「2つの財布」を持つ。今回の世界的な不況による日本市場の冷え込みはSJIにとっても大きな痛手であるが、中国IT市場の堅調さが経営の安定性に貢献している。

 日本市場の対応策としては、トップセールスの実施と戦略的組織変更による営業力強化と、重複機能の削減によるコストカットの目的で、2009年4〜7月に日本法人(SJホールディングス、SJアルピーヌ、サン・ジャパン)の3社合併を実施した。この合併で生まれたのが「株式会社SJI」である。純粋持株会社から事業持株会社への移行という珍しいケースだが、経済情勢を迅速に分析して導いたこのドラスティックな改革は、SJIの外部環境への適応力の高さを表している。変化の時代においては必ずしも「強いものが生き残るのではない、適応できるものが生き残る」。そのような認識に基づき、迅速に判断行動ができることこそSJIの最大の強みだろう。

デジタル・チャイナとの包括的な業務資本提携で、
中国トップのITサービス企業を目指す

 成長著しい中国市場へさらなる進出を図るため、SJIは2009年11月、デジタル・チャイナ・グループとの包括的提携を行った。SJIがデジタル・チャイナ・グループから60億円の出資を受け、新規に株式及び新株予約権を発行することで、デジタル・チャイナ・グループはSJIの株式約40%を保有する大株主となる。ただし、SJIはデジタル・チャイナ・グループのいいなりになるわけではなく、あくまで共に協力して日中の市場を開拓するイコールパートナーの位置付けであるという。SJIの李社長は、「SJIは日本と中国の架け橋になる」と意気込みを語っている。

 デジタル・チャイナ・ホールディングスは、聯想ホールディングスの主要企業の1つで、中国最大手のITサービス企業であると同時に、世界的に有力なIT製品の中国における販売権を多数保有する中国最大手のIT製品販売企業である。兄弟会社には、IBMからノートパソコン事業を引き受けたレノボ(聯想集団)がある。従業員は約8400人、顧客は政府・主要産業から個人まで中国全土に広がる。直近の売上高は日本円にして約4600億円、2008年度の年間売上高成長率は前年比25%増と、中国のGDP成長率やIT市場成長率をはるかに上回る成長を遂げている優良企業だ。

 SJIはこの提携で、中国での事業拡大、資本力の増強、技術者の稼働率上昇が見込める。また、こうした実質的利益だけでなく、デジタル・チャイナという企業のブランド価値もパートナーや顧客から見たSJIの価値を押し上げることになる。「デジタル・チャイナ・ホールディングスと提携しているSJI」という認識をされることで、中国進出を図る企業からは仲介役として案件を受注できることもあるだろう。SJIはこの提携を戦略的な意味でも価値を成すと考えている。

 一方で、デジタル・チャイナ・ホールディングスの狙いは、日本の優良なITソリューションノウハウやパッケージを得ることである。SJIは、CMM4レベルの管理体制に裏打ちされた開発プロセスを共有するバイリンガルの技術者集団を安定的に確保している。

成長しオーナーシップを担う中国企業との関係強化により、
新たなる飛躍へ

 いま、中国のIT市場は、かつて日本のIT市場がそうであったように、ハードウェアの時代からソフトウェアの時代へと移行がはじまりつつある。これまでは、ハードウェアを納品すれば満足していた顧客が、ハードウェアをどのように使い、どのような仕組みによって経営的課題を解決していくかという意識に変化してきているのだ。

 また、日本企業の生産拠点だった中国は、生産者として儲けた資金で消費者になり、今回の世界的な不況によって成長力を失った先進国を尻目に、諸外国への投資を行うオーナーへ変化する兆しを見せている。中国が成長市場であることは間違いなく、今後も世界経済における存在感は増し続ける可能性が高い。中国企業を大株主に迎え、共に日中の市場を開拓しようとするSJIおよびSJグループの事業展開は、時代の先を行く新しい試みの事例として、非常に興味深いものであり、今後の動向には要注目であろう。

提供:株式会社SJI
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2010年2月5日


株式会社SJI


会社概要
■会社名
株式会社SJI(SJI Inc.)

■本社所在地
東京都品川区東品川四丁目12番8号(品川シーサイド イーストタワー)

■代表取締役社長
李堅

■設立
1989年7月14日(商号変更 2009年7月1日)

■資本金
1,028,601千円(2009年3月31日現在)

■従業員数
2383人(男性:1892人、女性491人)
(2009年7月1日現在)

■事業内容
SJグループ・情報サービス事業及び石油化学エンジニアリングサービス事業の管理運営、情報サービス事業