Movable TypeやTypePadを提供し、ブログ技術の根幹を主導しているシックス・アパート。ブログブームの背景からブログの将来像、さらにWeb2.0の本質まで、ブログのすべてを知り尽くしている。代表取締役 関信浩氏、開発トップの平田大治氏らが、ブログの未来とシックス・アパートの果たす役割を語る。Webテクノロジーの未来を開拓するシックス・アパートで、次世代のブログシステムを開発してみないか。 |
■ブログ技術を根幹から支える会社
毎日の何気ないつぶやきから時局問題を扱った論評まで、いまあらゆる情報がブログに掲載されている。ここ数年でブログは日本に広がり、定着した。ブログを読まない日はないという人も珍しくないだろう。そのブログを技術で支えているのがシックス・アパートだ。
シックス・アパートはブログの代表的ツールMovable TypeとブログサービスTypePadの開発および提供をしている。TypePadはニフティの「ココログ」やNTTコミュニケーションズの「ブログ人」をはじめ、数多くのプロバイダや企業で利用されている。ブロガーと呼ばれるブログ作者の多くが、日々TypePadを通じてブログ投稿やデザイン変更を行っているといっていい。
同社は米シックス・アパートの日本法人として2003年に創業した。米シックス・アパートは2002年にベン・トロット氏とミナ・トロット氏が設立した会社で、ブログに関するシンプルかつ強力なソフトウェアとサービスを提供している。ブログによる情報発信の根幹技術を支えているといってもいいだろう。なお、社名の「シックス・アパート」とは創業者であるトロット夫妻の誕生日が6日離れていることに由来している。
■急速にブログ人口が伸びている日本
米国では1990年代からブログは存在しており、2000年を過ぎたころから普及し始めた。特に2001年の同時多発テロの発生直後、ブログを介した情報交換が急速に進んだことは象徴的な出来事となった。だが日本におけるブログの歴史はまだそう長くない。日本初の本格的なブログサービスであり、ブログブームの火付け役になったニフティの「ココログ」がサービスを開始したのが2003年12月2日である。この日は日本のシックス・アパートが設立された日でもある。いまからたった2年前のことだ。
ところがその直後から日本でブログが爆発的に普及し始めた。ココログがサービスを開始した2003年12月の利用者は18.5万人だったが、翌月2004年1月には59.4万人と3倍以上の伸びを見せた。それ以降、主要なインターネットプロバイダが次々とブログサービスを展開し、多種多様なブログが大量に登場した。
2005年春には、総務省がブログとSNSの利用者数を発表したことが新聞やニュースで大きく取り上げられ、ブログの認知が進んだ。発表では2005年3月のブログ利用者数は335万人、うちアクティブ(月に1度は更新)が95万人、閲覧者は1651万人とあった。同年9月にはブログ利用者数は473万人となり、半年間で約1.5倍に膨れあがったことになる。ブログの書籍化やドラマ化といった事例もあり、ブログ人口はまだまだ伸びる勢いを見せている。
■日本におけるブログ利用方法の変化
日米双方のブログの普及を間近で見届けているシックス・アパート 代表取締役 関信浩氏もこう話す。「米国のブログ利用者に比べれば、日本の利用者はまだまだ少ないといえます。しかし、伸び率は驚くほどです」
シックス・アパート 代表取締役 関信浩氏 |
日米で比較するとブログの利用方法には差があるという。「日本では身近なことをつづって親しい人とのコミュニケーションを目的とするもの、米国ではジャーナリスティックで広く公に意見を発信するものが多い傾向にありました」
ただしそれも「当初は」だそうだ。ブログが広く普及するにつれ、日本でも時評的なもの、米国でも日記風のものが目立つようになってきたという。
新しいものに最初に飛びつく層は国民性を反映するのかもしれない。日本には公に意見を発して討論するような習慣があまりない。それより日々の出来事や感じたことを身内に伝えて感想を述べあうことに、楽しさや心地よさを感じる人が多いのかもしれない。
だが実際、最近は日本でも論評的なものをよく目にするようになってきた。2005年の総選挙前には多くのブログで政治が語られた。特に選挙期間中のインターネットでの政治活動については多くの議論が巻き起こり、ブログの盛り上がりが公職選挙法を変えるきっかけになりそうな勢いもある。ブログは掲示板よりも大きな影響力を持つメディアへと発展する可能性すらある。
■ブログはどう発展していくか
「ココログでサービスを開始して2年が過ぎました。ブログの普及状況や導入実績から、ブログの良さ・悪さ、どういう使われ方をするのかなどが見えてきました」と関氏は話す。
今後ブログはどのような方向で進化を遂げていくのか。関氏によると、まず1つの視点として内輪での利用を想定したプライバシー機能の強化があるという。いまブログに記事を作成すると、インターネット上に公開されてしまう。限られたメンバーだけに日記や写真を公開するとなると、ブログの公開自体を限定するか、SNSで公開するということになってしまう。だがシックス・アパートの次期製品では、より使い勝手のよいアクセス制限機能が搭載される予定だという。
情報のさらなる活用という視点もある。例えば新しく買ったデジタルカメラの使い勝手をブログに記録したいとする。当然カメラ本体の写真も掲載したくなるだろう。だが新しいカメラを別のカメラで撮影し、画像を取り込んで……となると手間がかかる。それよりそのデジタルカメラの製品仕様があるオフィシャルサイトなどをうまく活用できないか。単なる投稿時の操作性にとどまらず、あらゆる情報を有機的に活用できるような多様な可能性が考えられているという。
企業での活用も念頭に置かれている。現時点で企業での利用というと、Webサイト更新の手間を簡略化するパブリッシュ(出版)を目的としたもの、社内の情報共有を円滑にするコラボレーションを目的としたものの2通りがある。後者は普段交流のない部署との接点につながるなど、ブログならではの利便性を生かし企業内の風通しをよくすることに貢献しているという。
「掲示板はテーマが設定されない限り設置されませんし、設置されていても半ば公共的な場所なので、誰もが自由に書き込むとは限りません。しかしブログは基本的に個人のものですので、社員は気軽に記入できます。会議では発言をためらう社員でも、隣の席の社員とは気軽に雑談できるようなものです。ある社員が何気なく記したアイデアが、まったく別の部署にいる社員の業務のヒントになることもあります」と関氏は話す。
■次期製品はブログの原点へ
シックス・アパート 技術担当執行役員 平田大治氏 |
技術開発の中心的な存在である技術担当執行役員 平田大治氏は、ブログ関連技術の動向についてこう語る。「ブログの技術は1990年代後半にほぼ完成していますが、Atomの標準化や新しいテクノロジの導入など、いまなお進化し続けています。これらの完成度が高まると、クライアントアプリケーション開発において見えない部分の苦労が軽減できるようになります。サードパーティの参入も期待でき、ブログはより活発になるでしょう。ブログ検索にしても処理をより高速に、より簡単に開発できるようになると期待できます」
ではTypePadの将来像はどうか。米シックス・アパートのサイトには次期製品(コード名「COMET」)がスニークプレビューとして掲載されている。創業者のミナ・トロット氏が「お母さんでも使えるように」と話すように、難しい操作や高度な知識を必要とせず、道具として有用で手軽に操作できるとされている。
近年ブログは企業がプロモーションに使うなど多岐に発展してきたが、ここに来て原点回帰の動きがあるようだ。アフィリエイトツール「G-Tools」の作者としても有名なプロダクトマネージャの金子順氏は「ブログは本来の機能、つまり個人が表現したいことや親しい人と共有したいことの公開など、ベーシックな方向に戻りつつあります。そこに新機能となるアグリゲーションやプライバシーコントロールをどう実装していくか検討しているところです」と話す。ブログ本来の良さである手軽さや柔軟性を強化し、ストレスのない操作性を実現するということだ。とても奥深い課題である。
■単なる米国本社の日本支社ではない
金子氏は製品の日本語化プロジェクトの調整、プロバイダや企業へのTypePadサービス展開などを行っている。その役割は日本国内にとどまらない。例えばブログを携帯電話から利用する(いわゆる「モブログ」)機能は日本で提案し開発を行ったという。Movable Typeの法人向け製品の開発チームを日本に配置するなど、開発における日本の役割は大きくなっているようだ。
シックス・アパート プロダクトマネジャー 金子順氏氏 |
シックス・アパートは「米国本社が主導して日本支社は日本語化が中心」といった外資系ソフトウェア企業とは異なる。「やれる人がやります」と金子氏はいう。どの国の法人に属している社員かはさほど関係なく、対等に仕事が進む社風だ。
また多くの社員が自らのブログを持ち、そのタイトルで呼び合うこともあるという。例えば金子氏なら「Goodpicの金子さん」など。だが、ブログを書くだけの愛好家が集まっているのではなく、「ブログを使いながらどう発展させていきたいか考える。そういうことがモチベーションになっている社員が多い」と金子氏は話す。
アットホームな雰囲気がうかがえるシックス・アパートだが、いまもこれからもそれは変わらないという。「会社が少人数でスタートしたので家族的な雰囲気がありますが、当初から『あくまでもビジネス』という意識でやっています。コミュニケーションツールとして役に立つものを作ること、そうでなければ評価されないこと、よく理解し自分の言葉で他人にも説明できること、さらにそれを形にすることが大事です。会社が小規模だった当時は1人で多くの役割を兼任したこともありましたが、社員が増えるとチームワークになりますから自分の役割を把握して行動できるのが理想です」と平田氏はいう。
■Web2.0について知っておくべきこと
最後に「Web2.0」がもてはやされている昨今の様子をどう感じるかと聞いた。金子氏はこう話す。「Web2.0というとその内容に終始してしまい、前提となるティム・オライリー氏が考えたビジョンであることが抜け落ちてしまいがちです。受けとめる側はWeb 1.0と2.0を単に比較するだけではなく、どういういきさつで、誰が、どういうことを目指しているのかを把握するのが大切です。最近は(ブログを通じて)そうした重要なメッセージの背景が伝わりやすくなっています。エンジニアは背景も踏まえて情報収集できることが望ましいと思います」
平田氏も続ける。「Web1.0とは主に1990年代の技術を指しますが、それから世の中は大きく変化しました。ネットワークの帯域幅も、CPUの性能も、ソフトウェアも、ルールもです。Web2.0とは規約でも標準でもなく、時代の状況や現在のベストな解を示しているに過ぎないのです。エンジニアは常に状況を見極め、変化に対応できるようにならなくてはいけません」
現在、シックス・アパートではWeb系の開発エンジニアを広く募集している。ブログ技術の神髄を知り、Web2.0の本流を行くシックス・アパート。ブログで将来を開拓する、魅力的で挑戦しがいのある職場だ。
キャリア採用情報 |
■募集職種 (1) Movable Type開発エンジニア 勤務形態: フルタイム 勤務地: 東京 (赤坂) 職種: ソフトウェア・エンジニア 職務内容: Movable Typeの開発業務全般 募集人数: 若干名 (2) TypePad開発エンジニア 勤務形態: フルタイム 勤務地: 東京 (赤坂) 職種: アプリケーション・エンジニア 職務内容: TypePadのカスタマイズ、周辺開発 募集人数: 若干名 ■応募先、採用募集に関するお問い合わせ先 応募される方は、履歴書、経歴書、アピールを下記Eメールアドレスまたは住所あてにお送りください。 シックス・アパート株式会社 採用担当 jobs@sixapart.jp 郵送の場合 〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-5 プラザミカド3F シックス・アパート株式会社 採用担当 |
シックス・アパート
企画:アイティメディア 営業局
制作:@IT 編集部
掲載内容有効期限:2006年1月31日
会社情報 |
■会社名 シックス・アパート株式会社 (英文: Six Apart KK) ■本社所在地 東京都港区赤坂2-14-5 プラザミカド3F ■代表者 代表取締役 関 信浩 ■設立年月 2003年12月 ■資本金 1000万円 ■出資者 米Six Apart Ltd 100% ■社員数 25名(2005年12月1日現在) ■事業内容 ・インターネット上のウェブサイト構築・管理のための「ブログ技術」の開発と、関連する製品 ・サービスやコンサルテーションの提供 |
キャリア採用情報 |
■募集職種 (1)Movable Type開発エンジニア 勤務形態: フルタイム 勤務地: 東京 (赤坂) 職種: ソフトウェア・エンジニア 職務内容: Movable Typeの開発業務全般 募集人数: 若干名 (2)TypePad開発エンジニア 勤務形態: フルタイム 勤務地: 東京 (赤坂) 職種: アプリケーション・エンジニア 職務内容: TypePadのカスタマイズ、周辺開発 募集人数: 若干名 ■応募条件等 シックス・アパートはサンフランシスコ、パリ、そして東京の三拠点で開発を行っており、もし、採用されたときは、その一員として、次世代のブログ・システムやサービスの開発を一緒に行うことになります。当社製品のカスタマイズや機能拡張など、当社内で策定した仕様に基づいて開発を行うプロジェクトを中心に行う方を募集します。 コミュニケーション能力: 相手の話を正しく理解し、また自分の考えを相手にきちんと理解してもらうことが、仕事を進めるにあたりとても重要です。 技術: ウェブ、インターネットの仕組みを正しく理解している必要があります。 柔軟性: シックス・アパートは小さな会社で、かつ急速に成長しています。柔軟な考えを持って仕事を進めることが求められます。 必須項目は以下のとおりです。 大学を卒業、もしくは、ソフトウェア開発分野での実経験、Perl、Apacheの利用経験 、HTML、CSS、JavaScript の理解、ウェブアプリケーションの開発経験、理解、 オブジェクト指向デザイン・プログラミングの理解、経験。 日本語でのコミュニケーション: 日々の業務報告や、顧客とのコミュニケーション、ドキュメントの作成。 以下は、さらに期待している、望ましい知識スキルや能力です。 ブログについての知識や経験、興味、 リレーショナル・データベースと SQL の理解、経験。 シックス・アパートの製品やサービスへの理解、利用経験。 英語でのコミュニケーション: 英語で書かれたドキュメントを理解できること。 応募される方は、履歴書、経歴書、上記項目へのアピールなどをお送りください。 ■応募、採用募集に関するお問い合わせ先 シックス・アパート株式会社 採用担当 jobs@sixapart.jp 郵送の場合 〒107-0052 東京都港区赤坂2-14-5 プラザミカド3F シックス・アパート株式会社 採用担当 |
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