「将来の目標」として人気の高いITコンサルタント。その仕事とはどのようなものなのか。現場で何を考え、困難にはどう立ち向かっているのか。ITエンジニアとの違いは何か。そして、ITコンサルタントのやりがいとは? こうした疑問に、第一線で活躍するITコンサルタントが答える。 |
人気の高い「ITコンサルタント」
@IT自分戦略研究所とJOB@ITが2007年5月に実施した読者調査によると、「今後の希望職」として「ITコンサルタント」を挙げた回答者は全体の14%強に上った。「プロジェクトマネージャ」「ネットワークエンジニア」などさまざまな職種がある中、ITコンサルタントの人気は高いといえる。
「給与が高い」という一般的なイメージのためもあるが、ITエンジニアにとっては「顧客とじかに折衝できる」「プロジェクト全体を見渡せ、仕事の幅が広がる」「創造的な仕事ができる」など、仕事内容に対するあこがれが大きいだろう。
しかし、「現職」がITコンサルタントであるとした回答者は4%と、まだまだ少ない。多くのITエンジニアは、ITコンサルタントが実際にどのように活動しているのかをよく知らないというのが現状だろう。
そこでこの記事では、「ITコンサルタントは現場でどのような仕事をしているのか」を明らかにしていく。生の現場で、ITコンサルタントはどんな仕事をし、どのようなことを考えているのか。壁に突き当たることはあるのか。ベリングポイントとマイクロソフトのITコンサルタントの実例を紹介し、その疑問に答えよう。
ITエンジニアとITコンサルタントの違いとは?
社名に「Bearing=かじ取り」「Point=目的地」という2つの単語を組み合わせ、「成功」という目的地を目指してマネジメントとテクノロジの両輪で顧客企業を支援するベリングポイントは、世界30カ国以上に拠点を持つ超大手コンサルティングファームだ。
シニア コンサルタントの竹花大輔氏も、ベリングポイントで活躍するITコンサルタントの1人。もともとはSEとして、開発や要件定義、自社製品のデモンストレーションなどあらゆる仕事をこなしていたが、自社会計パッケージの開発や、SAP R/3にかかわるうち、「会計系に強いITエンジニア」として評価されるようになった。そしてベリングポイントに転職して約1年ほどの現在は、「会計系に強いITエンジニア」ではなく、「ITコンサルタント」として、顧客企業の要件に応えているという。
竹花大輔氏
「正直な話、ITエンジニアとITコンサルタントで、顕著な違いはありません。1つ違うとすれば、ITエンジニアが『ITありき』で提案したり、要件定義をしたりするのに比べ、ITコンサルタントは『組織体制や業務プロセスの改善』まで含んで最適なものを提案します。そういう意味で、仕事内容の広がりはあると思います」と竹花氏はいう。
現在はあるメーカーに常駐し、業務改革・グローバル展開・ERP導入を目したプロジェクトに参加。財務管理を中心に、ヒアリングと改善点の分析作業を行っているそうだ。
1日のスケジュールは、顧客企業の元での「会議・ミーティング」「分析」「報告書作成」などに大きく分かれる。会議・ミーティングは、業務改革プロジェクトで行うもの、ERP導入チーム(専門のシステム開発企業が担当)を交えてのものなどいくつか種類があり、1日の中でどこかに必ず設けられている。「基本的にプロジェクトチームは同じ場所で仕事をしています。ちょっとした立ち話の時に情報交換をするなど、コミュニケーションは欠かしません」と竹花氏はいう。
顧客企業から切られた! そんなとき、どうする?
顧客企業に常駐し、初めてのメンバーと顔合わせをし、コミュニケーションを取りながら目標に立ち向かうITコンサルタント。しかし人間同士のことなので、相性がいつもいいとは限らない。極端な場合、顧客企業から「担当を変えてほしい」と“切られる”こともあり得る仕事だ。
「相性の問題は確かにあります。態度や話し方が気に入らない、そもそも外部から助言されるのが嫌など、基本的なところでダメ出しされることもあります。そういうときは、とにかく『私たちはお客さまの味方だ』ということをいかにアピールするかにかかっています。ここで高度なコミュニケーション能力が要求されますね。聞かれたことに答えず、勝手に自分のいいたいことを話すのは論外。根気よく、かつ論理的に説明し、コミュニケーションを重ねることで、お客さまからの信頼につながっていきます」と竹花氏はいう。実際、以前担当したプロジェクトでは、なかなか顧客企業と打ち解けられず、最終フェイズに至ってようやく心が1つになったというケースもあったそうだ。
それでもどうしても相性が合わず、プロジェクトから切られたとき、あるいは「顧客企業でも、強くいいたいことがある」といったときにはどうするのか。
「前者については、必要以上にくよくよしないこと。仮にプロジェクトから切られたとしても、そこから得られる経験は大きいはずです。何事も前向きに考え、常に学ぶ姿勢がないと、ITコンサルタントはできません。また顧客企業に強くいいたいときには、論理的かつ合理的に納得していただけるよう、あらゆる材料を用意します。そのためのヒアリング、分析は慎重かつ迅速に行う必要があります。お客さまも“太鼓持ち”的なコンサルティングを求めているわけではないので、いかにそのニーズに応えるかが重要です」(竹花氏)
どんな状況からも学ぶ、くよくよしない――これは実は、ITコンサルタントのやりがいに直結する部分だ。「例えば、会計業務といっても内容はさまざま。財務諸表作成のこともあるし、管理会計にかかわることもあります。いってみればITコンサルタントは、短期間にいろいろな会社を転職し、新しい人とコミュニケーションしながら新しい仕事をしていくような役割を担っている。新しい環境に飛び込めること、“次はどんな仕事だろう?”とわくわくできることが、大きなモチベーションになっていますね」(竹花氏)
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技術者を支援するITコンサルタント
「高度な技術力をベースにコンサルテーションを行う」というのであれば、マイクロソフト コンサルティングサービス統括本部(MCS)も忘れてはならない。MCSは、文字どおりマイクロソフトテクノロジをベースにさまざまなプロジェクトに参画し、技術コンサルティングを行う部門。主に、パートナー企業であるシステム開発企業を顧客とする。「企業の情報システム部の方々に対する技術コンサルテーション」という側面でいえば、これ以上のITコンサルタントはいないだろう。
同本部 プリンシパルコンサルタントの棚橋信勝氏は、かつて外資系のIT企業で運用・保守や基盤システム開発を行っていた。大規模メインフレームを武器に発展した企業だったが、次第にオープン系技術を誇るマイクロソフトに強い魅力を感じるようになり、転職に至ったそうだ。
コンサルティングサービス統括本部
プリンシパルコンサルタント 棚橋信勝氏
現在、棚橋氏はマイクロソフトのデータベース「SQL Server」の専門ITコンサルタントとして、さまざまなプロジェクトにかかわっている。中でも、Windows環境の金融勘定系システムとして世界初の規模であった、百五銀行のプロジェクトに参画した経験が大きかったという。
「そのプロジェクトでは、リリースされたばかりの新製品『SQL Server 2005』の性能を最大限に引き出すというミッションを与えられ、プライムベンダである日本ユニシスの技術者の方を中心にコンサルティングを行いました。具体的には、定例会議で提出された技術課題や要望に基づき、米国の製品開発チームとディスカッションを行い、対応策を提案するという作業です。これに必要な日本語・英語の資料と、実際の提案書や設定シートを作成しました。さらに米国本社の開発センターにご案内し、障害発生時のダウンタイム復旧テストを計画・実行して、最終的にエンドユーザー企業にもご満足いく安定性の高いシステムを構築することができたのです」(棚橋氏)
共に苦労した日々があるからこそ、達成感もひとしお
棚橋氏の1日は、顧客企業での作業と自社内での作業との2つに分かれる。例えばある日は、午前中に顧客を訪問してパフォーマンスチューニングについての要件を確認、移動の合間に食事を取り、午後は別の顧客企業へ。タクシー内でメールをチェックするなど、移動時間も効率よく使う。午後いっぱい顧客とミーティングを行った後自社へ戻り、また翌日に向けた資料作りに入る。
こんな多忙な中だが、「お客さまと一緒になってやり遂げたプロジェクトが無事最後を迎え、お客さまから感謝されたときが最もうれしい瞬間」(棚橋氏)だと、大きな達成感と満足感を覚えているという。「新聞や雑誌で報道されるような、社会的にもインパクトの大きな仕事にかかわれる喜び」もある。「時間をかけたシステムがようやくサービスインしたときは、本当に感動します。もちろん、お客さまと共に頑張ったという達成感が背景にあるからです。お客さまの期待に応えることができる、どんなことにも応えていこうと思う、これが明日のモチベーションにつながっています」と棚橋氏は語る。
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企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2008年3月24日