ITで有名な企業には外資系企業が多い。外資系企業というと、自由な雰囲気や給料が高いといったポジティブなイメージと、業績次第ですぐにリストラといったネガティブなイメージとが混在する。どこまでがウソで、どこまでがホントなのか? |
エンジニアの英語力はどこまで必要?
ITエンジニアとして外資系企業で働くとなると、日系企業とどういう違いが生じるのだろうか。さまざまな疑問が頭に浮かぶ。必要な英語力、社風や文化の違い、雇用の安定性、キャリアの考え方など。今回は外資系企業への転職に詳しい専門家に話を伺った。
外資系企業での就業未経験者が真っ先に心配するのは英語力だろう。もちろん、社内で使われる言語が英語とは限らないが、ここでは英語を前提に話を進める。
どのくらいの英語力が必要なのだろうか。ケースバイケースではあるが、基本的には技術の専門職であれば英語力は必要最低限さえ満たしていれば十分なところが意外と多いようだ。
ただし、必要最低限の英語力がどの程度かは、一概に答えることはできない。実際の職場や立場、職務内容により違うからだ。海外のエンジニアと一緒に開発するとか、外国の本社との会議に定期的に参加するなど、常に英語が必要になる場合もあれば、日本国内なら日本語で十分という企業も存在する。
取締役 最高執行責任者 斉藤政之氏
外資系転職サイト「キャリアクロス」を運営するシー・シー・コンサルティング 取締役 最高執行責任者 斉藤政之氏は「TOEICスコアがどうあれ、(英語を母国語とする)ネイティブが面接で話を聞く機会があれば、当人の英語力がどの程度かはすぐに分かります。大事なのは、多少たどたどしくても、自信を持って話すことです。分からないことは分からないと正直にいうこと。すると話すスピードを落としてくれるでしょうし、会話がゆっくりでも進めば、一応英語の素質はあると見なされます」と語る。
「英語はスポーツと同じで訓練すれば伸びます。個人差や英語を使う頻度にもよりますが、職場で英語を頻繁に使っていれば英語力は自然に向上していきます」と語るのは、外資系企業にも強い人材コンサルティングファームのA・ヒューマン 情報・通信部 エグゼクティブコンサルタント 北村浩一郎氏だ。
気になるTOEICのスコアと英語力向上の支援策
このようなアドバイスを受けても、TOEICであればどのぐらいのスコアがあればいいのか気になるのが人情だ。
エグゼクティブコンサルタント 北村浩一郎氏
あえて目安を挙げるとすれば「TOEICで600点」だ。これが現状でクリアできていないなら、まずはこの点数を目標にするのはどうだろうか。
といっても、600点未満だからといって外資系への転職が無理かというと、そうとは限らない。A・ヒューマン 情報・通信部長 赤澤隆氏は「応募者多数でTOEICのスコアを持っていないか、低ければ書類選考で振り落とされることもありますが、本人のポテンシャルや意欲が考慮されることは十分にあります」という。
入社後の話ではあるが、「英語力向上のための支援制度がある会社もあります」と、北村氏は説明する。
英語力向上のため、何らかの制度や試みを実践している企業は多い。英会話学校の授業料を全額または一部を補助する会社や、社内で英会話レッスンを開く会社もある。さらに北村氏は「考えようによっては周囲が皆、英語のインストラクターですから」と笑う。
斉藤氏も「日本滞在が長い外国人なら、日本人のたどたどしい英語には慣れていますから、発音などは心配することはありません」と語る。職場にいれば、自然と英語に慣れると考えておけばいいようだ。
なおシー・シー・コンサルティングではキャリアクロスの姉妹サイトとして、社会人のための英語学習と国際資格のための「イー・ベンキョー」というWebサイトも運営している。
外資系で伸びるのはどんなタイプか
情報・通信部長 赤澤隆氏
英語力以外では、文化の違いが気になるのではないか。外資系に向いていて、伸びるのはどんなタイプだろうか。英語力とも重なるが、それは、自主的に行動し自分の意見をはっきりといえるタイプだという。北村氏は「プロフェッショナルとして自分で考えることが大事です。皆さんは就“職”しているのであり、就“社”しているのではないのですから」と語る。
赤澤氏は「外資系企業では社内で新しいプロジェクトや職種を募集することがあります。エンジニアの皆さんは、その社内募集に応募することでキャリアを伸ばすことができます。逆に資格や経験を積んだ結果、社内の別部署からスカウトされることもあり得ます」とさまざまな可能性があるという。
一般的に外資系は日系と比較して人間関係がフラットであり、意見をいいやすいという特徴がある。逆にいえば、常に自分の意見を持つ必要があるということだ。
この点について斉藤氏は「自分が携わっている仕事であれば、誰しも何らかの意見を持つものではないでしょうか。意見をいいやすければ気持ちも楽です。いろんな意味で外資系では誰にでもチャンスがあります。日本人特有の謙遜(けんそん)は必要ありません」と話す。
いずれにせよ、自主性が大事である。ただ時間が過ぎるのを待つのではなく、上司から仕事を与えられるのを待つのではなく、自ら考えて行動するタイプが外資系で伸びる。自分の枠を自分で超えようとする行動力や気概が重要だ。
もちろん、自主性にはまだ自信のないという人も、専門家に相談することをお薦めする。自分の強みなどを分析してもらうことで、それが自主性だったのかと気付されることもあるからだ。自主性を、それほど自分で高い壁にしなくてもよいということだ。
なお、A・ヒューマンは30代の選職をコンセプトに掲げ、自立的に職を選ぶ転職スタイルを強力にサポートしている。また、IT業界出身のコンサルタントがきめ細かく丁寧に対応しているという。
ネガティブイメージの実際
外資系のネガティブなイメージは、どこまで事実なのだろうか。たまに外資系企業が業績悪化で大規模リストラといったニュースや記事を見かけることがある。こういう記事や風聞を耳にすると、つい不安に思うだろう。
リストラに対して赤澤氏は「ないとはいえません。しかし日系企業ならリストラがなくて安泰ともいえない時代ですよね」と指摘する。続けて「ポジションが上がるほど責任が重くなります。従って業績悪化で職を失う可能性が高いのは役職者です。役職が高くない社員がリストラになる場合もありますが、そんなにドライではありません。外資系では企業が主体となったアウトプレースメント(他社への就職斡旋(あっせん)が普及しており、また金銭的な交渉なども合理的に話が進みます」と話す。
この「合理的」というのも外資系の特徴だ。一般的に外資系と日系では、同じスキルや経験なら外資系の方が年収が高くなる傾向があるそうだ。外資系の場合は、スキルや経験が高いなら、ダイレクトに年収に反映させるためだ。まさに合理的な判断だ。
会計制度上の問題などで一時ほどではないが、それでも日本よりもはるかにストックオプションは普及している。また成果主義も徹底している分、業績に貢献すれば何らかの見返りがあることが多い。この手応えが働くうえでのモチベーションにつながることもあるだろう。外資系という異文化にひるむ必要はなく、むしろ日系にはない可能性に期待していい。
目指すなら、何から始めるべきか
斉藤氏は、「あまり(ネガティブな)先入観にとらわれない方がいいと思います。一度外資系企業を経験すると次の職場も外資を選ぶ人が多いという話をよく耳にします。安心していいと思いますよ」という。
北村氏も「外資系企業で働いた経験がないとあれこれ心配してしまうものですが、一度中に入ってしまえばなんとかやっていけるものですよ」と語る。入ってみると外資系が肌に合う日本人も意外と多くいるようだ。
では、もし将来外資系企業への転職を目指すなら、どんな準備をすれば有効だろうか。「まずは自分のスタンスやビジネス、生活をどうするか、自分なりに答えを出すことです。スペシャリストとして技術を極めるか、またはマネジメントに進むかなど方向性を決めておくといいでしょう」とA・ヒューマンの赤澤氏はアドバイスする。自分なりの目標や理想を決め、それを他人に伝えられるようになることが重要だ。
こうした準備は、別に外資系だけには限らない。どんな企業を目指すにしても、スペシャリストとして技術を極めるのか、マネジメントの方向に進むかは考えておくべきものだ。そう考えると、特別な考え方は必要ないのもかもしれない。
それでもあえて外資系への転職準備を挙げるなら、英語力向上とスキル向上が挙げられる。英語力は先にも述べたように、TOEICで600点を目安にするといいだろう。英語力はあるに越したことはない。だが英語力よりも重要なのは本職のスキルと経験だ。
スキルでいえば、各種の技術認定資格を取得しておけば考慮される可能性がある。グローバルな資格であれば海外でも通用する。ただし、取得するなら上級資格が効果的だ。当然実務の実力が重視されるが、上級の資格を取得した努力は考慮してもらえることがある。
外資系に興味があればまず行動に移すことから
もしある程度の英語とスキルがあり、自分の気持ちが決まったなら行動に移すべきだ。まだ気持ちががっちり決まっていなかったとしても、孤独にもんもんと考えていてもなかなかいい答えは出てこない。こうしたときのためにこそ、専門家がいる。
斉藤氏は、「弊社が運営する外資系転職サイト「キャリアクロス」では95%が外資系や英語を使う求人を掲載しています。外資系企業からのIT人材に対する需要は非常に多く、当サイトでも全5,000件以上の求人のうち、1,700件はIT関連の求人。興味があれば弊社サイトで仕事を検索してみてください。きっとやりたい仕事が見つかります」と話す。
北村氏は「弊社では紹介先の業界別に部署が分かれており、IT業界はハードベンダからソフトベンダ、職種は『プロジェクトマネージャ』や『システム開発』など、多数の紹介実績があります。また専任の担当者が一貫して企業も転職希望者を支援することを特徴としており、経歴だけをコンピュータマッチングではなく、いままでのご経験を丁寧に伺って紹介します。どうぞ安心して相談してください」と話す。
きっと、それぞれにふさわしい職場や働き方などをアドバイスしてくれるはずだ。外資系への転職に向けて、まずは扉をたたいてみよう。
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企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2008年3月26日
株式会社 A・ヒューマン
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キャリア・デベロプメント・アソシエイツ株式会社
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株式会社シー・シー・コンサルティング
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