女性エンジニアの活躍を期待する企業が増えている。さまざまな背景を持つ社員が活躍することで、視点や能力が多様化し、企業力が向上すると考えられるからだ。出産・育児など、生活の変化につれて働き方も変化していくことが多い女性エンジニア。柔軟な働き方が可能な環境であれば、その実力を発揮できる機会はますます増えるだろう。女性エンジニアを巡る各社の取り組みを追った。 |
女性の活躍が会社を発展させる | |||
鈴木智弘氏
「女性の活躍は、企業の成長に不可欠なもの」と考える企業が増えている。イーシー・ワン、マイクロソフト、ソニーの3社に、女性エンジニアの活躍を支援する企業風土、取り組みについて聞いた。
イーシー・ワン 人事総務部 部長 鈴木智弘氏は、「顧客の要求を把握する能力や設計書を作成する能力、人間関係を円滑に進める能力」が女性の長所として挙げられるとする。その背景には、「きめ細かな配慮や丁寧さ」があるという。そして「女性が能力を発揮できる機会を提供したい」と話す。
「社員力を、経営力に。」を掲げるマイクロソフトの人事本部 HRプランニング&オペレーション シニアマネージャ 波頭郁子氏は、「マイクロソフトは『世界中のすべての人々とビジネスの持つ可能性を、最大限に引き出すための支援をする』ことをミッションとしています」と説明する。これは顧客に対しても、同社の社員に対しても同様である。
ソニーの特徴は、創業者の理念がいまでも生きていることだろう。同社 人事部門 ダイバーシティ開発部 企画推進Gp 統括課長 井上達也氏は「ソニーでは創業者の理念もあり、個人の意思を尊重するカルチャーが浸透しています。ソニーは人事の基本方針として、性別、国籍、年齢などにとらわれない人材登用を行っており、社員それぞれが高い目標にチャレンジし、最大限の力を発揮できるような環境づくりに努めています」と話す。
HRプランニング&オペレーション
シニアマネージャ 波頭郁子氏
あえて強調するまでもないが、どの会社も「女性のみ」を支援対象としているわけではない。さまざまな背景を持つ社員が活躍することで、企業全体に良い効果が生まれると考えている。この意義をイーシー・ワンの鈴木氏は端的に語ってくれた。
「そうしないと(会社やビジネスは)発展しません」
3社に共通するのは、「職場に男性だけではなく女性がいるのは当然」という感覚である。その根幹には当然「個人を尊重する」という姿勢がある。各社とも「本人に働く意欲がある限り、会社としてその障壁となるものはできるだけ取り除く」ことを第一に考えている。
結婚や出産に対して会社ができることは? | |||
現実に目を向けると、女性には就業の継続を困難にするライフイベントがいくつもある。その代表が結婚や出産、育児である。内閣府男女共同参画局の「男女共同参画白書 平成20年版」の「第1−2−9図 配偶関係別女性の年齢階級別労働力率の推移」を見ると、20〜30代では未婚に比べ、目立って既婚の労働力率が低い。これは女性既婚者が何らかの理由で仕事に就いていないことを表している。
その理由の一部を示しているのが「第1−3−11図 仕事を辞めた理由及び結婚時に離職した理由」だ。「家事や育児に専念したい」といった理由で離職する場合もあるが、中には「仕事と家庭を両立したいが無理」と判断して離職する場合もある。離職の理由が、仕事と家庭の両立の困難であるなら、社会や会社が手を差し伸べる余地はある。会社にとっては、能力と意欲のある社員が就労を継続することには大きなメリットがあるからだ。
ダイバーシティ開発部 企画推進Gp
統括課長 井上達也氏
法制度の面から見れば、産前産後休業や育児休業、または健康保険などから出る出産一時金でサポートが可能だ。それ以外で各社はどのような対応をしているのだろうか。大事なのは制度の有無ではない。活用しやすい制度か、仕事と家庭の両立に効果があるか、つまり実際の効果があるかどうかだ。
マイクロソフトで特徴的なのは看護休暇だ。これは家族など大切な人の看護をする時に取得できる有給の制度で、年間5日を上限とする。半日単位でも取得できる。子どもの急病に配慮したものだが、親の介護や配偶者、婚約者の急病にも使える。
同社では、働きやすく、働きがいのある職場にするための施策として、社員のキャリアディベロップメントを支援する仕組みを強化している。全世界共通の取り組みとして、職務に求められる能力や期待される成果を整理して開示している。社員のキャリアパス構築の支援策といえるが、社内公募に応募するときの重要な情報源にもなっている。
ソニーでは先に述べたカルチャーに支えられ、比較的早い段階から社内で女性が活躍している。ソニー内での「女性初」の実績を並べると、「1973年に課長誕生」「1979年に海外赴任」「2003年に取締役と執行役誕生」などがある。女性の登用という面でも先陣を切っている企業であるといえる。
育児支援のアプローチは各社で工夫 | |||
2003年に次世代育成支援対策推進法が成立し、十分な次世代育成支援対策を行っている職場を国が認定するようになった。いわゆる「次世代認定マーク」(くるみん)である。ソニーは取得済みだ。
ソニーの育児関連制度では、「育児休職」の取得率が高く、男性社員においては「育児休暇(有給。20日間)」を積極的に活用する人も多い。このほかにも、育児休職中の在宅勤務制度である「育児フレキシブル勤務」や、「育児短時間勤務」「子の看護に関する休暇」など、育児期間のサポートが充実している。
育児支援に限らず、ソニーはエンジニアを育成する意識が高い。設立趣意書で「国民科学知識の実際的啓発」を創業目的の1つとして位置づけたことからもうなずける。技術を柱とする企業で、技術者育成と支援を重要視するのは当然だ。同じようにマイクロソフトも次世代のIT技術者育成やIT技術の教育現場での活用に積極的に取り組んでいる。対象となるのは、現役のIT技術者から地域の子どもたちまで多岐にわたる。こうした教育への取り組みで、マイクロソフトは杉並区から表彰されたことがある。
ソニーでは両立支援の一環として「Working Parent's Forum」「Father's Forum」というイベントを開催している。ソニーの井上氏は「近年、育児に関して男性の当事者意識が高まっています」と話す。マイクロソフトには、女性社員や育児経験者などの情報交換コミュニティがある。「ワーキングペアレンツコミュニティ」という名称だ。
制度面の整備はこれからだが、手厚いサポートが特徴なのがイーシー・ワンだ。鈴木氏は「当社のようにプライム中心の業務で、IT技術者が中心的役割を担う場合、育児との両立は難しいことが多いと思います。当社は若年層が多く事例も少ないため、女性の支援制度は現状では法定を満たす程度ですが、利用者にはできる限りの配慮を考えています」と話す。
同社での出産・育児経験者には、開発統括本部 青木彩花氏がいる。試行錯誤しつつ、会社や同僚は青木氏にできるかぎりのサポートをしている。
「もちろん本人の業務努力も大きいですが、一方で所属上長はじめ周囲の理解が厚い点も大きいと思います。本人だけでなく、周囲が機転を利かせて仕事をやりくりしています。IT技術者の仕事は育児中の女性には困難な要素がたくさんありますが、イーシー・ワンでは仕事の内容の幅を広げ、現場でもある程度勤務時間を調整できるようにしてきました」(鈴木氏)。女性に限らず、会社全体の人事や評価制度を見直している最中で、その効果が徐々に出てきているところだという。
多様な背景を持つ社員を大事にする会社 | |||
創業時からの理念に支えられているソニー、積極的に取り組みを強化しているマイクロソフト。両社は社風として女性が男性と対等に働くことが定着しており、さらにその先の「ダイバーシティ(多様性)」へと目を向けて実践している。日本では先進的であり、理想的な存在だ。
対して、現実のIT企業の姿により近いのがイーシー・ワンといえるだろう。育児中の立場には厳しい要素が多いIT企業において、イーシー・ワンは可能な限り女性エンジニアをサポートしている。制度は発展途上だが、実運用面では申し分ない。
どの会社も社員の働く意欲を大切にしている。性別の違いに限らず、社員が持つ個性、意見、経験は幅広い方がいい。より多様な背景を持つ社員が、チームとして力を発揮できてこそ、会社は伸びていくものではないだろうか。
提供:株式会社イーシー・ワン
ソニー株式会社
マイクロソフト株式会社
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2008年9月25日
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