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世界標準のシステム表記法として注目を集めるUML(Unified Modeling Language)は、2003年に2.0の仕様が正式に発表され、システム開発の現場での実用性が飛躍的に高まった。そのUML 2.0に対応し、標準に基づく確かな能力を判断する基準となる資格試験プログラムがスタートした。その資格が「OMG認定UML技術者資格試験プログラム」(OCUP:OMG-Certified UML Professional Program)だ。OCUPは、ITエキスパートにとって有用なのか、詳しく見てみよう。

 OCUPは、UML策定のリーダーである世界最大のソフトウェア標準化コンソーシアム「OMG」(Object Management Group)が推進するプロジェクトであり、UMLのスキルを認定する資格試験としては、事実上の業界標準である。試験はUMLの最新仕様書の各分野から出題されるが、UMLの基礎知識と活用能力の両面が評価されるため、OCUPを習得することでUMLの基本理論と現場での実践技術の両面を身に付けることができる。

 では具体的にどのような問題が出題されるのだろうか。OMG日本代表で日本国内での活動を推進しているオブジェクトテクノロジー研究所に作成いただいたOCUPのファンダメンタル試験の模擬問題を掲載しよう。実際に解いてみていただきたい(解答と解説は記事の最後にあります)。

問題1
あるシステムの利用者には、一般利用者と会員利用者(一般利用者よりも多くの機能を利用できる利用者)と管理者という3つの区分が存在する。この3種類のアクターとユースケースを結び付ける方法として、最も適しているのはどれか?
A
それぞれのアクターが利用できるユースケースに対して、それぞれを独立に結び付ける
B
すべてのアクターと、すべてのユースケースを結び付ける
C
会員利用者は一般利用者を継承するように定義し、一般利用者とユースケースを結び付ける
D
会員利用者と管理者は、それぞれ一般利用者を継承するように定義し、一般利用者とユースケースを結び付ける

問題2
図で示したクラス図について、クラスAがサポートしなければならないオペレーションはどれか?
A
クラスBの持つオペレーション
B
インタフェースAの持つオペレーション
C
インタフェースAとクラスBの持つオペレーション
D
特に決まりはない

問題3
図において、クラス1が必要としているクラスはどれか?
A
クラス2
B
クラス3
C
クラス4

問題4
図のシーケンス図のすべてのトレースについて、当てはまるものを2つ選べ。
A
メッセージqよりも、メッセージpの方が必ず先に送信される
B
メッセージpよりも、メッセージqの方が先に送信される可能性がある
C
メッセージqよりも、メッセージpの方が必ず先に受信される
D
メッセージpよりも、メッセージqの方が先に受信される可能性がある
E
メッセージqの送信よりも、メッセージpの受信は必ず先に行われる

 いかがだろうか。業務分析や実際のクラス設計において、実践的な能力を持っているか否かを評価できる問題だと実感いただけたと思う。@IT自分戦略研究所の無料サービス「ITトレメ」では、ファンダメンタル試験の模擬問題をメールとWebサイトで配信している。そちらも参考にしていただきたい。

 UMLはなぜ必要なのか?

 OCUPの詳細に触れる前に、あらためて「統一モデリング言語」であるUMLの必要性を考えてみよう。システム開発に携わったことのあるエンジニアであれば誰でも、顧客企業の業務全体がどんなものなのか、あるいは、開発中のプログラムがどんな機能を持つものなのか、どのような方法でどんな言語で文書化するか、という点で苦労したことがあるのではないだろうか。

 UMLは、業務内容全体を、あるいはプログラムの機能を、“モデル化”して表現し、かつ統一した表現方法で表記するための言語だ。データの種類や内容、機能、その関係性(振る舞い)が構造図で表現されるため、システム、機能全体が見えやすくなる。正直なところUML 1.xでは拡張性が低い、ダイアグラム間の相互運用ができない、などの課題があったが、UML 2.0の登場によって振る舞いのダイアグラムや細かな業務の表記の拡張などが強化され、より実用的になった。

 また、UML 2.0は、OMGが複数のOS、プログラミング言語、ミドルウェア、ネットワーク基盤、ソフトウェア開発環境に基づいて開発しており、非常に汎用性、柔軟性が高いという評価を得ている。そもそもオブジェクト指向に基づいているため、Javaをはじめとするオブジェクト指向言語との相性がよく、システムの実装フェイズに落とし込みやすい。

 UMLはITエキスパートにとって必要不可欠に

 現在、UMLを導入してシステム開発をする事例が急速に増えている。分析設計フェイズ担当者と実装フェイズ担当者間はもとより、顧客に対しても、あるいは企業間でも、UMLは開発内容の理解のために有効である。さらに「言葉」に依存する部分が少ないため、オフショア開発の際には、その有用性が増すだろう。今後UMLを知らずに済ませられるITエキスパートはいない、といっても過言ではない。

 OCUPの運営事務局である、株式会社UML教育研究所(UTI)の代表取締役 近森 満氏は、受験対象者について次のように語っている。

「いまやUMLは、IT/ソフトウェア業界で活躍されている方にとって最も重要なスキルです。ビジネス モデリングを担当する方はもとより、プログラミングを担当する方にも、求められる知識の確認として、この資格試験を受験いただきたいと思います」

 UML2.0の策定により、UMLはその普及に拍車がかかると予測される。今後はシステム設計書、仕様書がUMLで記述されることが多くなるだろう。ITエキスパートにとって、UMLはシステム開発に役立つスキルであり、UMLの習熟レベルを問うOCUPは高い評価を得られる資格になることは間違いない。

 OMGが認定する業界標準の「OCUP」

 ここで「OMG認定UML技術者資格試験プログラム」(OCUP)について説明しよう。OCUPの問題はOMGによって作成される。OMGとは、前述のとおりソフトウェア開発業界におけるさまざまな標準技術の策定を推進している非営利団体で、1989年に設立された。IT企業やユーザー企業はもとより、政府機関や研究所など約600の会員から構成されている。日本からは日立製作所、富士通、日本電気、東芝など約40社が参加している。

 OCUPの試験問題は、OMGの技術普及担当部長であるジョン・シーゲル氏がリーダーとなり、UML技術の専門家と試験プログラムの専門家17名からなるチームによって作成されている。試験開発メンバー企業はユニシス、エリクソン、IEEE、IBM、そして日本からは富士通が参加した。試験プログラムの実際の運用はOMGとUML教育研究所(UTI)によって行われる。UTIは、日本、韓国、中国、オーストラリア、インドなどアジア太平洋地域におけるOCUPの運営事務局として機能している。UML技術者のためのトレーニングコースや書籍に関しては、「資格試験への対応指針」を作成し、その開発をサポートする。

 UMLについて学び、自分の知識や現場に活用できるスキルがどの程度のものなのかを確認できる機会がこのOCUPによって用意されたといってもいいだろう。OCUPの受験対策のための教材は充実しつつある。また、認定教育パートナーによるセミナーも、エンジニアのレベルに応じた内容で提供されている。ぜひ、OCUPで自分の実力を試してほしい。

 資格DATA


資格の種類と試験

「Fundamental」(ファンダメンタル)
「Intermediate」(インターメディエイト)
「Advacced」(アドバンスト)
の3段階があり、誰でも、どのレベルからでも受験しても構わない。しかし資格認定のためには、各レベルの下位の試験に合格している必要がある。

OCUPの資格種類

OMG-Certified UML Professional Fundamental
ファンダメンタル(基本)

ファンダメンタルは基礎レベルとして、UMLで使われる用語や基本的なダイアグラムに関する知識と、モデルの意味を理解する能力を認定する。
クラス図やアクティビティ図、シーケンス図、ユースケース図に関する基本的な知識が問われるが、UML 2.0で新たに追加されたダイアグラムや表記法に関する問題はごく一部となっているため、UML 1.xに関する理解の向上/再確認としても活用することができる。

認定条件 ファンダメンタル試験の合格
対応試験 Fundamental Exam(ファンダメンタル試験)
試験番号 UM0-100
試験時間 90分(80問)
合格基準 46問以上の正解
出題範囲 1.0 Class Diagrams (Basic) 30%
2.0 Activity diagrams (Basic) 20%
3.0 Interaction Diagrams (Basic) 20%
4.0 Use Case Diagrams (Basic) 20%
5.0 Miscellaneous basic notions 10%

OMG-Certified UML Professional Intermediate
インターメディエイト(応用)

インターメディエイトは中級レベルとして、ファンダメンタル同様、UMLの用語、ダイアグラムに関する知識、モデルの意味を理解する能力を認定する。
複合構造図、コンポーネント図、シーケンス図、ステートマシン図などが主な出題範囲となっているが、UML 2.0で新たに追加されたダイアグラムが扱われており、UMLに関する知識を完全なものとするにはインターミディエイトの取得が推奨される。

認定条件 ファンダメンタル試験とインターメディエイト試験の合格
対応試験 Intermediate Exam(インターメディエイト試験)
試験番号 UM0-200
試験時間 90分(70問)
合格基準 31問以上の正解
出題範囲 1.0 Composite Structure Diagrams (Intermediate) 15%
2.0 Component diagrams (Basic) 15%
3.0 Action Model (Intermediate) 10%
4.0 Activity Diagrams (Intermediate) 15%
5.0 Interaction Diagrams (Intermediate) 15%
6.0 State Machines (Behavioral) 15%
7.0 Deployment diagrams (basic, without Components) 5%
8.0 Profiles 10%

OMG-Certified UML Professional Advanced
アドバンスト(上級)

アドバンストはOCUPにおける上級レベルとして、UML全般にわたり、主にメタモデルを中心とした知識、理解する能力を認定する。
クラス図、複合構造図、アクティビティ図、ステートマシン図などのダイアグラムに加え、OCL(オブジェクト制約言語)が主な出題範囲とおり、UMLモデルの変換といった応用的な利用方法をとる開発者、ツール開発者、アーキテクトに求められる高度な内容となる。

認定条件 ファンダメンタル試験、インターメディエイト試験、アドバンスト試験の合格
対応試験 Advanced Exam(アドバンスト試験)
試験番号 UM0-300
試験時間 90分(58問)
合格基準 29問以上の正解
出題範囲 1.0 Class Diagrams (advanced) 5%
2.0 Composite Structure diagrams (advanced) 10%
3.0 Component diagrams (advanced) 5%
4.0 Action Model (advanced) 10%
5.0 Activity Diagrams (advanced) 15%
6.0 Deployment diagrams (with Components) 15%
7.0 State Machine Diagrams (Protocol state machines) 10%
8.0 Miscellaneous Advanced Constructs and Diagramming 10%
9.0 Language Architecture 10%
10.0 Object constraint Language 10%

受験方法

認定試験はOMGの委託を受けた、アール・プロメトリック株式会社が運営している。CBT(コンピュータを使った)試験で、全国のテストセンターにて毎日実施されている。申し込み、スケジュール、試験会場などの詳細はアール・プロメトリックへ問い合わせを。

申込期間 受験希望日の3日前までに申し込みが必要
試験時期 毎日受験可能
試験場所 全国各都道府県にあるアール・プロメトリックが指定する試験会場
受験料 各試験とも、3万円(税別) 
※2004年4月30日までは、2万7000円(税別)で受験できる
問い合わせ アール・プロメトリック株式会社
http://www2.prometric-jp.com/annai.htm
フリーダイヤル:0120-387737

資格に関する問い合わせ先
株式会社UML教育研究所(UTI)

東京都千代田区九段北4-1-3 飛栄九段北ビル3F
TEL:03‐3556-5315 FAX:03‐3237-8935
http://www.umlcert.org


 学習教材

テキスト

 「UML技術者資格試験(ファンダメンタル)取得講座テキスト」が株式会社ピーエイから発売されている。同社と株式会社豆蔵が「UML技術者資格試験(ファンダメンタル)」取得を目的としたトレーニングコースでの教材として共同開発したもの。オブジェクト指向概論、最新のUML 2.0についての解説(ファンダメンタル試験の範囲内)、練習問題集や用語集、標準ステレオタイプ表が付録として付いており、このテキストだけでも試験対策学習が可能だ。

価格(税別) 1万6000円/冊
(1度に10冊以上注文の場合に限り1万2000円/冊)
注文 https://secure.pa-co-ltd.co.jp/cgi-bin/mail/entry.cgi?pt=UTX
問い合わせ 株式会社ピーエイ UML教育マーケティング部
担当:友行(ともゆき)

メールアドレス:m-tomoyuki@pa-co-ltd.co.jp
東京都千代田区九段北4-1-3 飛栄九段北ビル3F
TEL:03-3237-8911

集合研修

 2004年2月現在、次の5社がOCUP認定教育パートナーとして、UTIから認定されている。OCUPに対応するトレーニングコースの詳細はそれぞれのWebサイトを参照いただきたい。

ITプロフェッショナルスクール http://www.it-ps.co.jp/
KEN IT Engineer School http://www.kenschool.jp/
豆蔵 http://www.mamezou.com/
鷹町興産 http://www.takamachi.co.jp/
うえじま企画 http://www.uknet.co.jp/
   
 UMLの最新情報をメールで受け取る

 UTIでは、UMLに関連する最新情報やイベント情報が無料で手に入るメーリングサービスを行っている。簡単な手続きで登録できるので、ぜひ活用してみよう。

[UTI]メーリング・サービス http://www.umlcert.org/



問題の解答と解説

問題1
回答:C

アクターは、大きく「利用者」と「管理者」に分けることができる。さらに利用者には「一般利用者」と「会員利用者」が存在するが、一般利用者と会員利用者は共通するユースケースを持つため、2者は継承関係で結び、汎化した方のアクターをユースケースと結びつけることが望ましい。


問題2
回答:B

クラスがインタフェースを実現する場合は、インタフェースの持つすべてのオペレーションをサポートしなければならない。


問題3
回答:AとC

<<use>>という依存関係のステレオタイプは、実装やオペレーションの実行において、他のエレメントが必要であることを示している。一方で<<permit>>というステレオタイプは、非公開要素に対してもアクセス可能であることを示してる。


問題4
回答:BとC

トレースとは、シーケンス図におけるメッセージの受信/送信の順番のことで、1つのシーケンス図は複数のトレースを持つ可能性がある。シーケンス図で受信/送信の順番が明確になるのは、同じ生存線上での関係のみである。つまり、この図ではメッセージpの送信とメッセージqの送信は、どちらが先かを決定することはできない。同様に、メッセージqの送信とメッセージpの受信の順番についても、明確に決定することはできない。


企画:アットマーク・アイティ 人財局
制作:アットマーク・アイティ 編集局
掲載内容有効期限:2004年5月31日

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ファンダメンタル試験を特別価格で受験できる
2月25日(水)に開催される ボーランド主催「Borland Conference Tokyo」会場に、OMG認定UML 技術者資格試験 (OCUP)の特設試験会場が登場。この1日に限り、ファンダメンタル試験が通常3万円のところ、 2万円で受験できます。ぜひ、この機会をご利用
ください。詳しくはOCUPのサイトまで。

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