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ORACLE MASTERから見えるエンジニアのスキルパス

ORACLE MASTERのPlatinum取得者は国内でわずか18名
取得者に聞く! 最高峰Platinumへの過酷な道のり

ORACLE MASTERの最高峰、ORACLE MASTER Platinum Oracle9i Databaseの試験が開始されたのは2003年12月から。それから2004年8月現在までに、Platinumの取得者は日本でまだ18名しかいない。Platinum試験はどれほど難解なのだろうか。そこで取得者の1人に、その体験談を聞くとともに学習方法を伺った。それは、想像を絶する過酷な試験であり、エンジニアの総合的な実践力を問う内容だということを認識する内容だった。

短期間にGoldとPlatinumに連続合格

2003年10月にワールドワイドの資格体系と歩調を合わせて進化を遂げたORACLE MASTER。日本オラクルによればその資格取得者数は2004年2月には11万名を突破した。認定資格の最高位が日本では「ORACLE MASTER Platinum Oracle9i Database」(以下、Platinum)であり、世界的には「OCM(Oracle Certified Master)」に当たる。しかし、Platinum資格者は日本で18名、全世界でも100名弱しかいない(2004年8月現在)。単純に計算してもPlatinum資格取得者は全体の0.1%ほどの希少な存在である。

表1 ORACLE MASTER Platinumの受験条件および試験概要
受験条件
ORACLE MASTER Gold Oracle9i Database(2003年10月からの資格)、または「ORACLE MASTER Platinum9i」(2003年9月までの資格)資格保有者を対象とし、次に指定された集合研修コースのうち2コースを履修済みであることが条件。

 ・Oracle9i PL/SQLプログラム開発
 ・Oracle9i SQLチューニング ワークショップ
 ・Oracle9i データベース管理ツール:Oracle Enterprise Manager
 ・Linux版Oracle9iデータベース構築と運用
 ・Oracle9iデータベース:セキュリティ
 ・SQLチューニング ワークショップ
 ・ORACLE MASTER 新Platinum特訓コース
  (特訓コースは、2004年9月現在、日本オラクルパートナーのみ受講できる)

▼@IT読者限定で、上記研修コースが優待価格で受講できます。
   詳しくは
ページの最後をご覧ください。
試験日程
2日間(9時30分〜17時30分、途中1時間の昼休みあり)
合格基準
正解率70%以上
試験環境
試験監督のガイダンスは日本語。出題文、参照用のオンラインマニュアルなどは英語
試験内容
(1)パフォーマンス最適化のための論理的・物理的な設定
(2)多様な接続形態のためのネットワーク環境設定
(3)インストール、設定および管理ツール、チューニング・ツール、診断ツールの使用
(4)Oracle9iの新機能によるアドバンスト・レプリケーション、パーティショニング パラレル運用
(5)サービス維持下でのツールによるデータ・バックアップ
(6)ツールによる障害シナリオからのリストアと完全リカバリ
(7)障害復旧、分析、およびデータベースとインスタンスのパフォーマンス向上のための問題解決

株式会社 シーズ・ラボ
ITソリューション部
エデュケーション・コンサルタント
蓑島 好昭氏

銀行系システム部門で汎用機によるシステム開発経験後、1995年(株)シーズ・ラボに転籍し、オラクルデータベースを使った開発業務を経験。その後オラクル認定インストラクタとして主にデータベース設計・管理系のコースを担当

 その18名の1人であるシーズ・ラボの蓑島好昭氏は、オラクル認定インストラクターである。もともと金融系システム開発に従事していたエンジニアとして開発業務でOracleを扱い、その後研修講師を務めるようになった。つまり蓑島氏はOracleを利用した開発経験を持つ開発実務を知り尽くした講師だ。

 蓑島氏が所属するシーズ・ラボでは、講師のほか開発者にもORACLE MASTER資格保有者が数多くいる。蓑島氏はその先陣を切るようにORACLE MASTERを積極的に取得してきた。2002年8月にはORACLE MSATER 8i Platinum(現Goldに相当)を取得。9i対応のPlatinumへの挑戦は会社の方針がきっかけで一念発起した。ある時「わが社に9iのPlatinum取得者を」という目標が設定され、それに蓑島氏が手を挙げたのだ。

 目標を定めてからは急展開だった。蓑島氏は当時まだORACLE MSATER 8i Platinumしか取得していなかったため、Platinum 9iを取得するため、まずGold 9iへの移行試験に合格する必要があった。それを蓑島氏は2カ月足らずのうちにGold 9iだけではなく、Platinum 9iにも合格したのだ(表2)。

表2 蓑島氏のORACLE MASTER取得実績
取得年月
取得資格
1997年8月
ORACLE MSATER 8i Gold (現Silver)
2002年8月
ORACLE MSATER 8i Platinum (現Gold)
2004年5月
ORACLE MSATER Gold Oracle 9i Database
2004年7月
ORACLE MSATER Platinum Oracle 9i Database

 「Gold 9iは落ちるはずがないと思っていました。普段から講習で教えている内容でしたから」と蓑島氏は余裕を見せる。確かにGold 9iは難なく取得したかもしれない。だが熟練の蓑島氏ですら、Platinum 9i取得までの道は決して容易ではなかった、という。

休憩から戻ると障害が待っている

 想像に難くないとおり、Platinum試験は過酷さを極める。試験は朝9時半に始まり、途中で休憩を挟むが、夕方17時30分までびっしりと実技試験が続く。しかも2日間だ。その間、ひたすら試験問題と格闘しなくてはならない。体力的にも精神的にもかなりきつい。

 試験では試験官から説明を受けると、後はひたすら課題に対処する。問題量が多く、さらに最終的な課題を達成するまでの準備作業も問題に含まれることがある。途中で間違えると、その後の問題すべてを連鎖的に間違える危険もある。

 また試験問題が英語だという言語の壁もある。蓑島氏は英語にはさほど苦労しなかったそうだが、途中で「実行」と「作成」を誤読するというミスを犯したそうだ。普段から英語の技術文献に慣れていれば読解力は十分だそうだが、それでも英語で困難さが増すことになるのは間違いない。受験者の中にはインターネットで英文の技術書を取り寄せ、試験対策に活用し、合格した人もいるという。

 試験内容は高度なため、終始高い集中力を持続しなくてはならない。休憩で一息ついても、試練が次から次へと受験者を襲う。「休憩から帰ってくると、障害が発生していることがあります。次の課題に取り掛かる前に、まずその障害を回復しなければならないのです」と蓑島氏は語る。

 承知している方も多いだろうが、Platinum試験ではランダムに障害が発生することになっている。突然何らかの障害が発生し、そこから復旧することも課題に含まれる。「でも、じきに慣れました」と蓑島氏は平然という。そうした障害でもパニックに陥らないようなタフな精神力も必要なのだ。

 冷静沈着そうな蓑島氏でも、実は「途中で胃が痛くなりそうでした」と語る。試験が終了するころにはほとほと疲れ切ったそうだ。「2日目間の試験が終了して直ぐに札幌に戻りました。空港でビールを飲んだところ、胃に痛くしみるほどでした。よほど精神的にきつかったのでしょうね」という蓑島氏の話を聞くと、そのし烈さが伝わってくる。

Platinumは実践力が問われる

 合格通知が届いたのは、受験してから1カ月ほど過ぎたころ。テスティングセンターでの試験と違い、Platinum試験は、実技試験のため合否結果はすぐに出ない。「3〜4週間で合否連絡がくると思っていましたが、なかなか連絡がないので落ちたかと半ば諦めていました。合格通知を見た瞬間は喜びよりも『落ちなくてよかった』と安どの気持ちが強かった」と語る。

 普段からOracle技術を教える講師として「落ちるわけにはいかない」というプレッシャーがあったのだろう。また「これで落ちたら次回は挑戦しない」とも覚悟を決めていた。「難しい試験ほど、1回で必ず受かるように」と決意し、完ぺきに準備するのが蓑島氏のポリシーだ。そうした決死の覚悟で臨むほどの心意気がないと、こうした難関試験に立ち向かえないのかもしれない。

 あらためてGoldとPlatinumの違いである実践力を考えてみる。Gold以前で問われるのは知識であり、基本的に正答は1つとなる。だが、Platinumは違う。「細部の知識を問うような試験はGoldまでです。Platinum試験ではどれだけ試験中に『あがき』ができるかではないかと、後から思いました」と蓑島氏は語る。正答が分からなくても、自分で思いつく限りあらゆる手法を駆使して課題の解決に近づける。Platinum試験は課題や障害をいかに克服するか、その過程や達成度が合格のためのポイントとなるのだろう。

試験対策は特訓コースからICレコーダーまで

 蓑島氏は合格の秘けつとして「まずは触るように」とアドバイスする。実践力を鍛えるにはやはり実践することだ。蓑島氏はPlatinum試験前には講師を担当する研修を減らしてもらうなど、試験対策により多くの時間を割けるようにした。準備に注力したのは試験前の約2カ月、おおよそ1日4時間ほどを試験対策に費やした。

 試験対策として最も役に立ったと蓑島氏が語るのがORACLE MASTER 新Platinum特訓コース(日本オラクルがパートナー向けに提供している特別コース。今後一般向けにも開催される予定)だ。Platinum試験対策に特化したコースで、今年4月末に受講した。「やはり講習は人から直接解説を聞けるのが最大のメリットです」と蓑島氏は語る。

 特訓コースを受講した後は試験と同じような環境を構築し、特訓コースで学んだことを繰り返し実践したという。時には自分で課題を組み合わせるなど、応用問題を自分で作っては自習を重ねてきた。Platinum試験はLinux環境で実施される。そのため、Linuxの経験のない受験者は事前にオペレーションに慣れておく必要がある。受験者の中には自分のPCにLinux環境を構築し、オペレーションに関する知識を得た人もいるそうだ。

 さらに蓑島氏は「試験ではマニュアルも参照することができますが、時間に余裕はありません。ですから、マニュアルを見なくてもあらゆる操作ができるようにしておくことが必須です」とアドバイスする。

 ほかにもユニークな蓑島流の試験対策がある。「私はいまだに単語帳を使うのです」と照れながら蓑島氏は言う。覚えなくてはならないコマンドや用語などは単語帳に書き、通勤時間に見ながら暗記するという。古典的だが、効果がある。さらにICレコーダーが特に強力な武器になったという。「覚えたことを人に説明するように語り、それを録音します。録音したものを今度は通勤時間などに再び聞きます。聞きながらまた考える。この繰り返しは理解を深めるのにとても効果があります」。

講師よりも運用管理者に有利?

 そうした試験対策の効率のよさ、「落ちるわけにはいかない」という自負は、やはりOracle認定講師ならではだろう。

 では、講師でなければPlatinumへの挑戦は無謀なのか。その点を蓑島氏に尋ねると、「私は講師なので、データベースを触るにしても訓練の一環であることが多いです。しかし、実際に普段からデータベースを保守管理する運用管理者は、作業の慎重さが違うと感じます」と話す。

 つまり、表舞台で動いているビジネスが念頭にあると、障害を未然に防ぐための入念な確認や、徹底的な安全策を講じるため、完ぺき性が違うというのだ。この点は必ず障害が発生するというPlatinum試験特有の実技問題にはメリットだろう。しかし「普段の運用ではPlatinum試験ほどバラエティに富む障害が発生するとは思いませんが」と蓑島氏は笑う。

 普段から高度なデータベース運用で腕を鍛え、障害を克服する実践力を極めている方であれば、Platinum試験は格好の腕の見せ所かもしれない。

振り返れば「大きな山を越えた」

 合格した後のメリットはどうか。露骨だが報奨金はもらえたかと聞くと、蓑島氏の場合は報奨金はなし、ただしコースや試験費用は会社側が負担したという。企業における技術者全体のレベルアップを目的とした育成プログラムは年々充実してきている。Platinumを含めた資格取得に対する意識も大きく変わってきているようだ。

 蓑島氏が得たものは、金銭的なものよりもスキルの深さだ。蓑島氏は「例えばデータ・ガードなど、講習で担当していない分野でも詳しく理解できました。また、それぞれの技術要素の連携や組み合わせなど、有機的に理解し実践力を強化することができたと思います。振り返れば大きな山を越えたという感覚です」と試験対策の過程で得られたスキルの重要性を語る。

 Platinumという山の登頂を終え、蓑島氏は次に何を望むのだろうか。「勉強は今後も続けていきます。新しい試験が出ればまた挑戦するかもしれません。現在は講師を務めていますが、将来的にはコンサルティング的な業務をしたいと考えています。Platinumホルダーであること、試験対策を通じて得たスキル、さらに精神力(笑)は、必ずやコンサルティング業務にも役立つでしょう」と語る。蓑島氏のこれからの活躍を期待したい。

Platinum受験者急増中

 Platinum受験者は、最近増加傾向にあります。具体的な受験者数は公表できませんが、試験回数を月1回から2回へ増やし、1回あたりの受験者数も増やそうと考えています。

 受験者で多いのは大手システムインテグレータ(SI)のエンジニアの方です。大手SIが競ってPlatinum資格保有者を増やそうとしているようです。システム開発案件を受注するにあたっての競争力強化や信頼性向上のためだと思われます。また、社内でPlatinum取得者が出ると、周囲の学習意欲も高まるというように、同僚のエンジニアによい刺激を与える場合もあるようです。

(日本オラクル オラクルマスター担当者談)

企画:アットマーク・アイティ人財局
制作:アットマーク・アイティ編集局
掲載内容有効期限:2004年10月12日

■Platinum取得者事例
日本オラクルがPlatinum取得者とその上司に独自取材したインタビュー記事。2004年9月現在、5社の事例が掲載されている。

■Platinum試験のための
リンク集
実技試験の概要
ORACLE MASTER Platinum Oracle9i Databaseの実施概要。
試験範囲と重点出題ポイント
出題ポイントが個条書きで列挙されている 。
受験の前提条件
受験の前提となる2条件についての説明されている。
必須の最低スキル
前提条件とは別に、必須のスキルが紹介されている。
実技試験の環境
マシン環境や試験会場での禁止事項の説明。
実技試験の準備
受験に向けた最善の準備方法が紹介されている。
採点と合否連絡
採点基準と合否連絡について。
試験開催スケジュール
常に最新の開催スケジュールが掲載されている。このページから受験の申し込みができる。

■ORACLE MASTERを
理解するためのリンク集
Oracle University
Oracle Universityのトップページ。新着情報は常にここに掲載される。
ORALCE MASTERページ
日本オラクルのWebサイトにあるORALCE MASTERのページ。
Oracle Universityオフィシャルガイド
「Oracle Database10g」に対応したオラクル研修サービスの総合カタログ。定期開催研修、資格制度が分かりやすく紹介されている。PDF版がダウンロードできるほか、希望者へは郵送してくれる。
ORALCE MASTER取得フロー
ORALCE MASTERを取得するための手続きを5ステップで紹介。
ORALCE MASTER Oracle Database 10g資格紹介
4つの資格についての解説
10g資格へのアップグレード
ORACLE MASTER Oracle 9i Database資格者が、10g資格へアップグレードするために必要な試験を図解で解説。
コースカタログ
Oracle Universityが定期開催している研修コースの一覧。コース名をクリックすると詳細が表示される。

■ORACLE 10g関連の
ニュース (@ITNews)
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