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企業システムは高度化すると同時に複雑化している。その一方でシステムの運用管理は省力化が求められる結果、1人当たりの技術者が担当するシステムは増える一方だ。そうした中で、現在の企業システムに必要不可欠な運用管理は、どのように学べばいいのか。体系的に全体を把握して学習するには? そこで運用管理ソフトウェアとして誰もが知っている日立製作所の「JP1」を例にしつつ、運用管理のスキルを確実に学ぶ方法をお教えしよう。

業務の継続性を目標に

 システムが止まれば業務も止まる。システムの停止は企業のビジネスに大きなダメージを与え、ときにそれが企業の致命傷になることさえある。そのため、システムを支える運用管理は、ビジネスには欠かすことができない基盤と化しているのだ。

 日立製作所の統合システム運用管理JP1は、ビジネスの観点からシステム全体を統合して運用管理する。日々のビジネスを航海に例えるなら、JP1は船の進行状況を把握する羅針盤となる。JP1の技術教育全般を統括する日立製作所 ソフトウェア事業部 システム管理ソフト設計部主任技師の後藤邦仁氏はJP1について次のように語る。

 「JP1は業務の中心として何かをするものではありません。JP1はシステムの安定運用を支えることで、お客さまの本来業務をいかにうまく進めていくかにフォーカスしています。トラブルが起きないように、また、万が一トラブルが起きてもすぐ解決できるようにしているものです。大事なのは業務の継続性です。JP1は運用管理をしていくうえで発生する多様なトラブルに対処するための多大な労力を軽減することを目標にした製品です」

 JP1は、基本的に4つの分野からシステム運用管理をサポートしてくれる。1つ目がモニタリングで、統合管理とアベイラビリティ管理によりシステム全体の稼働管理を行う。2つ目がオートメーションで、ジョブ管理がこれに当たる。3つ目がITコンプライアンスで、資産・配布管理やセキュリティ管理などである。そして4つ目がファウンデーションで、ネットワーク、ストレージ、サーバなどを管理し、システム全体の基盤を支える(図1)。

図1 JP1は4つの分野からシステム運用管理をサポートする

 JP1は、システム運用管理製品の中では、高い知名度と導入実績を誇る。2005年3月に@ITが実施した読者調査によれば、導入済みの運用管理ツールとして最も回答数が多かったのがJP1だった(図2)。

図2 導入済みの運用管理ツールとしては、最も回答数が多かったJP1

運用管理には高度なスキルが必要

 JP1は1994年の発売以来、顧客のニーズを吸収しながら機能を拡充してきた。これは運用管理しなければならない範囲の広がりとともに、JP1の機能が拡大してきたことを意味する。

 このように運用管理の適用範囲は広がる一方だが、運用管理に携わる技術者には、地味なイメージが付きまとう。しかし、実際の運用管理は奥が深く、高度なスキルが求められるものだ。

 だが企業も、運用管理がいかに重要かを忘れがちだ。後藤氏は、「何事も起きていない平穏な状況が運用管理でいかに大切かということが、意外と多くの企業では理解されていないようです。腕のいい運用管理技術者は問題の原因となりそうな部分に早めに気付いて対処することができます。しかし部外者から見ると、終始一貫して何も起きていないように見えてしまい、優秀な運用管理技術者の功績は目立ちにくいのです」と語る。

 確かに大きなトラブルを収拾した技術者がいれば、その人は高く評価されるだろう。一方大きなトラブルを未然に防いだ技術者がいても、その人の功績が目立つことはない。だがトラブルは起きてしまった時点ですでに問題だ。大きなトラブルに至らないように運用を続けることができる運用管理者も評価されるべきだが、なかなかそうはいかない。

 トラブルを未然に防ぐ運用管理者は企業には重要な存在だ。どうしたら安定した運用ができる手際の良い運用管理技術者になれるだろうか。そのための広範で高度なスキルはどう学んでいけば習得できるか。その答えの1つがJP1である。JP1は包括的な運用管理を実現する製品なので、JP1の機能を把握し使いこなすスキルがあれば、おのずとトラブル知らずの運用管理者になれ、システムの安定稼働も期待できる。

運用管理のイロハから説く

 「JP1を使用される前に、JP1の講習を受講するお客さまもいらっしゃいます」と述べるのは、日立製作所 ソフトウェア事業部 計画部主任技師の中村啓江氏だ。これは製品概要を把握するためかと思えるが、それだけではない。

 後藤氏が「JP1の講習では、企業システム運用管理そのものを理解いただけるような内容になっているのです」と講習の目的の一面を明かす。受講することで、そもそも運用管理とは何か、何をすべきか、といった基本的なことに触れ、運用管理の重要性が理解できるようになっている。そのため、運用管理初心者の導入講習として役立つのだ。

 では、すでに運用管理ツールを利用している技術者に、こうした講習は役に立つのだろうか。そういう人でも、あらためてJP1の機能を学ぶと、新しい発見に感動することも多いという。全体を把握する重要性、より効率的に問題解決をするための機能、または問題となりそうな部分を早期発見するためのポイントを知ることで、「これまで知らなくて損していた」とこぼす受講者もいる、という。

 製品の機能を包括的に知ることで、運用管理の能力も上がる。運用管理の世界では、自分の守備範囲以外についてはよく把握していないことも多い。そこで役立つのがJP1を学ぶことだ。JP1が実装している機能を全般的に学ぶことで「運用管理ですべきこと」、つまり運用管理の全体像を把握することができる。こうした幅広い知識はすぐに役立つとは限らないが、大規模かつ複雑なトラブルが発生したときの早期解決に効果を発揮するはずだ。

講習はあくまでも技術支援

 JP1の講習は、そのレベルや立場によって分類されている。一般向け講習では主に2つのレベルがある。初級者向けのJP1エンジニアコースと、実践者向けのJP1プロフェッショナルコースだ。

 JP1エンジニアコースは、JP1の導入を検討する、またはJP1を使った運用管理に携わる人を対象にしている。さらにJP1プロフェッショナルコースは機能別にコースが組まれていて、統合管理、アベイラビリティ管理、ジョブ管理、資産・配布管理、セキュリティ管理、ネットワーク管理、ストレージ管理などがある(表1)。なおパートナー向けには営業担当者向けやソリューションエンジニア向けの講習が用意されている。

認定資格名
認定スキル
JP1認定エンジニア JP1全般を理解しており、運用に必要なテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
JP1認定プロフェッショナル JP1の各カテゴリ製品の導入とシステム構築ができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを、カテゴリごとに認定
JP1認定コンサルタント JP1各カテゴリ製品について、最適なコンサルテーションができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを、カテゴリごとに認定
JP1認定シニアコンサルタント JP1製品について、トータルソリューションを実現するためのコンサルテーションができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
JP1認定セールスコーディネーター お客さまに対し最適なJP1の提案、見積もりができるセールススキルを習得したエンジニアを認定
表1 JP1の認定資格の一覧と認定するスキルの基準

 講習はすべて日立インフォメーションアカデミーが実施している。これは講習のクオリティを維持するためであり、また質問に迅速に回答するためでもある。講習で質問や要望が出れば講師と開発担当とで連携を密にしてすぐに回答できるような態勢を整えているのだ。講習で解説する、受講者から質問や要望を受け取る、講師と開発担当が一体となって対応する、次のバージョンで機能を実装する、これらが一連の流れとなっている。つまりは講習でさえ、製品戦略にきちんと組み込まれているといえよう。

 さらに気概が感じられるのは、日立製作所の技術研修に対する位置付けだ。技術研修は、主要なビジネスの1分野として位置付けるベンダが多い。そのため技術研修はより多くの収益を上げるための仕組みづくりや戦略に向かって進むことが多い。だが日立製作所はその方向へ進むことを拒んでいる。それは、「技術研修はビジネスというより、JP1をお使いのお客さまに対する技術支援と考えています」という理由のためだ(後藤氏)。

運用管理スキルの指標として

 資格制度も「資格のための資格ではありません」と中村氏はいい切る。「試験は講習で伝えた内容がきちんと把握できているかを確認するためのものです。本番の運用が大事であり、JP1で効率的に確実に運用してもらうことを重要視しています」(中村氏)。

 認定資格は講習と同様の体系になっている。すなわち、現場の技術者向けにはエンジニア、プロフェッショナル、コンサルタントだ。ほかの日立製作所のミドルウェア製品、アプリケーション開発/実行基盤「Cosminexus(コズミネクサス)」や、データベース「HiRDB(ハイアールディービー)」でも、同様の体系で講習や認定制度が組まれている(表2、表3)。

認定資格名
認定スキル
Cosminexus認定プラットフォームエンジニア Cosminexusを使用したインストールや環境構築ができるテクニカルスキルを習得しているエンジニアを認定
Cosminexus認定アプリケーションエンジニア Cosminexusを使用したアプリケーション設計や開発・デバッグができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
Cosminexus認定プラットフォームプロフェッショナル Cosminexusの性能/信頼性設計や運用設計ができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
Cosminexus認定アプリケーションプロフェッショナル Cosminexusを使用したアプリケーション方式設計やアーキテクチャ設計ができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
Cosminexus認定コンサルタント Cosminexusを使用してシステム構築する場合に必要な構成モデルの作成や、システム見積もりができるテクニカルスキルを習得したエンジニアを認定
Cosminexus認定セールスコーディネーター お客さまに対し最適なCosminexusの提案、見積もりができるセールススキルを習得したエンジニアを認定
表2 Cosminexus認定資格の一覧と認定するスキルの基準

認定資格名
認定スキル
HiRDB認定プラットフォームエンジニア インストールや環境構築、定期的な運用(バックアップ/リカバリ、データロード/アンロード、再編成、リソース管理)など、データベース管理者として必要な知識を習得しているエンジニアを認定
HiRDB認定プラットフォームプロフェッショナル HiRDBを効率的に運用するためのパフォーマンス診断や、それに基づくチューニングに関する知識、障害状況に応じた対策を行うための知識、また、HiRDBパラレルサーバの知識を習得しているエンジニアを認定
HiRDB認定アプリケーションエンジニア HiRDBにアクセスする業務アプリケーションを開発するための知識を習得しているエンジニアを認定
HiRDB認定アプリケーションプロフェッショナル HiRDBに適した処理効率のよい業務アプリケーションを開発するための知識や、他社データベースからのアプリケーション移行のポイントに関する知識を習得しているエンジニアを認定
HiRDB認定セールスコーディネーター お客さまに対し最適なHiRDBの提案、見積もりができるセールススキルを習得しているエンジニアを認定
表3 HiRDB認定資格の一覧と認定するスキルの基準

 どんなに言葉を尽くしても運用管理の奥深さは簡単に語り尽くせるものではない。後藤氏はこう語る。「開発者にはアプリケーションという作品があるため、そこで開発者の技術を推し量ることができます。一方、運用管理者は何もトラブルを起こさないことが目的なので、技術力を推し量るのは難しいといえます。また開発者の認定資格は多くありますが、運用管理技術者の認定資格はそう多くありません。そうした中、JP1の講習で運用管理者に無事に運用するためのノウハウを学んでもらい、JP1の資格制度を運用管理スキルの指標としていただければと思っています」

 どうだろうか。まずはJP1を題材に、運用管理を体系的に学んでみないか。今後のスキル、キャリアの幅を広げるためにも一度考えてもいいのではないだろうか。

■オープンミドルウェア認定資格制度に関連するリンク集
 ・認定資格制度&研修のインデックス

 ・オープンミドルウェア認定資格制度

 ・JP1認定資格制度

 ・Cosminexus認定資格制度

 ・HiRDB認定資格制度

提供:株式会社日立製作所 ソフトウェア事業部
企画:アイティメディア株式会社営業本部
制作:@IT編集部
掲載内容有効期限:2006年9月30日

■日立製作所 オープンミドルウェア認定資格制度に関連するリンク集
 ・認定資格制度&研修のインデックス

 ・オープンミドルウェア認定資格制度

 ・JP1認定資格制度

 ・Cosminexus認定資格制度

 ・HiRDB認定資格制度

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■JP1認定資格試験の概要
●試験概要(受験料は消費税込み)
試験名
試験内容
認定基準 試験時間 受験料
JP1認定エンジニア 認定試験問題20問 70%以上正解
40分
\5250
JP1認定プロフェッショナル 認定試験問題30問 70%以上正解
60分
\8400
JP1認定コンサルタント 認定試験問題30問 70%以上正解
60分
\10500
JP1認定シニアコンサルタント 資格審査申請 JP1認定コンサルタント資格を3カテゴリ以上取得していること
JP1認定セールスコーディネーター 認定試験問題10問 80%以上正解
30分
\5250

※JP1認定プロフェッショナル
  以下の7カテゴリ別の認定となります。
 - 統合管理
 - アベイラビリティ管理
 - ジョブ管理
 - 資産・配布管理
 - セキュリティ管理−情報漏えい防止−
 - ネットワーク管理
 - ストレージ管理−バックアップ管理−

※JP1認定コンサルタント
  以下の4カテゴリ別の認定となります。
 - ジョブ管理
 - 資産・配布管理
 - セキュリティ管理−情報漏えい防止−
 - ネットワーク管理

●試験会場
品川、大阪、名古屋の3箇所

●試験日程
試験会場によって異なります。詳しくはJP1認定資格試験のWebページを参照ください。

●お申し込み方法
JP1認定資格試験のWebページから所定の申込書をダウンロードして電子メールにてお申し込みください。

※日立オープンミドルウェア認定資格試験は、2006年9月下旬より順次、アールプロメトリック社の試験会場で受験できます。JP1認定資格試験は、10月下旬からを予定しています。