2007年4月にサイバー大学が開学した。授業は完全にeラーニングだが、講義の出席率は約9割を誇るという。実際には、どのような学生や先生がいて、どのように学んでいるのか。そして一般の大学とどう違うのか。eラーニングで、どこまで学習ができるのかを追った。 |
■社会人大学への興味と現実
社会で生きていくには知識やスキルが必要だ。学生時代には学べなかったこと、または学生時代には興味がなかったが社会人になって興味を持ち、「あらためて大学で学びたい」と思うときもあるだろう。
とはいえ、学生を卒業して社会人となってしまうと大学は遠い。@IT自分戦略研究所とJOB@ITが2006年11月に実施した読者調査からは、その希望と現実が浮かび上がってきた。「あなたは社会人になってから、国内外の大学・大学院に入学したことがありますか?」という問いに対して、「入学したことはないが、興味はある」は66.6%、国内外合わせて社会人大学へ「入学したことがある」は6.6%。実に3人に2人が社会人大学への入学に興味を示しているものの、実際に大学へ入学したのは全体の1割にも満たない(図1)。
図1 @IT自分戦略研究所とJOB@ITが2006年11月に行った読者調査の結果(N=912)。社会人になってから、国内外の大学・大学院に入学したことがあるかという質問に対して、ある人は国内外を合わせて6.6%に過ぎない。ただ、66.6%の人は「興味がある」と回答。 |
やはり日々業務に追われる社会人となると、短期の講習受講ならまだしも大学に入学するとなるとそう簡単ではない。入学金はどこも高額だし、入学金が用意できたとしても休職すれば収入が絶えることになり、生活が成り立たなくなるという不安もある。入学試験という試練が待ちかまえていることもある。
こうした社会人が学習するうえでの困難さを覆す大学がある。eラーニングで受講できるサイバー大学だ。2007年4月に開学したばかりで何もかもが「新しい」。
■社会人で働きながら「学士資格」が取得できる
サイバー大学では誰もがインターネットを通じて大学にアクセスする。その名前からはバーチャルな雰囲気がある。それは正しくもあり、間違いでもある。キャンパスは福岡県に実在するが、実際にそこに足を運ぶ必要はない。それぞれ自分のパソコンを起動してログインすれば、そこがキャンパスだ。期間内に講義を閲覧すれば「出席」となり、講義に関する質問があれば掲示板に書き込むことができる。
千葉氏(仮名・33歳)は独学でITのことを学習してきたため、「一度基礎から体系立てて学びたいと思っていた」と語る。そんなときにネット広告でサイバー大学と出合ったという |
すべてパソコンとインターネットで完結するバーチャルな世界のようでもあるが、れっきとした大学だ。卒業に必要な単位をそろえれば正式な学士資格を得ることができる。また当然ながら学生も先生もリアルな人間であり、リアルタイムで生き生きと交流している。
今春4月にサイバー大学に入学した学生の1人、千葉氏(仮名)は、ITエンジニア歴4年の33歳。高校卒業後はITとまったく無縁の仕事に就いたが、思うところがあってPC関係の勉強はしていた。後に初級システムアドミニストレータやMOUS(現Microsoft Office Specialist)の資格を取得し、それがきっかけで転職、ITエンジニアへの転身を果たした。
サイバー大学を見つけるまでについて、千葉氏は次のように語る。
「いまの仕事に就くまで、ITの業務は未経験。知識は独学によるもので、一度基礎から体系立てて学んでみたいと思っていました。そんなとき、ネット広告でサイバー大学を目にしたのです」
資格や業務に最低限必要な知識だけではなく、ITについて基礎からじっくりと学びたいという希望は常にあったようだ。だが大学に入学するとなると、時間と資金が必要となる。休職してまで大学に通うことはできない。だがサイバー大学ならeラーニングなので、終業後や休日を利用して自宅で学ぶことができる。それに必要単位を修得すれば学士資格を取得できるのも千葉氏には魅力だった。なお、学士資格保有者のサイバー大学への編入学は現在検討中だという。
■講義は1週間のサイクルで、自由な時間に
サイバー大学の学生層は実に幅広い。18歳から74歳まで、中には親子一緒に入学した人もいる。福岡のヤフードームで開催した入学式には、子どもを連れた学生もちらほらいたそうだ。学歴も高卒から大学院卒までいる。皆、学習意欲に満ちたバイタリティある学生ばかりだ。
入学後は学生サポートセンターのスタッフと相談しながら、それぞれが授業を選択する。大学の入学手続サイトには講義ごとに説明(シラバス)やサンプル授業などがあり、そこから自分に必要な講義を自分のペースに合わせて選ぶ。講義はすべてあらかじめ収録された動画で提供されるが、一般の大学のように週に1度のペースで授業があるように設定されており、1週間ごとに新しい講義が受講可能となる。講義が受講可能となってから2週間以内に動画を閲覧すれば「出席」と判定される。それ以降に受講すると「遅刻」扱いとなる。
一般の大学と違うのは、キャンパスに出向く必要がないことだ。時間を気にせず、天気や交通機関に影響されることも、はしかで休講なんてこともない。また1回分の講義は基本的に4つのパートに分割されて提供されているため、都合に合わせて1回の講義を部分的に受講することも可能だ。千葉氏は「自宅で受講しているので、服装に気を使うことなく、食事をしながらなど、自由な姿勢で自由な時間に受講できます。疲れたら講義の動画を一時停止して、気分転換に軽くストレッチしたりできるのもいいです」と話す。
■充実したサポート
どの授業を選ぶかは、受講する側の学生にとってはとても大きな問題であり、不安となる。ましてや入学当初は知っている人も少なく、戸惑うことも多いだろう。そんなときこそ、サポートセンターを遠慮なく頼るといい。電話やeメールで、履修の計画を立てる上で困っていることを伝えると、必要に応じて履修モデルなどを提案してくれる。これで1人きりという孤独感からも解放される。そのほかにも、授業に対する個別の質問への対応、進路相談、アドバイスなども行ってくれる。
例えば千葉氏の場合、大学のモデルカリキュラムを参考に13科目(21単位)選択したのだが、後から困ってしまった。
「どのくらい選択すればいいのか見当がつかず、モデルとして示されているカリキュラム数を参考に13科目(21単位)選択しました。しかし仕事で残業、休日出勤が増えると、すぐに受講とレポートに手が回らなくなり、多すぎたかなと思っています」
サイバー大学では授業料は履修する講義の単位数に比例して払うようになっている。1単位につき2万1000円(税込み)だ。千葉氏は卒業を目指しているので、「1単位落とすと2万1000円が無駄となってしまう」と恐れていた。だが、それは違った。「万が一、その単位を今期修得できなかったとしても、次学期以降1回に限り再度授業料を払わず受講が可能です」と学生サポートセンターが教えてくれた。
「当初は不安で落ち込んでいましたが、それを聞いてとても安心しました」
ITエンジニアであればあまり利用することはないかもしれないが、大学のWebサイトにアクセスできない、動作や画面の動きが変だといったようなことでもシステムサポートセンターが対応してくれる。このように、サポートセンターは学生の強い味方になるのだ。
■仲間との情報交換が励みに
今年開学したため、サイバー大学にはまだ先輩がいない。メンターと呼ばれる授業内容についてサポートしてくれるスタッフはいるが、素朴な問題は同級生の間で支え合うこともあるという。千葉氏のように、仕事と勉強の両立で悩む学生も多い。
「似たような境遇で頑張っている仲間と、オンラインで情報共有や相談できるのはとても心強いです。すごく励みになっています」
いまではマイペースで学習を続けている千葉氏。基本的に講義は週末にまとめて受講している。レポートは通勤中に構想を練りながらスマートフォンにメモし、空いた時間に仕上げるそうだ。
最後に、千葉氏に将来のことを尋ねると、「いまのところ明確なビジョンはありませんが、いまは5〜6年後の卒業を目指して頑張っています。大学卒が自分にとって1つの自信にもなると思います。今後は会社がPマークを取得したこともあり、セキュリティの専門知識を、また自分の将来のために経営論を本格的に勉強していきたいと考えています」という。
■効率的かつ有意義に授業が進む
サイバー大学IT総合学部教授 前川徹氏 |
教える側は、eラーニングによる講義をどう感じているのだろうか。サイバー大学IT総合学部教授 前川徹氏は指摘する。録画だと学生は何度も繰り返し聞くことができるので、とりあえず見ておこうという意識ではないかと思うのだが、そうではないというのだ。実際は、皆時間をやりくりして学習しているためか、逆に動画の授業に非常に集中するらしいのだ。
「学生は目ざといですよ。先日は講義で『半数を上回る』というべきところを『半数以上』というと、『先生、“半数以上”なら半数も含まれてしまいますよね?』と指摘されてしまいました。講義内容に言い間違いがあれば、後で掲示板で訂正することができるのも便利なところです」と前川教授。
一般の大学だと講義が終わると学生はクモの子を散らすように帰ってしまい、「質問などしない」と前川教授は指摘する。しかし、サイバー大学なら1単位ごとにどれだけ支払っているかが明確なので、意気込みが違うのかもしれない。実際、サイバー大学では講義の出席率はおおよそ90%を誇るそうだ。一般の大学であれば驚異的な出席率である。質問も活発で効率的だという。
■サイバー大学で広がる人脈と将来
サイバー大学では学生が質問用の掲示板に投稿すれば、先生やメンターが基本的に24時間以内で回答する仕組みとなっている。前川教授はこう話す。「1回の講義ごとにQ&A掲示板があるので、ほかの回と重複したような質問はありません。それどころか質問の答えに対して質問が発生したりして、とても有意義なディスカッションとなることもあります。将来は『Wikipedia』のように共同作業で1つのプロジェクトをまとめることなどできるといいなと思っています」
先日は前川教授が外部のセミナーで講演することを交流の掲示板で宣伝しておいたそうだ。すると、掲示板を読んだサイバー大学の学生何人かが実際に聴講しに来て、「先生、ぼくはサイバー大学で先生の授業を受けています」とあいさつに来たという。普段学生と対面していない前川教授にとっては、うれしいサプライズだったという。サイバー大学ではバーチャルの良さを生かしながらも、リアルな大学に劣らない濃い授業や交流が展開されつつあるようだ。
■コストメリットとeラーニングの新しい可能性
最後に、コストメリットについて触れておこう。一般の大学であれば、入学時に数十万から100万円以上の金額が必要となるだろう。しかしサイバー大学では、入学前の検定料が1万円、合格後に支払う入学金が10万円、そして単位ごとに2万1000円が必要となる。大学には最低履修単位が定められていないので、授業料は履修する単位数に応じて毎学期変動する。自分で半期ごとに授業料を設定することも可能だ。入学金と授業料、いずれも一般の大学と比べてサイバー大学の価格が安いことが分かるだろう。
このようなeラーニングという大学のスタイルを、自分のライフスタイルに取り入れるのはどうだろうか。eラーニングでは、個人が淡々と授業を受ける、というイメージを抱くかもしれない。だが、ここまで見てきたように、支え合う仲間もいる。また、その仲間によるコミュニティも存在する。つまり、人間関係もオンラインをメインにしながらも、新しい関係が生まれているのだ。そんな新しい学習の場でスキルアップに励んでみよう。
サイバー大学 2007年度 秋学期生募集! |
サイバー大学の2007年度 秋学期生募集について興味がある方は、サイバー大学のWebページでチェックしよう。 また、7月27日から8月11日まで、「オープンキャンパス〜秋学期生募集説明会〜」を東京、大阪、福岡の3ヵ所で順次開催。実際の授業のデモンストレーションを行うほか、学生同士の交流の様子や在校生の声も紹介される。 |
提供:サイバー大学
企画:アイティメディア株式会社
制作:@IT自分戦略研究所
掲載内容有効期限:2007年8月8日
■サイバー大学の紹介 |
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■特別インタビュー |
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