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そっと背中を押し、道を整える
2008年度の新入社員のタイプは「カーリング型」。その心は「(周囲が新入社員の背中を)そっと押し、ブラシでこすりつつ、働きやすい環境作りに腐心する」。命名したのは財団法人社会経済生産性本部だ。毎年、新入社員のタイプを分析し、流行のキーワードと絡めて発表している。
カーリング型という表現に「なかなか的を射ている」とうなずくのは、富士通ラーニングメディア ナレッジウイングコンテンツ部 吉田恵美氏だ。吉田氏は2009年の新入社員像について、「引っ込み思案で、新入社員らしい“はじけた”感覚に欠けているように見える」と話す。横のつながりは重視するが、高い目標を設定せず、平均値で満足してしまう傾向にあるのだという。
ナレッジウイングコンテンツ部
吉田恵美氏
「これまでは、(新入社員の中に)何人か飛び抜けた能力の人がいた。周囲はその人に追い付こうと努力した。しかし現在は、周りを引っ張るリーダータイプがなかなか出てこない」と吉田氏は語る。皆が横並びで、研修参加者の多くが目標のレベルに到達せず、低位に留まってしまう。
彼らは「KY」(空気読めない)に敏感な世代だ。うかつに前に出ようとせず、慎重に歩みを進める。まさに「カーリングのようだ」と吉田氏はいう。「先輩たちは『進む道はこっちだからね』と進む方法を示し、背中を優しく押し、キュッキュッとほうきで進行方向を磨く」(吉田氏)
最近の新卒採用は“売り手”優位で、学生側の苦労や緊張感はほとんどないといわれている。一方で、採用側は「採りたいが採れない、というジレンマを抱えて苦労している」と、同社 ナレッジウイングコンテンツ部長 兼 第一グループ長 越野洋一氏は指摘する。採用する余裕や必要性が出てきているにもかかわらず、企業が求めるレベルを満たす人材が集められないというのだ。
2009年度以降の新入社員については、現在の経済環境を考えると、「カーリング型」の傾向が強まるかどうかは不透明だ。しかし、それだけに一層、新入社員のタイプに応じた柔軟な研修計画(企画)が必要となってくるだろう。
いまどきの新入社員に有効な教育や指導とは
新入社員が協調性を重視するあまり、積極性や向上心を持てずにいる。こうした傾向は、そのまま近年の新入社員教育における問題点となっている。
ナレッジウイングコンテンツ部長
兼 第一グループ長 越野洋一氏
越野氏は近年の新入社員教育で、新入社員たちが「目標のレベルに到達しなくなっている」と指摘する。越野氏は長年、新入社員研修の現場を見ており、研修で到達できる相場を把握している。「このくらいの研修をすれば、新入社員はこのくらいまで到達する」というおおよその目安だ。だが近年、相場となるレベルまで到達できなくなっている。
採用した会社側も、研修会社に「丁寧に面倒を見てあげてください」とお願いするケースが増えている。指導する側が「大丈夫?」と様子を聞けば、「大丈夫です」と返事が返ってくるものの、本当に分かっているかは定かではない。むしろ、不安そうな顔をしていることが多い。
「そこで、やり方を変えるようにしています」と吉田氏。富士通ラーニングメディアでは、新入社員の傾向に合わせて教え方を変えた。理解度を確認するテストの実施頻度を増やし、不明な点や到達度を把握できるようにした。
さらに、教材をブラッシュアップした。キーワードを順番に教えるのではなく、概念を理解させ、想像力を刺激するように変更した。例えばJavaなら、従来は「演算子」「インターフェイス」などの用語ごとに単元を区切って教えていた。しかし、新入社員にとっては聞き慣れない言葉が続き、未知の単語に困惑して思考が停止してしまう。そこで「わたしたちは『演算子』という言葉を使いますが、これは何のためにあるかというと……」などと話し始め、ストーリーを作って役割や概念を理解してもらおうと努めている。
もう1つ、富士通ラーニングメディアで特徴的な取り組みとして挙げられるのが、三者(新入社員、研修講師、教育担当者)一丸となった日報チェック体制だ。研修期間中に新入社員が日報を作成する仕組みはあったが、日報をリアルタイムで目にするのは研修講師のみで、企業の教育担当者が目にするのは研修終了後だった。この時間差を少なくするため、企業の教育担当者の確認頻度を高くした。企業の教育担当者は、頻繁に研修所に足を運び、研修の進ちょくを確認する。こうした熱意に対応するため、また新入社員研修を成功に導くために、新入社員・教育担当者・研修実施者の3者が一丸となって研修に取り組めるようにしたのである。
顧客の要望に合わせて、柔軟に対応
実際の研修内容はどうだろうか。富士通ラーニングメディアでは、Java、C、COBOLに加えて、VB.NETを今年度から追加した。また、組み込みエンジニア向けのコースも新設。研修メニューの拡充に取り組んでいる。
さらに、「ITソリューションセールス」のコースを新設した。営業職でもIT企業に勤めている限り、技術を理解することは重要であるといえる。なぜこのようにコースを別立てで用意したのだろうか。
「もちろん、営業職でも技術の理解は重要です。しかし、営業職向けの研修を求めている企業もいます」と越野氏は語る。企業は新入社員研修のあり方を真剣に考えている。新入社員研修に求める内容は年々、高度化し、多様化しているということのようだ。
VB.NETコースの追加や、組み込みエンジニア向けのコースに関しても、あくまで「顧客からの要望」を元にしているという。研修全体のスケジュールも、代表的なメニューこそあれ、カスタマイズが可能だ(図1)。どこまでも「顧客の要望に対応する」ということを徹底している。
(※クリックで拡大)
こうした考え方は、地方展開にも当てはまる。富士通ラーニングメディアでは、今年度から「名古屋」に注力しているという。これまでも中部地区では富士通ラーニングメディアとは別の関連会社が運営する研修所があった。そこで研修を行っていたのだが、中部地区の対応強化と経営資源の有効活用のために事業を統合した。これに伴い、名古屋に新しくラーニングセンターを開設し、収容人員も大幅に拡大した。東京だけでなく、名古屋を始めとした地方での需要は年々増えているからだ。
「名古屋ラーニングセンターは単なる出張所や研修所ではなく、東京や大阪と同じように、事業所として組織が機能している。教室数や収容規模で見ても、中部地区ではトップレベル」と越野氏は力を込める。
新入社員が少ない企業には「オープン講座」
新入社員の数が少なく、「1社研修型はとても無理」と考えている企業がいくつもある。
富士通ラーニングメディアでは、1社専用の研修が行えない企業に対して、オープン講座の組み合わせを提案している。一般的に10人以下の場合、グループ演習などの運営が難しいため、研修の効果や費用の面から、10人以下ならオープン講座、15人を超えれば1社専用のコースを選択される場合が多い、と吉田氏はアドバイスをする(図2)。その中間(11人以上15人以下)は研修内容によってアレンジする。オープン講座と1社専用のコースを組み合わせることもある。
オープン講座は、人数が少なくても研修を行えるだけではなく、他社の新入社員と交流が生まれるというメリットがある。一方、1社専用であれば、カリキュラムや日程を独自にカスタマイズできる。人数だけで判断するのではなく、研修を外部に頼むのが初めての企業はオープン講座で感覚をつかみ、自社の新人育成コンセプトが明確な企業は1社専用でカスタマイズ、という使い分けが効果的だ。
プロなら土台形成を安心して任せられる
「カーリング型」新入社員の育成には手が掛かる。だが、冒頭に示した新入社員のタイプをさかのぼってみると、1973年はパンダ型で「おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変」、1976年はたいやきクン型で「頭から尾まで過保護のアンコがギッシリ」とある。今は会社のベテラン世代でも、昔はこう評されていたのだ。
新入社員の育成に手が掛かる、という事実は、時代を経ても変わらない。新入社員は立派な大人だが、社会人としての人生は始まったばかり。住んでいた世界や常識も違う。会社になじみ、必要なスキルを会得するには時間と手間が必要だ。
新人の傾向は年々変わる。傾向にうまく合わせて育成すれば、新人を短期間で望ましい方向とレベルに導くことができるだろう。新入社員に1日も早くエンジニアの土台を固めてもらうには、新人育成のプロフェッショナルに任せるのが1つの選択肢だ。まずは、東京・名古屋・大阪で行われる無料セミナーに足を運んでみてはどうだろうか。
提供:株式会社富士通ラーニングメディア
企画:アイティメディア営業本部
制作:@IT自分戦略研究所編集部
掲載内容有効期限:2008年11月22日
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