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新しい学問領域に魅力を感じて入学
―― そもそも社会人大学院に進学しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか。
僕は耳鼻科関係の医療機器メーカーに勤務しています。いま28歳なんですが、あるとき同期の友人が「会社を辞めて進学でもしようかと思っている」といったので、最初はその友人を手伝うつもりで調べ始めたんですよ。その途中で見つけたのが産業技術大学院大学でした。創造技術専攻という新しい専攻科目ができるというので、入試説明会に参加してみました。そこで説明に出て来られた福田(哲夫)教授の話が非常に面白かったんですね。ご自身が設計されたカモノハシのような新幹線の話で、デザイン側からのアプローチで工学的に有効な形状を作ったことが特に印象的でした。他にも工学系の大学院を2校受験したんですが、ものづくりに関する学問という点で、仕事に役立ちそうだなと思い、ここに決めました。
わたしは高等専門学校出身で、卒業後はデザイン系の学校に進もうかと思っていたのですが、結局そのまま就職しました。飛行機や自動車のマニュアルを作っている出版社で、イラストを扱う仕事に携わっています。社会人生活は4年目です。わたしの場合は、学生時代に進学を相談した高等専門学校の先生から「今度、産業技術大学院大学という学校で創造技術専攻というのができるらしいよ。こういうのも面白いんじゃない?」と教えてもらって。それが3回目の入試の直前だったので、とにかく受けてみよう、と。会社にいるだけじゃ世界が閉じてしまうから、これを機会に外を見てみようと思いました。
わたしはデータベースマーケティング関連の会社で、データの構築・収集・メンテナンス業務をまとめる立場にいます。いま32歳なんですが、これから専門性をどう身につけていこうかなと考えていました。最初は“会計”や“経営”を切り口に探していたんですが、“社会人大学院”で検索したらここがヒットしました。そろそろ新しいサービスを考えたいと思っていたので、ものづくりの発想から何か学べるのではないかという期待と、会計や経営は仕事の中で勉強することもできるだろうという考えから、この大学院を選びました。
―― 皆さん、会社にはどう報告されたんですか。
わたしは受験するときに自部署のメンバーと上司に相談しました。会社からは「仕事に還元する」という前提で、進学も学費負担も承諾してくれました。また、メンバーは受験を快諾してくれました。
僕は合格してから上司にいいました。反対されるかなと思ったんですが、「結果を残すのなら良い」といってもらえました。僕の場合は、会社の補助は受けていないんですけどね。
わたしの会社も理解があって、夜間の大学院に通いたいと相談したら、行ってきなさい、と。そのうえ残業のない部署に移らせてもらえました。通いやすいようにと思って、進学のタイミングで大学院から自転車で10分ぐらいのところに引っ越しもしました。
―― 杉田さんは、まさに万全の体制で仕事と学生の両立生活を始められたんですね。
一見、自分の仕事には関係ないと思える講義が役立つ
―― いま、3クォーター(1年4期制の第3期)が終わったところだと伺っていますが、どの科目が面白かったですか。
全部面白いんですよ。その中でも仕事に直接結びついたのが、品質工学、信頼性工学、設計工学でした。設計工学では、QFD、品質機能展開と呼ばれる手法で、目的とする品質と、直接管理可能な要素をマトリックス型の二元表にして、互いの関係から設計段階で何をコントロールすべきかを探り出すことを学びました。それが仕事上の問題解決や今後の施策立案にも最適で、僕が社内に持ち込みました。あと、信頼性工学、設計工学では、データベース構築でも重要な信頼性や設計品質の担保の仕方を、ものづくりの観点から学べました。一見、自分の仕事に関係なさそうな科目がすごく役立っていますね。
わたしも設計工学が面白かったです。ちょうどこれを学んだときに、会社で業務改善提案を募る企画がありました。そのころわたしのいるチームでちょっとした単純ミスが続いていたのですが、この講義で学んだ分析手法を使って解決法を提案したら、なんと最優秀賞をいただいてしまいました(笑)。実際、ミスもなくなりましたね。
それはすばらしい(笑)。
僕は、技術倫理が一番印象深いですね。グループワークで創造技術専攻の倫理綱領を作成したんです。一般的な倫理綱領を学んだ後、必要な思想は何かということをブレーンストーミングして、まとめたものをチームごとに発表しました。僕のチームは、天間さんと僕と、あと2人でした。このメンバーに1人、グループワークの非常にうまい人がいました。その人は発表の時期を見ながら、アイデアの発散・収束をコントロールしていました。このコントロールもすごいんですが、もっとすごかったのが、チームの一体感を作り出していたこと。6つあったグループがプレゼンを行って、自分以外のグループに投票したのですが、僕たちのチームが1番になりました。最終的な成果物の品質に、チームの一体感がものすごく影響する、ということを強く意識するきっかけになりました。その後、別の授業でも、リーダーをしたときはこのことに気をつけるようにしていました。もう1つ挙げるとすれば、材料力学かな。賛否両論あるかもしれませんけど。
―― 賛否両論というと?
難易度が高いんですよ。量子力学、熱力学の知識が問われる内容です。教授に「元素周期表を毎日眺めるように」といわれまして、家の壁に張ってあります(笑)。でも、ものづくりの基礎となる部分をアウトラインとして把握しておくという意味では有益で、物理関連のニュースを見ても「ああ、これはあのことだ」と、今までと違う見方ができるようになりました。
この科目は材料基礎、材料力学、特別演習と一連のシリーズになっています。僕は全部受けたんですが、今までもやもやしていた世界がストンと腑に落ちたんですよね。
―― 体系的に学ぶことで全容が見えたということでしょうか。
そうですね。
仕事で遅れても、講義を録画したWebCTでキャッチアップできる
―― 仕事と学業の両立はいかがですか。講義の時間にちゃんと間に合っていますか。
わたしは会社に、あらかじめこの時間にいなくなる、と宣言してから入ったので、遅れたり休んだりすることはないですね。昼間の講義も2つほど受講しているんですが、そのときはノートPCを持ってきてメールチェックしたり、会社にこまめに連絡したりしています。これを機会に部下にかなり権限委譲したので、土日に出勤するようなこともありません。
わたしも大丈夫です。
僕はもうボロボロです(笑)。定時に仕事を終えられず、18時30分に始まる5限の講義に出られないときがありますね。5限にしか行われない科目は落とすかもしれないです。ただ、僕は履修科目の上限いっぱい取っているので……。広げすぎはよくないんですけど、どれも面白そうなので、どうしても欲張っちゃうんですよ。それに、全講義を俯瞰(ふかん)することで、大学側の育てたい人材像が見えたような気がします。
ここにはWebCTがありますから、そこは安心ですね。講義に遅れたり、出席できなかったりしても、WebCTで講義の録画を見ることでキャッチアップできます。
あれはいいですね。あれで土日に復習しておけば、講義についていけないということはないです。
確かにWebCTはありがたいですね。
早送りで見てる?
ええ、早送りです(笑)。それでも内容は理解できますよね。
―― 教授や学生さん同士の交流はいかがですか?
自然発生的に、月に1度、誕生日会が開催されています(笑)。その月に誕生日を迎える人をまとめて祝う会です。それに夏休みは、杉田さんがアウトドアでのバーベキュー大会を企画してくれました。そこには教授も参加してくださって、非常に楽しい会になりました。
夏休み、2カ月会えないのは寂しいし、講義期間中は夜間で時間に制限があり、なかなかゆっくり教授と学生が交流できないので。参加してくださった教授の方々からは「こういう機会を設けてくれてありがとう」という言葉をいただきました。
冬休みは鍋かな(笑)。
いいですね。
―― 年代もさまざま、職業もさまざまな同級生と学んでいらっしゃいますが、そういう環境はいかがですか。
わたしは教授からばかりではなく、同級生からもたくさん学ばせていただいています。社会で活躍されている方が多くて、いろいろな業界のお話が聞けます。コミュニケーションという点でも、人との接し方とか、議論のまとめ方とか、やはり人生経験を積んだ先輩は上手だなあと日々感心しています。
年齢や業界が違いすぎて、時々、話が通じないこともあるんですけどね(笑)。
それ、わたしにいってる?(笑)
いや、天間さんは懐が深いです(笑)。基本的には机を並べて講義を受けている仲間なので、年代の違いとか、職業や肩書きの違いはまったく気にならないですね。
学んだことを生かして、会社の成長に貢献したい
―― 卒業後の進路についてはどのようにお考えですか。
転職はあまり考えていないんですが、世界が広がったのは確かなので、今いる会社で学んだことを生かしていきたいですね。具体的には、耳鼻科医院の中で患者さんが、どう快適に過ごせるかといったことを考えるとき。適切な治療が受けられることは前提として、医療機器だけが優れていればいいわけではなく、院内の内装とか間取りとか、そういうことも総合的に考えていかなければと思っています。
工業製品のマニュアルというのは、今どんどん電子化が進んでいて、その意味でも、うちの会社は事業再編の時期に直面しています。ここで学んだことがそれを考える上での一助になればいいなと思っています。
わたしも、ここで学んだことを当社の新サービス立ち上げに生かしていきたいですね。2年目で実践するPBL(Project Based Learning)のテーマも、できるだけそれに役立ちそうなものを選びたいと思っています。
―― この1年を振り返って、皆さんの最大の収穫は何でしたか。これから進学を考える方々のために、産業技術大学院大学や創造技術専攻の魅力を教えてください。
やっぱり世界観が格段に広がるということでしょう。特に創造技術専攻は新しい学問領域で、ものづくりアーキテクトとはどのような人材か、僕たち自身が模索しながら進めるという点が他にはない魅力だと思います。創造技術という名称に何か引っかかるものを感じる人で、時間がある程度確保できる方には推奨したいですね。
取りあえず楽しいですから(笑)、まだ自分の進むべき道が見つからず迷っている、という人にもお勧めしたいです。ここで2年間学ぶことで、道が見えてくるということもあると思います。
僕のような年代は、これから管理職になり、部下をまとめていくという立場になります。この時期にしっかり学んでおかないと、部下の可能性を狭めてしまったり、会社の成長に貢献できなかったり、という可能性があるかもしれません。いま携わっている仕事の範囲だけではなく、産業界に密着した幅広い知識を身につけられるという点で、産業技術大学院大学は良い選択肢だと思いますね。
―― どうもありがとうございました。
提供:産業技術大学院大学
企画:アイティメディア株式会社
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2008年12月31日
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