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情報アーキテクトとは「新しい仕事の仕方」の設計者
システムエンジニアであれば「ITアーキテクト」という職種をご存じだろう。ITアーキテクトを目指している、という読者も少なくないはずだ。だが、そもそもITアーキテクトとはどのような人材なのだろうか。明確に定義されているわけではなく、人によってイメージする像には差がある。
産業技術大学院大学 情報アーキテクチャ専攻は「情報アーキテクト」を育成する、と謳っている。彼らの考える「情報アーキテクト」とは、ITアーキテクトのことなのだろうか。産業技術大学院大学 情報アーキテクチャ専攻長の戸沢義夫教授は明確に否定する。
産業技術大学院大学
情報アーキテクチャ専攻長
戸沢義夫教授
「わたしたちの考える情報アーキテクトとは『ITをビジネスに役立てることができる人材』のことです。技術からビジネスバリューが作れる人、といい換えてもいいでしょう」
ITを導入すると仕事が変わる、あるいは儲かる。そうした誤解がはびこっていると戸沢教授は語る。ITが直接、ビジネスバリューを生み出すことはほとんどないというのが戸沢教授の意見だ。
「ITを導入することによって仕事の仕方が変わったとき、初めてビジネスバリューが生まれます。情報アーキテクトは、『新しい仕事の仕方』を設計する人のことなのです」
通常、人は仕事の仕方を変えたくないものである。だから、単にITを導入しても、仕事の仕方は変わらないからコスト増になるのだ。
業務知識も得られる6つのモデルコース
情報アーキテクトにはプログラムや情報システムの設計に関する知識・経験のみならず、プロジェクト管理能力や業務知識が求められる、と戸沢教授は主張する。産業技術大学院大学 情報アーキテクチャ専攻では、これらの能力を得るために次の6つのモデルコースを用意している。
- プロジェクトマネジメント
- セキュリティ
- ネットワーク
- データベース
- ソフトウェア開発
- CIO・マネジメント
これらのモデルコースは情報処理技術者試験のスキルレベル4(高度情報処理技術者試験)が取得できるように準備されている。「高度」は業務知識が問われるため、カリキュラムにも現場業務の話が含まれている。実際に産業界での経験がある教授が多いからこそできる講義内容だといえる。
PBLで「高度IT人材」になるための経験を積む
情報アーキテクトを育成するために産業技術大学院大学が行っている、もう1つの大きな取り組みが「PBL(Project Based Learning:問題解決型学修)」だ。これは複数の学生がチームを編成し、現実に存在する課題の解決に取り組む学習法のことである。
机上の空論ではなく現実に即したプロジェクトであることが最大の特徴だ。戸沢教授が担当したPBLでは「楽天のシステム開発グループにおける業務改革提案」を行った。最終的に、学生チームが楽天の開発部長にプレゼンテーションを行ったという。
PBLによって、学生は座学では得られない「情報アーキテクトに必要な業務遂行能力(コンピテンシー)」を得る。「卒業生からは、仕事に直接的に役立っているという声が多い」と戸沢教授は自信を見せる。
不況で開発案件が減っているといわれるIT業界だが、戸沢教授は「本当に能力のある人なら仕事は減っていないはず」と語る。
「高度IT人材はいまだに不足しています。でも、いくら高度IT人材になろうとしても、会社で今やっている仕事を続けるだけでは必要な能力が身につかないんですよ。なぜなら、そういう人はそもそも高度な仕事をやらせてもらえていないからです」
それを補うのが産業技術大学院大学のカリキュラムであり、PBLだという。では実際に産業技術大学院大学情報アーキテクチャ専攻を卒業したエンジニアたちから見て、これらのカリキュラムやPBLはどのように役立っているのだろうか。
「本当にやりたいこと」を確かめるために、大学院へ
生命保険会社の情報システム部門に所属する玉川雄大氏と、SIベンダでシステムの企画開発・マネジメントを行う矢野雅文氏の2人は、産業技術大学院大学情報アーキテクチャ専攻の第1期卒業生だ。2人とも2年間の大学院生活を「本当に大変で、すごく楽しかった」と振り返る。
玉川氏は「自分がやりたいと思っていることが本当に正しいかどうかを確かめるために入学した」と語る。玉川氏は大学院入学前はサブコントラクターに勤めており、リーダーとして設計からコーディング、テストに至るまでの作業を行っていた。それは楽しい仕事ではあったが、「本当にやりたいことか」と自問自答していたという。
玉川雄大氏
「システムって、リアルをバーチャルに置き換えるものだと思うんです。現実の課題をバーチャルに置き換えてシステムで解決する。その変換部分をやりたいとずっと思っていたんです」(玉川氏)
玉川氏の従来の仕事は、すでに要件の決まったシステムを開発することだった。だが、玉川氏はもっと上流の、「要求を形にする部分」がやりたかったのだ。
会社では、そのような仕事をする機会がなかったため、いくらコンサルティングに関する書籍を読んでも、要求を形にして提案するまでを実際に経験することはできなかった。だから、入学するまでは本当にそれがやりたいことか、自信を持って判断できなかったという。
PBLに引かれて産業技術大学院大学に入学した玉川氏は、自分の想いが間違っていなかったことに気付く。実際に手を動かして、現実の課題に対する提案を行う経験ができたからだ。
「これまでも『手を動かしてナンボ』でしたから、大学院でも座学だけじゃなく、同じように手を動かせたのがうれしかったですね」(玉川氏)
自分の方向性に自信を持った玉川氏は大学院を卒業後、現在の会社に転職した。本当にやりたい仕事をするためだ。
「実務で得た専門知識・経験を体系的に整理するために」大学院へ
一方、矢野氏は「実務で得た専門知識・経験を体系的に整理するために」と入学したきっかけを話す。多くの技術系の大学院の中から、矢野氏が産業技術大学院大学を選んだ理由は、「PBLを採用していること、新設大学院であること」の2点だという。
「PBLでは、習得したいコンピテンシーを明確にした上で、現実課題に取り組みます。精神的にも肉体的にもハードですが、自分自身の目的意識が明確であれば、有益なものになると思います」(矢野氏)
また、新設大学院であることは、学生、教員、職員、多くの関係者にとって、活動やイベントが初めてのものとなることを意味する。教室や電子機器などの設備は徐々に整備されていき、講義の録画公開も試行錯誤しながら展開していった。
「PBLや講義を通して、ほかの学生とも切磋琢磨(せっさたくま)しながらみんなで成長できることは、この大学院の利点だと思います」(矢野氏)
平日の夜と土曜日はほぼ欠かさず大学院に通ったという。仕事と大学院の両立は大変だ。
どうやって乗り切ったのかを聞くと、2人とも「秘策はない。がむしゃらにやるしかない」と苦笑い。それでも玉川氏は「生活を朝型にして、仕事は朝やる」、矢野氏は「卒業後の自分のビジョンを明確にし、現状の自分を把握した上で、認識した課題に優先順位をつけ、1つ1つ着実に取り組んでいく」という工夫を教えてくれた。
成績優秀者には銀時計が授与される。矢野氏はこれを取得した。自分自身のスキル向上だけではなく、共に活動したほかの学生のコンピテンシーも向上した事に価値を感じると矢野氏は語る。
「各人が社会に戻った後、情報アーキテクチャ専攻で習得した事を実践的に活用・フィードバックしていく事で、広い意味でのIT業界への貢献に繋がると思います」(矢野氏)
成績優秀者に送られる銀時計(矢野氏所有)
仲間たちと協力し合った日々の結晶だ
仕事をしていても目指すキャリアに到達できない、とお悩みのあなたに
エンジニアが大学院で学び直す意義とは何なのだろうか。2年間の大学院生活を経験した2人の言葉は重い。
「1度、現場に出て、仕事して、体で覚える。現場はすごく重要で、いろいろなことが覚えられます。でも、現場の仕事だけだといずれ打ち止めになるんですよ。そのときに、大学院は引き出しを増やす場として最適なんじゃないでしょうか」(玉川氏)
「1点目は、独学ではなく体系的に学べること。2点目は、年齢・バックグラウンドが異なる人々と共に学べるということです」(矢野氏)
2人とも日々の仕事では得られないものを学び、その成果を生かしてキャリアアップを実現し始めている。2年間の大学院生活を無駄にはしていない。
戸沢教授は「今の自分の仕事では目指すキャリアに必要なスキルが身につかない、という悩みを持っている人に、ぜひ来て欲しい」と語る。もしあなたがそうした悩みを持っているのであれば、まずは産業技術大学院大学の説明会に参加してみてはどうだろうか。幸い、入学料と授業料は財布に優しい金額設定だ。コストをあまりかけずに、不況に負けない「高度IT人材」を目指そう。
提供:産業技術大学院大学
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2009年8月12日
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