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「工業デザインに主眼を置いた『ものづくり』に、ずっと興味がありました。システムエンジニアとなって久しいわたしが、今から未経験分野を学ぶのなら、産業技術大学院大学が最善の選択だと考えました」
電機系メーカーで医療情報システムのエンジニアとして働く稲垣健志氏は、産業技術大学院大学 創造技術専攻に入学した理由をそのように語る。
産業技術大学院大学 創造技術専攻は、「ものづくりアーキテクト」の育成を目的として2008年に新設された専攻だ。「ものづくり」の世界において、エンジニアリングとデザイン、双方の領域をマネジメントできる人材は不可欠である。現代の優れたプロダクトは、機能とデザイン性を両立させることが欠かせないからだ。こうした人材を育成するため、創造技術専攻ではプロダクト・イノベーション、インダストリアル・デザイン、デジタル技術、産業材料学など幅広い分野の履修科目を取りそろえている。
未経験分野の修得のために入学を決意した稲垣氏に、産業技術大学院大学 創造技術専攻の魅力について聞いた。
「自身の努力」「職場の理解」「大学院の制度」の3つで、仕事と学業を両立
稲垣氏が産業技術大学院大学 創造技術専攻に惹かれたポイントは2つ。まず「社会人として働きながら通うことができる」という点だ。平日夜間や土曜開催の講義システムは、忙しく働く稲垣氏にとって学ぶ場所選びの重要なポイントだった。平日は朝6時半から仕事を始めることで定時退社を実現しているという。
創造技術専攻で学ぶ
稲垣健志氏
限られた時間の中で仕事と学業を両立させるのは、並大抵のことではない。稲垣氏は「なすべきことの重要度と緊急度を勘案し、優先順位をつけて仕事をする」ことで両立を実現しているそうだ。ただし、それだけではない。「職場での理解が得られているのも大きい」と稲垣氏は語る。
「上司をはじめ、職場の仲間には、わたしの就学について深く理解してもらっています。職場の協力なしでは、仕事と学業の両立は成立しなかったでしょうね。とても感謝しています」
働きながら就学する学生などのために、大学院側では、長期履修制度(仕事の都合などの理由で、2年間で単位取得することが困難な場合、2年分の授業料で3年間の修業年限を認める制度)や、インターネットを利用しての自宅学習を可能とする、eラーニングを活用した講義支援システムなどの支援策を用意している。社会人が働きながら通学するための環境としては最適といえるだろう。
「手を動かして学べる」ことの大切さ
もう1つのポイントは「多角的な視点からものづくりの勉強ができる」という点だ。これまでは異なる知識の体系として捉えられていた感性デザイン領域と工学的機能デザイン領域を融合し、個々の知識体系の下では生まれえないような高度な知識を修得できるカリキュラムになっている。これは産業技術大学院大学 創造技術専攻の特色といえるだろう。
特に「実際に手を動かして学べる」ことの重要性を稲垣氏は強調する。
「お金もうけの仕組みを考える前に、まずは手を動かしてモノを創り出すことの方が大切だとわたしは考えています。ものづくりとビジネスとを、どのように結び付けるかを学べる教育機関は色々ありますが、手を動かしてモノを創り出すことにもきちんと軸足を置いている教育機関は、ここ以外では少ないと思います。ここでいうモノとは、決して有形に特化していっているわけではありません。無形なモノも含め、顧客が満足し得るだけのサービスについて、感性デザイン的アプローチや機能デザイン的アプローチなどから、多角的かつ実践的に学びたいと考えています」
印象深かった講義として、稲垣氏は「インダストリアル・デザイン特別演習」を挙げる。ある課題に対して、その要件を満たすためのカタチを作り、その成果物をプレゼンテーションするという内容だ。例えば、「暮らしに役立つ道具のデザイン」という課題が出された時は、求められている真意(要件)を分析し、参考となる事例を観察し、そこから得られた機能の解釈や感性を自分の創り出すカタチで表現した。
こうした一連の作業を行なうことの面白さに加え、稲垣氏は「ほかの学生の考えを知ることができる」ことの楽しさも説く。
「同じ課題であっても、解釈や発想のしかたが学生1人ひとりでまったく異なるんです。いろいろな成果物が発表され、その度に教室が盛り上がります。『学校に通っている』ことを楽しいと感じられる時間ですね」
多種多様な学生が集まる場。「絶対に出会えなかった人たち」から学べること
そのほかの講義ではグループワークを行う機会が多い。その際、グループ内のメンバーから、思いもよらないような仕事のやり方・考え方を学ぶことがあるという。
創造技術専攻は、多種多様な業種の学生が集まっている。稲垣氏の同期にも、建設、電機、自動車などの製造系に従事する人から、情報産業やサービス業など非製造系に従事する人まで多種多様だ。プロダクトデザインを本業にするデザイナーもいる。
「違う立場の人たちと同じ課題に取り組むことの意義は、多種多様な視点を獲得できることにあります。1つの業種に従事し続けていると、発想が固着化してしまう傾向にあります。大学院に通うようになって、このことを痛感しました」
稲垣氏は同期の学生たちのことを「ここに来なければ絶対に出会えなかった人たち」と表現する。確かに、社会人を続けていると、異業種の人たちと出会う機会は少なくなってくる。ましてや、同じ課題に取り組む機会など、ほとんどないといってよいだろう。
気付きは「異なるやり方」の発見だけではない。業種に違いはあるが、仕事のやり方には「共通点」が多いことも再発見できたと稲垣氏は語る。また、老若男女が講義の内容など共通の話題で意見を交わす環境は「実に痛快」であるという。年上の同期生からはもちろん、年下の同期生から学ぶことがとても多いそうだ。こうした経験の多くは、稲垣氏の日々の仕事の糧となっている。
「学びたい」を受け止めてくれる教授陣
この大学院に入って良かったと感じるのはどんな点か。稲垣氏は「手を動かして学べる環境があること」と「ここに来なければ絶対に出会えないような人たちと出会えたこと」のほかに、「講義の枠を超えて、自分のやりたいことを受け止めてくれるサポート体制があること」を挙げる。
講義だけでは満足しない。学ぶことに対して受け身になるのではなく、自ら学ぼうとする学生に対し、その好奇心を受け止めてくれる教授が創造技術専攻にはいる。「空き時間に来なさい。絵の描き方の基礎を教えてあげるよ」――そういってくれる教授がいたことを、稲垣氏はうれしそうに話す。
また、正規の講義以外にも、産学協同プロジェクトやデザインコンペなど、学生が任意で参加できる「学びと実践の機会」が豊富に提供されているのも魅力だ。有志がグループを組んで課題に取り組み、自分の目的に応じたスキルを身につけることができる。自ら学ぶ意欲を持つ学生にとっては、これ以上ない学びと実践の環境だ。
稲垣氏は、こんなエピソードも教えてくれた。
「ある企業様が開発したエアクッションを用いて、高速バス用座席を提案する産学協同プロジェクトがありまして、福田教授(編集部注:創造技術専攻長の福田哲夫教授。工業デザイナーとして、高速新幹線N700系の設計開発にかかわった人物として有名)と一緒に参加させていただきました。その時、福田教授が作業着を着て制作に取り組んでいるのを見て、『ああ、ものづくりとは、わたしが従事している情報システム構築と同様で、本質的な部分は地味で泥臭い現場仕事によって支えられているんだ』と強く感じました」
学生と教授が一緒になって「ものづくり」の真髄を共有する。そんな環境が創造技術専攻にはあるのだ。
業務と直結しなくても、「幅」と「厚み」を与えてくれる
稲垣氏は今後の目標を次のように語る。
「有形無形にかかわらず、広く『ものづくり』というキーワードのもと、さまざまな業種や分野の人と会話できるようなスキルを身につけたいですね」
稲垣氏のいう「ものづくり」とは、ハードウェアに限定したものではない。ソフトウェアについても言及している。また業務内容においても企画、設計、製造、保守から経営に至るまで、さまざまな分野を包括するものだと考える。創造技術専攻で学んだものづくりに関するノウハウは、たとえ直接、業務と関係するものでなかったとしても、自身の業務スキルに「幅」と「厚み」を与えるものだと思う――そう稲垣氏は話す。
本当に「学びたい」なら、多忙さや年齢は関係ない
「学ぶ環境に身が置けるというのは、本当にありがたいことです。社会人が学べる環境は、ここ数年で随分と増えてきました」
稲垣氏は繰り返す。仕事が忙しくて勉強する時間がない、という人がいるが、本当に「学ぶ時間」が持てないのだろうか。多忙さや年齢を理由に「学び」から遠ざかっている人がいるとしたら、それは実にもったいないことだ、と。
「とにかく学ぶ環境に身を置いてしまえば、案外なんとかなるものです。年齢も気にする必要はありません。むしろ『年の功』が武器となって、日々の多忙さや年齢のハンデをあっけなく突破してくれたりもしますよ」
本当に「学ぶ意欲」を持つ人は、産業技術大学院大学の学校説明会に参加してみてはどうだろうか。そこで自分の悩み――求めていることが学べるか、仕事との両立はできるのか――をぶつけてみるのもいい。きっと産業技術大学院大学 創造技術専攻は、あなたの「学びたい」という思いを受け止めてくれることだろう。
提供:産業技術大学院大学
企画:アイティメディア営業企画
制作:@IT自分戦略研究所 編集部
掲載内容有効期限:2010年1月13日
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