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連載:知っておきたい人材会社の裏事情
第4回
人材紹介会社で重要な「カウンセリング」

辻俊彦(@ITジョブエージェント担当
2001/10/30

派遣会社での勤務経験がある筆者(現@ITジョブエージェント担当)が、人材ビジネスの“裏”を紹介するとともに、エンジニアがいかに人材会社と付き合えばいいのか、そのヒントを語る

 前回(第3回 人材紹介会社選択の3つのポイント)は、人材紹介会社の概要とエンジニアが人材紹介会社を選択する際のポイントについて書きました。今回は、その中でもエンジニアにとって最も利用価値の高いサービスについて、さらに詳しく書いていきたいと思います。

キャリアカウンセリング

 人材紹介会社を選択する場合のポイントにも挙げたように、キャリアカウンセリングの重要性は高まりつつあり、アメリカのキャリアカウンセラーの資格(Global Career Development Facilitator:GCDF)も日本に参入してきました。現在の企業と従業員(個人)の関係は、終身雇用時代の相互依存関係ではなく、企業も個人も自立を求められるようになっています。企業内の価値ではなく、(企業外の)市場価値を持たなければ、失業の憂き目に遭いかねません。GCDFの本家アメリカのCDFは、キャリアデベロップメントを推進するための認定資格で、前クリントン政権の不況時に再就職支援のためにできた認定資格制度です。現在の日本と似たような状況下で生まれた制度といえるでしょう。

 人材紹介会社は、転職が成立しなければ収入が得られません。しかし、だからといってはじめに転職ありきでコンタクトしてくる人材紹介会社は、企業の都合だけを優先する可能性が高くて信用できません。個人にとっての転職は、人生のターニングポイントですから、この機会に潜在化していた個人の夢、ビジョン、キャリアゴールに関して、きちんと考える機会を提供してくれるような人材紹介会社と付き合った方がいいに決まっています。転職を考えるタイミングで、日常の生活から一歩離れて自分自身を見つめ直し、自分のキャリアゴールを確認する。こうしたことで求職者(アプリカント)を勇気づけることが、キャリアカウンセラーに求められている重要な役割だといえるでしょう。見方によっては「学校の保健室」のようですが、相談内容は多種多様であり、業務知識が必要とされる職種もあるため、カウンセラーの自己研さんが望まれるところです。

 キャリアゴールの確認が済んだ後は、アプリカントの職務経歴を中心にキャリアやスキルの棚卸しを行います。エンジニアの場合、かかわったプロジェクトがPRできるキャリアであり、スキルの例証になります。ないよりはあった方がいいのが資格ですが、転職の決め手にはなりにくく、資格を取得したことよりも取得したプロセスを重要視する企業が多いようです。いずれにしても、キャリアやスキルの棚卸しを常日ごろからやっている人は少ないので、受講した研修なども含めて、レジュメを作成するいい機会になるはずです。まずは現実を正しく認識したうえで、キャリアゴールへ向けてのキャリアプランを考えることになります。

 適職を紹介することがカウンセリングと思われるかもしれません。しかし、仕事が適しているかどうかは外形的に決まるものではなく、キャリアゴールとの関係で決まるのであり、ゴールが見通せる仕事だからこそ、自身のモチベーションが保てるのだと思います。収入の多寡よりは将来の夢に向けてスキルアップできる仕事かどうかがキャリアアップの方向性だと思いますし、若年層であればなおのこと、この要素を重視すべきでしょう。

キャリアプラン、スキルアッププランの構築

 以上述べたように、転職あるいは適職の紹介は、キャリアゴールとの関係で位置付けられるものですから、それなしに特定のスキルが必要だとするカウンセリングは、企業からのオーダー(求人条件)に比重を置いていそうです。

 目先の××株式会社に入社したいというのは、アプリカントの正直な気持ちだと思います。しかし、ここで慌てず、自分が持っているもの、持っていないものに関して、信頼できるカウンセラーと共通の認識を築き、ゴールへ向けてのプランを考えたり、(特に20代の場合は)段階的なスキルアッププランを共同で考えることが重要だと思います。アプリカントは自分の志望を明確にし、人材紹介会社が持つ就職市場の情報と擦り合わせて、自己実現を感じられる生き方を実践できることが、アプリカントの幸せといえるでしょう。

履歴書・職務経歴書のブラッシュアップ

 採用企業側から考えると当たり前なのですが、企業側が最初に見るのはアプリカント本人ではなく、履歴書・職務経歴書などのレジュメです。採用の判断は最終的には面談で決まりますが、レジュメの果たす役割は極めて大きいといえ、その中でも書式が自由な職務経歴書の書き方がポイントになりそうです。同じ内容であってもポイントの置き方などで、企業側の印象はかなり異なります。例えば、会社への不平・不満はあるとしても、それが転職理由になる場合、入社後に同じ事態になることを採用企業側は危ぐしてしまいます。

 職務経歴書の書き方で重要なポイントを列挙すれば、次のようなことに留意して、アピールポイントを際立たせる工夫が必要になります。

(1)キャリアアップ、スキルアップの首尾一貫性
(2)かかわったプロジェクトは、業務内容以外に人員や役割を明記する
(3)言語、OS、ハードウェア環境、アプリケーションなどは系統立ててまとめる

 企業との密着性が強い紹介会社であれば、特定企業に“受ける”書き方なども指導してもらえますので、人材紹介会社活用の1つのメリットといえるでしょう。

法制度の変化

 最後に、最近の人材サービスに関する法改正について触れておきましょう。この法改正は、終身雇用時代から人材流動化時代への変化を反映したものともいえます。ここでは、紹介予定派遣とアプリカントからの手数料について触れます。

 紹介予定派遣とは、2000年12月から始まった制度で、入社を前提として一定期間の派遣就業を行い、派遣終了後にお互いが入社の意思確認をするものです。一部では企業側に有利な制度ともいわれていますが、個人にとっても入社して短期間で退職するようなリスクを避けられる面で有用な制度といえます(短期間での退職は、転職市場でマイナス評価をされるのが現実です)。いってみれば、いままではお見合い結婚しかできなかったのが、恋愛期間なり試婚(?)が可能になったということになります。試用期間が生かされていない現状では、制度のバリエーションとして評価できると思います。あくまでも派遣の新メニューというよりは、紹介の新メニューという位置付けでしょう。

 さて、アプリカントからの手数料に関しては、方向性が出されているだけで、開始時期などは未定です。従来、人材紹介会社は、メジャーリーガーのエージェントに例えられてきました。が、企業からの手数料しか得られない点が、メジャーリーガーのエージェントとは決定的に異なります。どちらかというと球団側の顧問弁護士と同じポジションかもしれません。これでは、人材紹介会社は個人のための報酬アップ交渉も弱腰にならざるを得ませんし、サーチ型であれば、企業側の都合で報酬ダウンの交渉を個人とすることになるかもしれません。当然のことながら、カウンセリングよりはマッチングに重きが置かれることになります。その意味では、個人(アプリカント)からも手数料収入が得られるようになれば、報酬アップ分の一定比率を成功報酬としたり、カウンセリングの有料化が容易になると思われますし、個人にとっても有益な仕組みができやすくなると思います。

筆者紹介
辻俊彦 ●2001年3月まで、エンジニア派遣大手企業で、事業企画に携わり、 企業のニーズに合わせた育成プロジェクトを立ち上げる。エンジニアの自己実現をサポートするというポリシーの下に、@ITジョブエージェントのサービス企画にも関与。

「連載 知っておきたい人材会社の裏事情」

 

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