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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.1<2001年12月版
ITエンジニア求人市場は底を打ったか?

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2001/12/26

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

依然厳しいITエンジニアの求人動向

 2001年12月現在のITエンジニアの求人動向は厳しい。1999年から“できるITエンジニアはいったいどこにいる?”状態で、売り手市場だったITエンジニアの求人動向に陰りが見えてきたのは、今年の春先からだ。その後も上向くことなくますます冷え込んでいるらしい。夏ごろには、すでに「プログラマーやSEなりたてレベルの若手ITエンジニアは充足感がある。足りないのは、プロジェクトリーダー/マネージャクラス」(人材紹介会社)という状態となった。

 プログラマーやSEクラスについて、求人企業の現在のスタンスは、「中途採用をやめているわけではない。ただし、これまで選考時の評価が60点でも採用していた人材を、現在であれば90点以上でないと採用しない。それだけ選別がシビアになってきている」と、採用姿勢の変化がうかがえる。しかし、データベース、IPネットワークのスキルを持つエンジニアへのニーズは、まだまだ堅調だ。それよりも堅調なのは、業務系システムの構築・運用経験者。例えばメーカーで社内のSCMシステム構築を経験したようなエンジニアへの需要は底堅い。

 プロジェクトリーダー/マネージャクラスで、最もニーズが高いのは「オープン系のスキルと汎用系(COBOL)スキルを両方持っているリーダークラス」。つまりは、フロント部分とバックエンドのレガシーシステムの両方が分かるエンジニアだ。特に秋口になって、金融機関の統合や、日本版401kの始動が要因となり、それらのスキルが求められている。

 求人企業側の選別がシビアになっているこの時期、人材紹介会社に差別化のポイントを聞いた。「ベースとなる技術力のほか、コミュニケーションスキルや、問題解決能力などが求められている。自分で考え、自分で行動できる自律性がポイント」とのことだ。つまり、売り手市場ならば一定の技術スキルがあれば採用されたが、現状では、技術スキルは必要最小限の条件で、それにプラスアルファのスキルが求められているわけだ。それが前述の“90点以上でないと採用しない”という意味だろう。

案件自体が減っている? 派遣エンジニア動向

 派遣エンジニア需要に目を転じてみよう。こちらはさらにシビアな状況だ。9月ごろから「開発案件の延期や中止が出始め、アサインされていた派遣エンジニアをキャンセルされる派遣会社も出てきた」(人材派遣会社)ようで、この傾向はますます強くなっているらしい。特に11月に入ってからは、「金融関連と携帯電話関連での開発案件も落ち着いてきて、好調な業種がなくなった」とか、「開発案件があったとしても、自社エンジニアで対応しているようだ。派遣エンジニアに依頼するまでもない」という状態らしい。

 このような状態でも、ネットワークエンジニアやWebアプリケーション開発のできる派遣エンジニアへのニーズはあるようだが、それでも「実務経験2〜3年程度では採用されないこともある、設計までできることが求められる」とのことだ。ある派遣会社では「社内では“ワールドカップサッカーが終わるまで辛抱”といって います。ワールドカップが終わると景気が上向く、という予測があるわけではなく、 とにかく目の前の半年を乗り切ってから、ということのようです」と自ちょう気味に語った。

それでも回復の萌芽が……

 どうにも悲惨な状況だが、一方で底を打ったと感じている紹介会社もある。「関西方面の製造業(中堅)の採用が活発化してきた。採用職種はブロードバンド系ネットワークエンジニアや、高機能ICの設計エンジニア。いずれもブロードバンドがけん引役となっている。1998年の半導体不況でエンジニア求人市場が落ち込んだときも、まず関西から回復した。このときは、携帯電話需要だったが、そのときのトレンドに似ている。このトレンドがだれにでも実感できるようになるのは、2002年春から夏にかけてではないか」と、実績豊富な人材紹介会社幹部が語る。

 さらに、彼はエンジニアに次のようなエールを送る。「この時期に採用しているのは、真に力のある企業やこれからの成長を確信している企業なので、求人企業分析の手間が省ける(笑)。また、合格ラインが上がっているということは、この時期に中途採用される人材は、実力があるあかし。力試しのつもりで自分の価値を測ってみたらどうか」

@ITジョブエージェントから

 売り手市場の際に、よく見かけたフレーズの「エンジニア未経験可」は、もはや過去のものになった。そればかりか、経験2〜3年でさえも派遣エンジニアとして採用されない場合があるという。この状況下で自分なりのキャリアプランを基に、転職を検討しているITエンジニアはどう対処すべきなのだろうか?

 スキル途上のエンジニアは、少なくとも収入アップを目的とした転職は難しそうだ。いま与えられている環境で、効率良くスキルを身に付けることがベターだと思われる。スキルアップを目的とした転職であれば、求人動向とは関係なく、果敢にチャレンジしてみてもいいだろう。

 技術スキルの高いエンジニアにとっては、自分を再発見する目的で、転職活動をするのも手だ。人材紹介会社や求人企業と面談することにより、技術スキル以外の自分の強みや弱み、自分が本当に進みたい方向が明確になるかもしれない。その結果、この時期に内定をもらえれば、それは大きな自信につながるはずだ。

■取材協力企業
アデコキャリアスタッフ
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リーディング・エッジ社
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