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連載:ITエンジニア最新求人レポート No.3<2002年2月版
“寄らば大樹”では今後のキャリアを築けない

小林教至(@ITジョブエージェント担当
2002/3/1

アットマーク・アイティのキャリアアップ支援サービス「@ITジョブエージェント」を担当している筆者は、同サービスに参加していただいている会社をはじめ、複数の人材紹介会社/人材派遣会社を毎月訪問している。そこでヒアリングしたITエンジニアの求人動向を定期的にレポートする。マクロ的な動向ではないし、具体的な数値もないが、現状の市況や今後のトレンドを推測する資料としてほしい。

“この人がなぜ?”という人が不採用

 昨年12月から毎月求人動向をレポートしているが、今年1〜2月も厳しい状況は変わらないどころか、一部では悪化している状況のようだ。「経験5年以上で、プロジェクトリーダーができるマネージャクラスは、相変わらず慢性的な人材不足層ですね。それに対して、経験年数の短いエンジニアの求人は厳しい状況です。特に開発系の若年層には余剰感があります。まだマシなのは、IPネットワークエンジニアでしょうか」(人材紹介会社)

 またこんな話も聞いた。「この人は採用になるだろう、と思っていた転職希望者が不採用になることが増えましたね。求人企業の担当者は、そんなときほど“いい人なんだけどねぇ”といっています。これといった明確な理由がなくても不採用になるんですよ」。買い手市場だから、もっといい人が見つかるかもしれない、と求人企業側は考える傾向にあるからだろうという。しかし、買い手市場では、エンジニア(労働者)側も転職を控える傾向にあるため、有望な人材は得難い。そのため求人企業側も採用に苦慮している。

 一方、厳しいとはいいつつも、活発に採用活動をしている企業もあるようだ。特にテロ事件以降、採用活動を凍結していた外資系企業は、前回の求人レポート(「夏までの転職はいまが勝負?」)もレポートしたとおり採用活動再開を解禁するところが増えているようだ。大手通信機器メーカーの解禁はよく耳にした。また国内企業でも活発に採用をしている企業もある。そして採用している企業は、「手あかのついたいい方だが、企業の勝ち組と負け組が鮮明になってきたということ」と、某人材紹介会社が解説してくれた。

人事部を経由しない求人

 決算を控えた年度末特有の動きとして、「人事部を通さずに、人材を採用したい現場から“4月以降の予算で採用するから、取りあえずいい人を探しておいて”と、お話をいただく」といった求人案件もあるそうだ。現場としてはすぐにでも欲しいが、今期の予算はない。そこで、来期の予算で採用活動をするわけだが、一刻も早く入社してほしいので、いまのうちから人材紹介会社に探してもらおうというもの。こういった求人案件は、当然だが求人広告には出ない。希望の企業が求人広告を出していないからといって、あきらめずに人材紹介会社に聞いてみるのも手だろう。

派遣エンジニアのトレンドは、年度末需要頼み

 人材派遣の動向はどうだろうか?「金融関連や携帯電話関連の案件が一段落したので、案件数が減少しているが、年度内カットオーバーに対応するためのエンジニア需要が高まっている。これは毎年の傾向です」と、ある人材派遣会社がいう。とはいえ“すぐに欲しい”というオーダーなので、なかなか決まらないそうだ。

 スキル別では、「Webアプリケーション案件が増え、Javaプログラマーへのニーズが高まっています。ただし“Javaしか分かりません”というよりも、Java経験1〜2年+他言語経験数年、という要求です」という。つまり、求められているのは、トータルで5年くらいの開発経験があるJavaエンジニアだ。いまやJavaだけできるといっているようでは、経験不足と見られるのだろうか。筆者が担当している@IT Learning Deskでも、Java関連の集合研修は人気が高い。申し込む人の理由を聞くと、「Javaの案件が始まるから」という切迫したものが、実に多い。

 IPネットワークエンジニアの需要は引き続き堅調だが、要求されるスキルが上がっているそうだ。「いまは、運用だけでなく、設計・構築できるIPネットワークエンジニアへのニーズが高まっています。さらに、自社のネットワーク運用のマネージャとして派遣してほしいという依頼もあります。この派遣エンジニアには、部下となる社員のOJT(On the Job Training)もしてほしいのだそうです」という状況を聞くと、まだまだIPネットワークエンジニア不足は続きそうだ。

それが社内サポートデスクの仕事か?

 そのほか派遣案件として多いのは、社内サポートデスクのような業務。ただし、いままでのようにアプリケーションの使い方を教えるレベルではなく、「場合によってはネットワークの構築や運用管理までが求められます。いわば、社内の“ITなんでも屋”的な業務で、それなりの知識と経験がないと務まりません」といった案件だ。こうした派遣案件の単価はいくらなのか、気になるところだ。

 こうした例が端的に表しているのだが、依頼側の求めるレベルと、派遣エンジニア側のレベルのかい離が大きくなっているのが、最近の特徴だという。派遣を依頼する企業側は、景気が悪いから質の高い人材を安く使えるだろうと考えている。そのような心積もりがあるので、いままでなら問題にならないような点を問題にし、契約が途中でダメになることもあるという。

 派遣も景気が悪いと質の高い人材は流出せず、それが派遣案件の成約率を押し下げているようだ。

“寄らば大樹”では生き残れない

 今回のレポートでも何度か触れたが、景気が悪いとどうしても保守的になり、“寄らば大樹”となる。特に若年層にこの傾向は顕著だそうだ。こんな傾向に対し、ある程度スキルやキャリアのあるエンジニア向けに、人材紹介会社のベテランから次のようなコメントをもらった。

 「長期トレンドからすると、定年まで1つの会社にいられない情勢になりつつあります。大企業のサラリーマンほど、“自分だけは大丈夫だ”という意識が強いですが、それが通用しないのは明白。まずその現実から目を背けてはいけません。“寄らば大樹”の大樹は、もはや幻想にすぎないのです。このような潮流で必要なことは、2〜3年単位でキャリア/スキルの棚卸しをして、自分の市場価値を再確認し、そのたびに必要ならば軌道修正をし続けることです」。そのために人材紹介会社を積極活用してほしいのだそうだ。「私は人材紹介会社を“キャリア見直し機関です”といっています」

 人材紹介会社の印象を聞くと、「無理やり転職させられてしまいそうだ」というのがよくある。しかし、人材紹介会社が仲介した転職者が一定期間内に退職してしまった場合、人材紹介会社に違約金が課せられているのをご存じだろうか。そのため、とにかく転職させてしまえ、という考えでは事業は成り立たないのだ。また、人材紹介会社は10人に会って1人が転職してくれればペイできる収益構造となっているので、遠慮なく相談(だけでも)をしていいのだそうだ。たとえ本人が転職をしなくても、クチコミで利用者が増えればよいという。

主体的に仕事をする訓練を

 それに対して、スキルや経験の浅いITエンジニアはどう対処したらいいのだろう。そのことを人材派遣会社に聞くと、「人材派遣会社からしますと、何とかしてあげたいと思うエンジニアは、やりたい仕事が明確で、それについて経験がなくても独学などで努力をしていて、さらにそれを伝える能力を持っている人。そのように主体性のある人は伸びる可能性が高いと思います」

 それができれば始めから苦労しないのでは、と思わず聞き返すと、「確かにそうです。そうありたいと思うでしょう。だったら改善した方がいいのです。改善の第一歩は日常業務の中で、いろいろなことに問題意識を持つ訓練をすることだと思います」という。特に派遣業務だと、どうしても受け身(指示待ち)になることがある。その意識を払しょくし、常に“自分だったらこうする”とか、“この業務での問題点は?”と考える習慣をつけることだそうだ。それなら確かにできそうではないだろうか?

 先日行った@IT主催のイベント「IP Network Technology & Solution Meeting」で、ある講師のエンジニアが次のように語っていた。「いまの仕事の3倍仕事をするよう心掛けましょう。といっても時間的に3倍なんてできるわけないですね。そうではなくて、1つの仕事に3つの目的を見いだすということです。投資効果という観点から3倍というわけです」このような思考をすることも“主体性”を持って仕事をすることになるだろう。

 変化の激しいIT業界。いま身に付けているスキルは数年で陳腐化する可能性がある。スキルを積むことはもちろん大事だが、定期的にキャリアチェックする意欲や、主体的に仕事に取り掛かれる意思もキャリアアップには必要だろう。

■取材協力企業
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