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スキルやキャリアのため転職を考えているエンジニアに
特集:ITエンジニアのための転職基礎講座

千葉康介
株式会社セキュアシンク
2001/5/22

Part 3 転職支援サービス活用法

 転職には、これまで見てきたようなサービスを利用できるが、どのサービスをどのように利用すればよいのかわからないことがあるだろう。ここでは、ITエンジニアのスキルやキャリアによる、お勧めのパターンを紹介する。

忙しい現役ITエンジニアの場合
 忙しい現役ITエンジニアには、「人材紹介」をお勧めする。良い紹介会社を口コミや新聞で見つけ、その中からいくつかの紹介会社に問い合わせて訪問してみよう。この場合、後述する「人材紹介サービス活用法」を参考にしてほしい。

知識や能力はあるが、実務経験が少ない場合
 独習などで技術的知識・能力はあるが、ITでの実務経験がないか少ない場合は、人材派遣をお勧めする。まずは人材派遣会社に問い合わせ、実際に訪問したうえで登録(スタッフ登録)することになる。このとき派遣会社の人(コーディネーター)と会い、ヒアリングを受けるが、ここで積極的に自分のキャリアやスキルをわかりやすく伝えよう。実際に派遣先が決まったら給与、保険、契約期間などのポイントを確認し、慎重に契約する。

 人材派遣会社によって、IT関連の教育・研修制度を持つところがある。こういう人材派遣会社に登録する方法もある。教育や研修でスキルを上げたうえで派遣されることになる(表3I)。

 一般のスキルアップ研修は、無料か低価格で受講できるところが多い(抽選などで全員が受講できないところもある)。ITスキルのトレーニングは、専門的かつ高度なため、派遣会社で受講するほうが金額はお得だが、一般的に高度なコースほど価格は高い。なお、登録スタッフとして研修制度を受講し、資格を取得した場合は、一定期間その派遣会社から企業に派遣されるような契約なので、この点もきちんと理解して受講したい。

 人材派遣会社がITの教育・研修制度を持つのは、所属する派遣スタッフの価値を高めることで時給を上げ、それによって人材派遣会社の収益を底上げする効果がある。最近では、インテルとテンプスタッフがITエンジニア養成する共同事業を発表した(「テンプスタッフ、インテルとLinux/Javaエンジニア育成事業(@ITNews)」)。

 この事業では、テンプスタッフが設立したエクストという会社で、ITエンジニアに対してJavaなどのトレーニングを行い、インテルやインテルのeビジネスソリューションメンバー企業群にテンプスタッフから派遣される仕組みだ。

 今後もベンダと人材派遣会社との協力による新しい派遣形態(というよりも、新しい人材教育派遣とでも呼ぶべき新しいビジネスか)も多くなるので、こうしたサービスを利用してもいいかもしれない。

Webサイト名
教育・研修制度の内容
アイティット ベンダー資格取得奨励制度として、Cisco(CCNA)、ORCLE MASTERのトレーニング・コースを複数用意している
Enginner.jp 無料の基礎コースとして、「ネットワーク入門」「データベース入門」などを用意。その他にもベンダー資格コースも用意されている(こちらは登録スタッフならば特別価格で受講可能)
etech 自社主催のものから外部が運営するコースまである。内容は、基本的なものからベンダー資格まで多数ある。教室、Web Based Training、自主教材など、受講方法も選択可能。スタッフはすべて特別価格で受講できる
表3 ITエンジニアに強い転職サイトの一部から、登録スタッフ用の研修制度があるサイトを抜粋した

技術一本で独り立ちを狙う場合
 十分な技術力があり、技術一本で生きていけると思うITエンジニアには、人材派遣がお勧めだ。自分の技術を売ると割り切って考えて働きたい人には最適だろう。

■人材紹介サービスを上手に活用しよう

 理解しておきたいのは、“ITエンジニア不足”という追い風を受け、IT専門の人材紹介への新規参入が続いていることだ。従って、IT専門と看板を掲げていても、新規に設立された人材紹介会社や、実績のない人材紹介会社では、その内容や水準はよくわからないことが多い。

 そのため、口コミや実際に利用した人(いれば)から情報を得て、本当にIT分野を得意とする紹介会社を選ぶようにしたい。

 IT分野に強いかどうか迷うときは、実際に人材紹介会社に問い合わせてみてもよいだろう。実際にコンサルタントと会うことで、IT分野に詳しいかどうかわかるからだ。

 ただし、IT分野の得意な紹介会社の転職コンサルタントでも、転職希望者の実際の技術レベルや業務レベルについては、基本的に理解してもらえないと考えたほうがよい。

 人材紹介会社に登録すれば、後は人材紹介会社が何でもやってくれるわけではない。人材紹介会社のコンサルタントは、ITに詳しくとも、基本的には人事やキャリアプランのプロであり 、ITのプロではないことを理解してほしい。

 そのため人材紹介会社を利用する場合、次の点は人材紹介会社任せにするのではなく、自分で積極的に行う必要がある。

  • 自分の業界センスに基づき、転職先の具体的な希望をコンサルタントに説明する
  • 自分の技術を転職先の人事担当者、予定配属先の上司にわかりやすく説明する
  • 紹介がうまくいかない場合、その原因(自分の技術と希望転職先が合わないのか、人柄の問題か、依頼している紹介会社が適当でないのか)をきちんと確かめて対応する

 自分のキャリアやスキル、転職先で何をやりたいのかを、ITのプロではない人事のプロ(人材紹介会社のコンサルタント)や紹介された企業にわかりやすく説明できれば、それだけでも好印象を与えられる。ITエンジニアを欲している企業は、コミュニケーション能力の高い優秀なITエンジニアならば、いつでも入社してもらいたいと考えているからだ。

■転職護身術を身に付けよう

 転職支援サービスを利用したからといって、トラブルに巻き込まれないということはない。さまざまなトラブルに巻き込まれることもあり得る。

 「転職した会社がつぶれた」とか、「約束した労働条件と違う」というような話はよくある話。しかし、これは読者の賢明な業界センスや判断力にお任せするしかない。

 問題は、本人の知らない手の届かない部分にある。「ある転職サイトに登録したら、知らない人材紹介業者から次々と勧誘が来る」とか、「以前人材紹介会社に登録したが、途中で断ったはずの人材紹介業者から連絡が来る」といった“個人情報”を巡る問題である。

 新規参入により人材業界が拡大しているということは、当然とても親身になって律儀に支援してくれる人材紹介会社もあれば、いわゆる「名簿販売業者」のような会社もある。

 転職支援サービスの利用は、詳細な自分の個人情報を他人(他社)に預けるということにほかならない。そこで、ここでは注意すべき点を紹介しよう。

会ったことも話したこともない相手に、詳細な個人情報は開示しない
 実際に面談かメールでのやりとりをした後に提出するか、匿名サービスを利用する。匿名であっても職歴から個人が特定できる場合があるので、注意する必要がある。

転職支援サービスの利用は、数社までにとどめる
 複数の人材紹介会社のコンサルタントと会い、感覚的に(応対やオフィスの様子)信頼できそうな会社に絞って利用する。個人情報の拡散を防止するという意味もあるが、ある程度の規模の人材紹介会社であれば、人材募集中の企業の大半はカバーしている。従って、多数の紹介会社を利用しても、紹介先が重複するだけで非効率だ。

Web経由で個人情報を送る場合は、サイトの管理状況を確認する
 Webサイトの管理状況を実際に確認することは難しいが、少なくとも運営者がだれか、SSL対応であるかなどは確認したいところだ。また、会社概要や電話連絡先などの基本的な事項が、きちんと記載されていることも最低条件だろう。なんとなく「怪しい」サイトは、当たり前だが避けたほうがよい。

 それでは、実際にトラブルに巻き込まれたらどうすればよいのか?

 その場合、加害者側が適法な職業紹介事業者、派遣事業者の場合であれば、監督機関であるハローワーク(公共職業安定所)に相談しよう。このとき、前述の許可(届け出)番号を伝えると話は早い。

 人材派遣会社を利用する場合も、基本的に上記と同じようなことに気をつけよう。実際にトラブルに巻き込まれた場合は、ハローワークのほか、日本人材派遣協会相談センターの相談窓口(全国で8カ所)、Webサイトでも派遣労働者の悩み110番や派遣労働ネットワークなどに相談するといいだろう。

■将来も変わらないものは?

 いまから約5年前のIT業界では、現在のような状況は予測できなかっただろう。同じように、5年後のIT業界がどのようになっているかは正確にわからない。自分はITと関係のない業界にいるかもしれないし、世間では“バイオエキスパート”の不足が叫ばれているかもしれない。

 確かなのは5年後も「どこかしらの業界に自分がいる」ということだ。

 「売れっ子」でずっといるためには、「変化への対応力」ということが要るのではないだろうか。世の中の変化を読み取り、そのベクトルに合わせて自分の能力、技術に磨きをかける。IT業界でもそのほかの業界であっても、共通していえることだ。結局のところ、キャリアとスキルを磨き続けていれば、いつでもだれからも引っ張りだこの人気者になれるはずだ。

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Index
ITエキスパートのための転職基礎講座
  Part 1 転職は目的を実現するための手段
  Part 2 転職支援サービスを理解しよう
Part 3 転職支援サービス活用法

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