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XML業界は圧倒的な人材不足
特別寄稿:いまこそXML技術者を目指そう

Advanced IT School
学長 川俣 晶
2001/7/5

  IT業界の人材不足

 この5月に、XMLを中心としたIT教育の場としてAdvanced IT Schoolを開校した。筆者はそこで学長という肩書きをもらってしまい、XML教育の渦中に入り込むことになってしまった。しかし、なぜいまこの時期に教育なのだろうか。その理由は、IT業界の人材不足という状況にある。

 日本では失業率が高いにもかかわらず、IT業界では人材不足が続いている。いわゆる「人材需給のミスマッチ」というものだ。つまり、失業者が多数いるのに、欲しい技能を持った人材は極めて乏しく、雇用したいと思っても雇用できない状況が続いている。

 しかし、すべての分野で人材不足が続いているわけではない。例えば、HTMLを勉強してWebデザイナーになろうという人たちは極めて多く、不足どころか過当競争状態である。確かにWebサイトをデザインするというのは、現在最も目立つ花形職業のように見えるし、品質を問わなければWebサイトをデザインするための技術は、それほど高度なものではない。皆が殺到するのは当然のことかもしれない。

 もっとも、これは「品質を問わなければ」という条件が付く話である。現在、プロを自称するWebデザイナーの大半は、HTMLの仕様書も読んだことがなく、自分が書いているHTMLが本当に正しいHTMLかどうか確認する手段も知らない。そういう観点からいえば、品質を意識するならWebデザイナーも圧倒的な人材不足である。

  特に人材不足のXML

 さて、中でも最も人材不足が著しい分野の1つが、XML技術者である。XMLは入り口は狭そうに見えるが、中に入ると目もくらむほどの広さのある技術である。しかもXMLはまだまだ若く、現在成長途上にある技術である。XML関連の教育を行っている組織も少ないが、それ以前にXMLを教えられる人材が極めて少ない。そのうえXMLという言葉そのものがあまり知られていない。森前首相のおかげでIPv6という言葉は世間が広く知るようになったが、それと同等、あるいはそれより重要かもしれないXMLは、あまりにも世間に知られていない単語である。また、XMLという言葉は聞いたことがあっても、意味を知らない人も少なくない。そういう状況なので「よしXML技術者を目指そう」と思う人たちが増えるわけでもない。

 一方、XMLといえばBtoB電子商取引や電子政府で使われる言語なので、BtoBや電子政府をやろうとすればXML技術者が必要となる。現在日本でも徐々にではあるが、これらの分野に動きが見られる。そこで、根強いXML技術者へのニーズが発生しているのだが、上記のような状況のため、まったくニーズを満たすにはほど遠い状況が続いている。

 これらのニーズを現在のWebデザイナーでは満たすことができない。BtoBや電子政府とは、省力化によるコストダウンを目指したものなので、そこで使われるコンテンツはインターネットを経由して配布されるが、中身はコンピュータにとって読みやすい文書である。しかし、現在のWebデザイナーは、色や画像など、人間にアピールするための機能を扱うことが自分たちの仕事だと思っている者が多く、彼らにコンピュータに読ませるための文書作成を任せるのは絶望的に困難である。つまり、大量に世の中にいるWebデザイナーが、入門書を1冊読めばXML技術者になれるというものではない。だからWebデザイナーが何人いようと、XML技術者不足には何の助けにもならない。

 しかも、ここをよく注意してほしいのだが、日本のBtoBや電子政府はようやくこれから始まろうかという時期である。つまり、現在のXML技術者に対するニーズは、先行する試験的なプロジェクトに対するニーズでしかないということである。その状況ですら人材はまったく足りていないのに、もし、BtoBや電子政府の構築が本格化したらどうなるのか?

 もちろん、本当に日本でBtoBが普及するのか、電子政府が本当に構築されるのか、という問題もある。実現しなければ膨大な数のXML技術者は必要とされないかもしれない。だが、XMLがインターネットの基盤技術として採用されているという事実に変わりはない。つまり、XML技術者へのニーズがなくなることは考えられない。

  XMLには未来の人生がある

 結論を書こう。まだ、自分の将来を決めあぐねているなら、XML技術者は有力な候補になるだろう。みんながXMLを目指すようになってからでは遅い。いまXMLを目指せば、XML関連プロジェクトの中核となるポジションに立つ技術者になれるだろう。これほど安全で、しかもリターンが確実な道はそうそうあるものではない。

 決して根拠のない話ではない。そもそもAdvanced IT Schoolが作られたことそのものが、各方面がXML関連の人材を強く求めている証拠なのである。Advanced IT Schoolを運営するサンブリッジ テックユーという会社は、ベンチャー企業を支援するサンブリッジの子会社である。つまり、人材不足という現実に直面し、ビジネスを拡大する余地があるのに人手不足で泣いているベンチャー企業を支援するには何が必要か、という観点から導き出された結論が学校の創設なのである。

 ただし、ベンチャー企業の関係者しか教育を受けられないということはまったくない。門戸は広く開け放たれている。Advanced IT Schoolの講座を受けたからといって、ベンチャー企業に就職する必要はないし、ベンチャーではない企業の技術者が研修に利用しても構わない。要するに技術者層が厚くなれば業界全体に恩恵があり、回り回ってベンチャー企業にもプラスということである。業界全体が盛り上がることは、そこに属するすべての企業に恩恵があるものである。もちろん、Advanced IT Schoolではなく、どこでXMLを学んでもよい。

 ともかく、XML技術者が足りない。そして多くの企業がそれを待っているのである。将来を決めかねている君、XML技術者を目指してみないか? それは未来の社会を構築するための社会貢献でもあるのだ。

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