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第25回 やっぱり無視が一番? 自己中上司の暴走白書

Tech総研
2006/3/24

自己中心的、略して「自己中」な人が職場にいると、周囲の人間は振り回されてしまう。アンケートによると、仕事中に出会った「自己中な人間」の半数以上が上司に該当するという。自己中人間の暴走行為を見ながら対策を考える。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

  その1
もう誰も止められない、自己中上司の“史上最凶”伝説

 過去、Tech総研ではエンジニアの人間関係にまつわるトラブル事例を題材にした記事を多数掲載してきた。上司や顧客、営業といったトラブルを起こす相手や、SE・プログラマ、研究開発部門といった業種・職種まで、ありとあらゆるシチュエーションを紹介してきた結果、ある1つの共通点を見いだすことができた。

図1 仕事中に被害に遭った「自己中人間」は誰?

 それが今回のテーマ、「自己中」。ワガママで身勝手、常に自分のことしか考えず、都合が悪くなると仕事を丸投げして他人に責任を押し付ける……。人間関係トラブルの「元凶」ともいえる自己中人間は、われわれの職場環境に多数生息している。

 今回、200人のエンジニアに「身近な自己中人間とのトラブル事例」について聞いてみたところ、6割近くが「自己中人間=上司」と回答(図1)。

 回答者の多くが20、30代ということにも起因するが、それだけ身近な上司に悩まされているエンジニアが多いことも事実。

 まずはそんなエンジニアたちを苦しめる、自己中上司が引き起こした暴走行為の数々を紹介したい。

ケース1
逆ギレ上司編
「オマエがどうなっているかと聞かないからだ!」
被害者:システム開発・29歳

エピソード

 ある仕事をお願いしたのだが、上司がすっかり忘れてしまい、それを棚に上げて納期までに仕事ができないことをみんなの前で怒られた。上司が忘れたことを告げると今度は逆ギレ、「オマエがどうなっているかと聞かないからだ!」とますます怒られた。

その後……

 上司に頼んだことも含め、その日のうちにすべて自分で行い、何とか間に合わせた。

まだある! 「逆ギレ」厳選エピソード

 上司ができそうもない案件を強引に推し進めようとした。メンバー全員が「やめた方がいい」「納期を延ばしてほしい」と散々いったのだが、「努力が足りないからだ!」と残業を強要。結局導入に失敗し、その後のミーティングで「何やってたんだ!」とキレられた……。強引に進めたのは誰だよ!(被害者:システム開発・29歳)

 システムのデバッグ中、上司がマシンのクラッシュボタンを押してしまった。みんなが騒ぐ中、「オレが押した、押して落ちるのが悪いんだ!」と勝手なことをいって逆ギレ。(被害者:システム開発・34歳)

 ツールの導入時に「システム分野は分からないので、契約書が妥当かどうかの判断は任せる! 問題なければそれで契約を」といっておきながら、いざ契約となったとたんに態度が激変。「一度ちらっと契約書を見せられただけで説明を受けていない!」と怒鳴りだし、揚げ句に「オレをバカにしている」などといい出した。(被害者:社内情報システム・31歳)

 「このままでは資金繰りがショートしますよ」と毎回のようにいっていたら逆ギレ。「銀行から借りるからいいよ!」といわれた。(被害者:コンサルタント・31歳)

 客先でトラブル発生。担当の上司が技術的な部分を質問された。すると「私は技術的なことは分からない」といい出し、揚げ句の果てに「だったらどうしたらいいんだ!」と逆ギレ。残件をすべて押し付けられた。分からなければ技術部門に問い合わせるなりして自分で調べればいいものを、部下にすべて丸投げする。(被害者:SE・36歳)

ケース2
ワガママ上司編
「そんなシステム、オレは使いたくない!」
被害者:社内情報システム・33歳

エピソード

 新しいシステムを導入し、その説明会などを行うとき、仕事が忙しいという理由で出席しない。別途日を改めて説明会を開いても結果は同じ……。説明を聞かないから、当然システムは利用できないし、揚げ句の果てに「システムの出来が悪い」とうわさを立てる始末。しかし実際は「そのシステムを利用したくない」というワガママからきている。

その後……

 「システムを使わないと業務ができない」社内ルールを作ったため、渋々説明を聞き、システムを使おうとしている。

まだある! 「ワガママ」厳選エピソード

 実験結果を報告したところ、上司の過去の経験ではあり得ない事象だったらしい。私はデータに基づき説明したのだが、「オレの感覚に合わない!」のひと言で実験はやり直し。結果は同じで、ほかの同様の実験結果の傾向もすべて同じ。そこまで調べ上げてもまだ疑われた。(被害者:研究・29歳)

 普通なら試作品を作るのに1カ月かかるところ、「やるといったらやるんだ」というむちゃくちゃな指示。結局10日で作らされた。ところがせっかく作ったのに、この実験のアホ主任はテストせずに放っているという情報が! もうあのバカのいうことは絶対聞かん。(被害者:機械・機構設計・39歳)

 周りから「無駄だ」と反対されたにもかかわらず、自分が思いついたことを「いいからやって」とゴリ押し。結果「何でこんな無駄なことをしているんですか?」と客に怒られていた。(被害者:運用保守・26歳)

 仕事が忙しいときでも、自分が定時と決めたら定時で帰る。しかし自分が忙しいときに別の人が定時で帰ろうとするとごねる。ワガママすぎてどうしようもない。(被害者:品質管理・31歳)

 社内に新業務システムを導入することになったが、現場の人間と仕様のすり合わせをすることなく、自分で勝手に仕様を決め、導入を断行してしまった。現場が求めているものとは懸け離れたシステムだった。(被害者:テクニカルサポート・31歳)

ケース3
責任転嫁・丸投げ上司編
「実は担当者の作業遅延で……」
被害者:システム開発・30歳

エピソード

 納品物であるドキュメントを、納品日直前に上司がバックアップファイルごと消去。そのことを客にいい出せず、ありもしない物を「すぐに納品します」と報告。私たちに「提出しないわけにはいかない!」と徹夜でリカバリさせたが結局間に合わず……。その後、上司は客に「いや、実は担当者の作業遅延が原因で……」とひと言。

その後……

 働くだけ働かされて、結局、泣き寝入り。

まだある! 「責任転嫁・丸投げ」厳選エピソード

 自分が稟議書にサインして、電気街の返品不可の激安店で買ってこいと指示したにもかかわらず、購入した非純正品パーツがマシンに取り付けられなかったとき、経費で落とすのがいやだといって部下に自腹を切らせた。(被害者:システム開発・34歳)

 プロジェクトリーダーが、会社によく思われたいために、メンバーの残業をすべてカットした。仕事の質問をしても「自分で考えろ」としかいわず、指示どおりしたことに対しても「そんなこといってない」といちゃもんをつける。(被害者:運用保守・32歳)

 「(ポンプの)ストレーナが詰まっているので清掃するぞ」と誘っておきながら、現場に出たとたん「オレは健康診断に行ってくるからよろしく」といって私1人に清掃を押し付けた班長代理。他人の前ではいかにも仕事をしているみたいに振る舞うが、実は何もしていない。(被害者:生産技術・29歳)

 上司は顧客に、誤ってほかの顧客の名前の入った提案書を出してしまうことがあるのだが、なぜか毎回、関与もしていない私の責任にされてしまう。(被害者:コンサルタント・27歳)

 考え方がとにかく自己中心的。普段から「他人を踏み台にすることに抵抗はない」と公言している。実際、面倒な仕事は人に任せ、自分は常に楽をしようとする。部長という立場にありながら部下の仕事の管理をせず、部門間の調整も一切しようとしない。(被害者:ネットワーク設計・30歳)

ケース4
ゴーイングマイウェー
上司編
「検証は心を込めて、目と手で突き合わせるものだ!」
被害者:システム開発・38歳

エピソード

 プログラム修正結果の検証の際、2000件余りあるデータの比較検証にMicrosoft Excelを使ったところ、「検証は心を込めて1件1件、目と手で突き合わせるものだ!」と譲らず、1日がかりの検証作業を強要された。

その後……

 周囲はすべて、上司の理不尽な命令を黙認している状況。当然助けがくることはなく、黙々と作業をこなした……。

まだある! 「ゴーイングマイウェー」厳選エピソード

 部署の会議に参加を強要する上司。しかも勝手に日時を決めてしまう。一方、自分は客先への予定を優先して行動するため、会議に参加できないことも……。でも部下が同じ理由で会議を欠席すると、「会議をおろそかにするとは何事だ!」と文句をいう。(被害者:通信設計・38歳)

 パッケージソフトに必要ない機能を追加したがる。「こんな機能いらないのでは?」というと「何も分からないお前たちは黙ってろ!」「この機能があれば絶対売れる!」と激怒。ちなみにソフトは全然売れていません。要は自分が使いたいソフトを社員に作らせているだけという感じ。正直いって、わが社に未来はないと思っています。(被害者:パッケージソフト・ミドルウェア開発・37歳)

 とにかく時間にルーズな上司。ミーティングに1時間遅れてきても「オレは忙しいんだ!」と一喝……。わが道を行き過ぎて誰も相手にできません。(被害者:パッケージソフト・ミドルウェア開発・29歳)

 自分のスケジュールに合わせて仕事を進めるゴーイングマイウェー上司。しかし周囲が残業しているときに自分1人で帰るのはさすがにバツが悪いらしい。そんなときは、人の仕事を途中でやめさせ仲良く帰宅。仕事が進まない……。(被害者:運用保守・29歳)

 打ち合わせをしたいといわれ、休日なのに予定を空けておいた。当日、勤務先で待っているとあっさりドタキャン。これが一度や二度じゃない。都合が悪いんなら先にいって! ていうかこっちを優先してよ!(被害者:制御設計・26歳)

ケース5
あり得ない上司編
「貧血でもうダメ」、その後計画有休で遊びに……
被害者:運用保守・30歳

エピソード

 トラブルのため、客先でシステム改善について打ち合わせしていたときのこと。打ち合わせが深夜に及んでみんなの顔に疲労の色が浮かんできた。すると上司が急に「貧血・体調不良でダメだ……」と床に倒れ込み、先に帰宅。だが次の日、「計画有休で元気に遊びに行った」との話を聞いてがくぜん。

その後……

 お客さまからは「大丈夫ですか?」と気遣われているが、社内での信用はがた落ち。

まだある! 「あり得ない」厳選エピソード

 仕事で嫌なことや面倒なことがあると2、3日行方不明になる。(被害者:システム開発・33歳)

 同期がどんどん出世していくのを見て出世欲に目覚めてしまったのか、取引先との接待を連日繰り返した某上司。その費用として会社のお金を使い込み、現在横領罪で服役中。(被害者:回路、システム設計・26歳)

 「子どもが風邪をひいたから休む」と当日欠勤したのに、次の日パーマをかけて普通に出勤してきた。非常識すぎる。(被害者:半導体素材開発・34歳)

 中に危険な液体が入っている場合でも、部下に対してその配管を取り外せと命令する上司。しかも自分はそれを絶対に手伝わない。(被害者:品質管理・35歳)

 スケジュールが緊迫している中、体調不良で休んでしまった自分について「この状況で休むなんてプロジェクトに対する取り組み姿勢を疑う」と上に報告していた上司。でも同じ日、彼は「いも掘り」で休んでいた。こちらこそどう考えているのか聞きたい。(被害者:システム開発・30歳)

 

その2
自己中上司ベスト対処法はやっぱり「無視」?

 「バカにつき合う時間はない!」今回のアンケート結果で、回答者は一様にそんなニュアンスの言葉を発していた。

 確かに回答のほとんどは「無視するに限る」といったシンプルなもの。しかし分析すると「何をいっても無駄」「いってどうにかなるようなら……」というあきらめムードが漂っていることに気付かされる。

 加えて興味深いのは、ほとんどの被害者が「最初はガマンしていたが耐えかねて爆発」→「理論武装して対決」→「日本語が通じない」→「そしてどうにもならなかった」という段階を経ていまに至っていること。つまり被害者たちは、いったんは世のため人のために戦う気持ちを抱く。しかし、「自己中」の前に常識は一切通用しない。なぜなら彼らには最終兵器「キレるが勝ち」があるからだ。

 しかし、彼らが生息しているが故に、仲間の団結力が強くなったという報告も。「そういうヒトだということは皆承知のうえなので」と、社内の総力を挙げてバイオハザード対策を敷いている風潮もある。

 「諸君、かかわるだけ時間の無駄だよ! そんなことよりまずは仕事に集中だ!」と無視してしまうか、「いいやアカン! 働くものにこそ癒しは必要なんだ! 徹底的に排除して職場を聖地に!」と戦いを仕掛けるか。いまのところその選択は、属する職場の風土によって二分されている。あなたなら、どちらを選ぶ?

コラム:理論武装で反撃したら危険? 自己中上司の暴走を阻止するためには

 もはや史上最強の天敵と称してもいい存在の自己中上司。この強敵に立ち向かう実践的なアドバイスを求めて、専門家であるメンタルヘルス研究所 今井保次氏にお話を聞いてみた。

財団法人 社会経済生産性本部 メンタル・ヘルス研究所 研究主幹 今井保次氏 1980年以来、産業人のメンタルヘルス向上のための仕事に従事。現在は220万人のデータを駆使して、個人の健康と組織の健康を媒介する変数を探索中。

・「自己愛性人格障害」とは?

 自己中心的な振る舞いで問題を起こす人は、パーソナリティに病的なゆがみを抱えていることが非常に多いのです。自分を評価してほしくてたまらないという極端な自己愛。無条件に自分を受け入れてほしい、すごい人だと一目置かれたい。周囲の迷惑を顧みず、他人をけ散らしてでものし上がっていく。目的のためには手段を選ばず暴走する。私たちの世界ではこれを「自己愛性人格障害」と呼びます。

・自己愛性人格障害気質の人が増えてきた?

 小さいころ、周りの大人に「すごいわね、偉い偉い」って褒められたでしょ? このことで子どもは万能感や達成感を得ることができます。これはとても大切なことで、この経験がないまま大人になってしまうと、本来満たされているはずの部分が欠落して穴が開いてしまうんです。だから足りないものを補おうとして、彼らは暴走し始める。

 普通、社会で孤立したら生きてはいけませんから、多くの愛や信頼を得るための努力をします。しかしこのタイプは自分を認めてくれる人は良い人、そうでなければ敵として扱います。特定の客や上司の心さえつかんでおけばいい、そのほかは無視するとかね。そんなふうに考えるから周囲に対してどんな傍若無人な振る舞いでもしてしまいます。

・自己中上司と共存するために。まずは真っ向から反撃しないこと

 自己中タイプには真っ向から向き合っちゃダメなんです。それよりも大切なのは、「現状の被害や双方の関係をこれ以上悪化させないこと」「自分と仲間の身を守ること」。間違っても「この人を変えてやろう」なんて思ってはいけません。人格部分を否定する発言も厳禁です。

 アンケートでもいくつか回答が見られましたが、「むちゃくちゃなことをいわれても冷静沈着に切り返し、理論武装でぐうの音も出ない状態にした」という対応をする方がいますよね。でも、実はこれが一番悪いやり方なんです。逃げ道のない状況に追いやられれば、彼らの「認められたいエネルギー」は邪魔なあなたを抹殺することに向けられます。とにかく手段を選ばないのですから、どれだけ「こいつバカだ」と思ってもそれはのみ込まないと(笑)。

 不用意に相手を挑発しても自分が痛い目に遭うだけ。自分を見失って相手にほんろうされてはいけません。

・触らぬ神にたたりなし! だからやっぱり無視が一番

 自己中上司に出会ったら、反面教師として活用するしかありません。こうすると嫌われるんだなとか、こうしたら信頼を失うんだなとか、貴重なマイナスモデルだと思うことです。

 相手は変わらない。ならば自分の気持ちを切り替えるしかない。どんなに不利益を被っても、あなたさえしっかりと自分のスタンスを貫き、自分のなすべきことをしていれば、必ずまたチャンスは巡ってきます。焦らずいじけず、時々は酒でも飲んで仲間とぐちる!

 上司が人格者でないのなら、あなたが人格者になりましょう。


☆ことわざだと「ばかとはさみは使いよう」か

 エキセントリックな暴走行為に目を奪われるが、記事末尾のコラムにある人格障害の解説と対策が役に立つ。ただし「人格障害」は専門用語なので、素人は下手にこだわらない方がいいと思う。コラムにあるとおり抵抗や説得は不毛な結果に終わる可能性が高いので、相手の話を聞ける人間でなさそうなら、できるだけ関与しないことをお勧めする。

 押さえておくべきなのは、彼らは特殊なパーソナリティ(人格)を持つということだ。社会の多数が持つ感覚、人間性、行動規範から懸け離れているため、予想外の行動に周囲は困惑し、不和が起こることになる。

 こうした人は責任を負うなどの強さに欠け、他人の気持ちを推測する能力に欠けている。逆にいえばすぐに音を上げる弱さがあり、自分のことしか考えられない。人間性の発育不全または機能障害のようなものだ。

 よく観察すると、彼らの暴走行為の理由は意外と単純である。自分の利害にとても素直だ。昔の人は「ばかとはさみは使いよう」といったが、これはまさに人格障害の人を指しているのだと思う。特殊な人は特殊な能力で周囲に恩恵をもたらすことさえある。うまくあしらうようにしよう。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


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