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第29回 エンジニアの生“給料明細”拝見!

Tech総研
2006/6/30

給料明細と家計支出を見るとその人のキャリアや生活ぶりが浮かび上がってくる。自分のものと比べてどうだろうか。自分の生活を改善するヒントとなるか。(Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載)

 

Part1
2年前にマンション購入。子ども2人を抱え、生活は楽じゃない


CASE1
私が公開します――浅田等さん(仮名)の場合

あと2〜3年たてば給与も上がると期待するが

浅田等さん(仮名)

33歳。高校卒。大手電機メーカーで半導体メモリ開発を行う。在職14年。既婚、妻(無職)と5歳、1歳の子ども2人

 メモリ開発といっても担当は製品技術。工程の最初から最後までをひと通り知っていないと仕事にならない。一方で専門に特化した技術の知識が浅くなり、「何でも屋」になりがちな職種でもある。しかし、浅田さんには自分たちが製品を世に送り出す「母親役」であるという自負がある。半導体メモリ市況は好調で、浅田さんも自分の仕事が会社の業績に貢献しているという思いは強い。それが給与やボーナスに反映されているのであれば、何の問題もないのだが……。

 給与の支給総額は、基礎給+職能給+職務給、それに勤務地加算給からなる基準賃金に、扶養手当、時間外手当、住宅手当、通勤手当などの諸手当を加えたもの。税金、保険料などが引かれて手取りで27万7000円前後だ。

 2年前にマンションを購入しており、住宅ローンの9万2000円が最大の支出。まだ子どもは小さいが、学齢に達するようになると、いろいろと出費も増える。今後の子どもの成長を考えると、給与アップを真剣に考えなければならないが……。

 「私の会社では、30代半ばからようやく社内の職能・職務資格の昇格で手取り額に差が表れるようになります。昇格試験のようなものはないので、資格を上げるには、ひたすら年に1回の考査で良い成績を維持する必要があります。あと2〜3年以内に主務という資格に上がらないと、エンジニアとしても会社員としてもダメだと上司にはいわれているんですけれどね」

 浅田さんの会社では、2年連続で一定以上の評価を得られれば次の年には資格がアップし、給与に反映する仕組みを取っている。評価は上長の課長クラスの人が行い、面談で通知される。評価には個人の業績を反映するとはいうものの、部署内の評価分布率は決まっており、面談で自己アピールしたからといって見直されることはない。面談は「上司に説得されて納得する場でしかない」と浅田さんは少々不満げだ。

 残業は毎月30時間ベースでそれほど多くはない。しかし、仕事の「激烈さ」は年々増している。「メモリ製品も少量多品種化の時代。それだけ仕事の手間が増えることを意味します。品質保証の面で過剰品質の部分を発見し、いかに工程を合理化して工期を減らすかが私の仕事ですが、それが品質ダウンになってしまうと元も子もありません」というジレンマに悩む。


浅田さん(仮名)の給与明細(大手電機メーカー勤務/高卒/33歳/既婚)
支給
控除
手取り額
基準賃金   健康保険料
8,960
          
基礎給
59,000
厚生年金保険料
22,860
職能給
84,000
雇用保険料
2,655
職務給
88,000
所得税
5,430
勤務地加算
14,000
企業年金基金掛金
2,208
そのほかの賃金
食事代
9,254
次世代育成手当
29,000
共済型団体生命保険
150
時間外勤務手当
39,000
組合費
4,176
住宅補助
10,000
 
 
通勤手当
9,000
 
支給額合計
332,000
控除額合計
55,693
276,307

主な家計支出
住宅ローン
92,000
住宅管理費
22,000
生命保険
32,000
固定資産税
8,000
幼稚園月謝
11,000
公共料金
24,000
通信費
20,000
自動車維持費
12,000
教会寄付
32,000
食費
70,000
交際費雑費
30,000
 
支出合計
353,000
そのほかの収入
家賃収入
50,000
昨年度の年収
約5,500,000
現在の預貯金
約1,000,000

毎月約3万円の赤字をどうにかしたい

 浅田さんは、業務委託先の企業への出向で、今年の初めまで海外に1年ほど家族を帯同して赴任していた。日本から給与を受け取りながら、委託先からも現地通貨払いで給与を受け取り、通常は「海外勤務太り」するはずだった。しかし、意外と出費が多く、思いどおりにはならなかった。これは大きな誤算。住宅購入でそれまでの預貯金はすべて使い果たし、海外赴任でも貯蓄ができず、現在の貯金は100万円ほどしかない。

 「あらためて毎月の支出を計算してみたら、支出合計が約35万円。単純計算だと毎月3万円近くの赤字で、これはまずい。赤字分をボーナスで補てんすると貯金に回せないし、かといって、生活費のどこを見直したらいいのか」

 ちなみにボーナスは昨年実績で45万円×2(税込み)だった。

 浅田さんの支出で住宅費以外に目立つのは、「教会寄付」の項目。夫婦共にキリスト教の熱心な信者であるため、収入の10%を寄付している。教会に通うことで信仰をよりどころにした心の安定が得られるし、ほかの信者とのコミュニティ活動も生活の張りになるので、これは避けようのない支出だ。

 「あとは、電気代などの公共料金ですかね。マンションが広くなったので確かに増えたのですが、もう少し切り詰められないだろうかと妻といま、検討しているところです」

 

Part2
残るはずのお金が残らない。残業代、住宅補助カットに危機感


CASE2
私が公開します──塚原良博さん(仮名)の場合

周りがみんな結婚し、自分はご祝儀でやせる一方

塚原良博さん(仮名)

31歳。九州出身。大学院修了。電子部品会社に勤務して7年目。現在の業務は携帯電話ユニットの設計で主に機構設計を担当。独身

 携帯電話に搭載されたユニット。これをどこまで小さく作れるか──塚原さんの目下の技術テーマだ。大学は農学部工学科出身。トラクターなどのメーカーに就職する同期もいたが、自分はもっと小さいものが好きだった。趣味が熱帯魚観賞ということと共通する志向性かもしれない。

 給与の支給額は、基準月額+諸手当で約37万円。院卒7年目の技術者としては平均的。そこから約10万円引かれて、4月分の手取り額は26万5829円だった。控除分には月2万円(ボーナス時5万円)の財形貯蓄も含まれる。単純計算なら7年間で最低でも200万円はたまっていなければおかしいが、実際の貯金額は10万円そこそこ。

 何に使ってしまったのか、実は本人にもよく分からない。

 「この数年、鹿児島の友達が結婚するようになり、田舎での結婚式に呼ばれる頻度が高くなりました。往復で交通費が10万円。ご祝儀もはずむとなるとさらに出費が増えます。それ以外にも、夏と冬の帰省も欠かせないので、交通費・交際費が年間数十万円単位で出ていっていることになりますね」

 支出項目に「帰省費用」を立てて、月に平均して2万1000円と見積もってみた。それでも手取り月収から支出総額を引いても毎月10万円以上残ることになるが、「何でかなあ、残りませんねえ」


塚原さん(仮名)の給与明細(電子部品メーカー勤務/大学院卒/31歳/独身)
支給
控除
手取り額
基準月額
255,710
健康保険料
10,584
         
時間外勤務手当
29,995
厚生年金保険料
25,718
住宅補助
50,000
雇用保険料
2,916
交通費(6カ月分)
28,840
所得税
14,810
諸課税額
5,000
住民税
18,600
  組合費
4,160
労金労災
1,150
食事代
5,778
財形貯蓄※1
20,000
 
支給額合計
369,545
控除額合計
103,716
265,829

主な家計支出
家賃※2
17,000
簡易保険
10,000
自動車維持費
22,000
食費※3
30,000
有料テレビ
12,000
公共料金※4
13,000
通信費
15,000
交際費雑費※5
28,000
被服費※6
1,000
帰省費用※7
21,000
支出合計
169,000
昨年度の年収
約4,200,000
現在の預貯金
約100,000
※1
財形貯蓄を取り崩し、いま残高が10万円ほど
※2
(自己負担分)来年2月には住宅補助が減額予定
※3
朝食抜き、昼食は社員食堂、食材はもっぱら近くのスーパーで購入
※4
熱帯魚を飼っているため24時間ポンプ稼働
※5
最近結婚式出席が多い。駐輪場代、散髪代も含む
※6
洋服はあまり買わない。
※7
年2回帰省。1回当たり10万円はかかる

増えるサービス残業。ゆとりのある職場への転職も考える

 今後の収入を予測するうえで気になることがある。残業代カットだ。

 好況期のサラリーマンは、かつては残業代で稼いでいたもの。しかし裁量労働制の浸透や、過少申告も含む残業代規制の動きが進み、超過勤務しただけ全部残業代として支払われる、いわゆる「青天井」の職場は少なくなった。

 塚原さんの会社でももちろん時間外手当が支払われるが、実際は月15時間(3万円)で打ち止め。この時期は、実際には70時間ほど残業したのに、55時間分はただ働きのサービス残業になってしまった。

 「以前は残業代の7〜8割はちゃんとカウントされていましたが、2年ほど前から厳しくなりました。会社は業績が回復すれば元に戻すといっているんですが、いつになるやら。そもそも業績悪化は事業戦略の失敗から。私ら末端にしわ寄せされるのはたまらない」

 いっそのこと残業が少なければあきらめもつくが、仕事は繁忙で、みんなが毎月60時間以上は残業している。

 「このままだと、残業代がきちんと支払われる会社、あるいは残業そのものが少ないゆとりのある会社、どちらかに転職したくなっちゃいます。でも同業界だとどこも同じ状況なんでしょうね」

 半期ごとに個人業績の評価がある。高い評価を維持すれば、職務資格も上がり、給与のランクが上がる。塚原さんは1年半前に主任になったが、院卒としては普通の昇進で、同期の間での給与格差はほとんどない。ほかに、チームが特段の業績を挙げたときには年に一度、業績貢献制度、また特許申請時には個人が特許報奨制度の対象になる。しかし、得られる一時金は「お小遣い程度」だという。

 「世の中では成果主義がはやりらしいですが、僕らはあまり実感できないですね」

 心配事はもう1つある。来年春にはこれまで月額5万円支払われていた住宅補助手当が全面的になくなることだ。いまのアパート家賃は6万7000円。これまで自己負担分1万7000円で済んでいたのが、これがなくなると大変だ。もし結婚すれば別に社宅手当が出るのだが、その予定はいまのところない。独身寮設備もとうになく、単身者の住宅補助もカットとあっては、これからどうすればいいのか。

 「通勤の一部に自転車を使って交通費の一部を浮かしたり、スーパーでの買い物や公共料金もクレジットカードで支払って、ポイントを帰省時の航空機マイルに替えたりと、細かい工夫はしているんですけどねえ……」

 

Part3
エンジニアの収支バランスをファイナンシャルプランナーが診断

 お2人の了解を得て、この給与明細と支出・貯蓄状況を専門家に診断してもらった。アドバイスしてくれたのは、ファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんだ。

井戸美枝氏(いどみえ)
関西大学社会学部卒。1990年、神戸市で社会保険労務士事務所を開業。
その後、ファイナンシャルプランナー(CFP認定者)、キャリアカウンセラー(GCDF・CDA)などに業務を広げる。
現在は東京・関西でキャリアプランを含むライフプラン、保険、年金、介護などの公的保障を中心にコンサルティング、テレビ出演、講演、執筆などを行う。 『30代・40代から考える年金の本』(東洋経済新報社刊)など著書多数。
http://www.mie-ido.com/

住宅ローン、保険、食費を見直して収支トントンに

浅田さんの支出見直しポイント
住宅ローンの組み替え
生命保険の見直し
食費の節約

 浅田さんは毎月赤字ですね。赤字分はボーナスで補てんしているのでしょうか。これではなかなかお金はたまらないですね。お金をためるには収入を増やすか支出を減らすしかない。まずは支出を一定にする、ということが大原則です。

 浅田さんの支出を見ると、住宅ローンが高過ぎるような気がします。手取りの3分の1も払っています。すでにローンを組んでしまっているので仕方がないけれども、機会があれば一度見直すことをお勧めします。変動金利で借りているのであれば、固定金利に替えるなど、ローンの組み替えを検討することが必要かもしれません。

 生命保険が3万2000円というのも少し高いのでは。お子さんの学資保険も含めているということですが、子ども保険にはもう少し安いものもあります。死亡保障金も3000万円程度に抑えれば、支出額を減らすことができます。今後、医療保険を追加するにしても、通販などの安いもので十分でしょう。

 食費が7万円は高すぎです。外食が多いのでしょうか。ご本人は会社にいる間は社員食堂で食事をしてその分を給料から引かれているわけですし、お子さんがまだ小さいのですから、通常この方の家族構成だったら4万円までに落とせます。

 こうして支出を見直すことで、少なくとも収支トントンを目指しましょう。本当は毎月少しずつでも貯蓄に回すべきですが、それができなければボーナスは丸ごと貯蓄という体制を整えなければなりません。


支出管理のツメの甘さを反省し、天引き貯金額を増やす

塚原さんの貯蓄見直しポイント
カード明細できっちり支出管理
手取り3割を給与天引き型貯金に
200万円の貯蓄ができたら運用へ

 塚原さんは、収支のシートを見る限り、毎月10万円前後は残るはず。手取りの4割に近いお金。これ、どこいっちゃったんでしょうね。もしこのとおりの支出なら、ボーナスも全額貯蓄に振り向けることもできるはず。なのに、10万円しか預貯金がないって……。つまり、支出の管理がいいかげんということ。ずるずると使っているのではないでしょうか。

 財形貯蓄の2万円は偉いと思いますが、それを切り崩しているのであれば、元も子もありません。

 一方では、スーパーの買い物なども含めてできるだけクレジットカードを使って、ポイントをためるというお話で、その姿勢は賢いと思います。いまはwebサイトから月の途中でも明細を確認することができます。そこで支出を管理することができるのであれば、日常の買い物をクレジットカードで1つにまとめて決済するという方法は、決して悪いことではありません。

 こうした手だては正しいし、趣味にかけるお金も決して過大ではないけれども、支出管理のツメが甘いという印象を受けます。こういう方の場合は、まず何歳までにいくらためるという貯蓄目標を設定し、毎月ずるずると使ってしまいそうな分を最初から給与天引きの形で強制的に貯蓄に回すのが一番効果的です。

 銀行の自動積立定期預金などを思い切って月額10万円に設定してみては。最初からないのだと思えば、残ったお金でやりくりできるはず。その方が面倒がなくていいと思います。それでもどうしても難しいとなったら、後から積立額の設定を変えるのは自由ですから。

 一般的にサラリーパーソンなら手取りの2割は最低でも財形貯蓄を含めた貯金ができるものです。独身者なら3割、さらに節約家なら4割は可能です。財形も含めて先に給与天引き型の貯金をする。27万円の3割とすれば月8万円。これを2年続ければ200万円たまります。その段階で、次の運用を考えたいものです。


☆たまにはまじまじと見てみよう

 この話題について筆者はまったくコメントできる立場にない。自営業で収入が安定せず、青色申告はしているものの家計支出をきちんと管理していないからだ。とはいえ、たまにはよく研究することをお勧めしたい。きっとどこかに収支バランスを改善する余地はあるだろう。

 きっちりと毎日家計簿をつけなくても、おおよそ月にどのくらいの定期的な支出があるのかは把握しておきたい。全体を見渡せば何か1つくらいは惰性で払っているようなものが出てくるはずだ。本文でも指摘されているが保険はその可能性が高い。住宅購入後や幼い子を抱えている時期は必然的にリスクが高まり、掛け金も上がりがちだが、複数の保険でダブっている項目などもあるはず。定期的な支出を減らせば長期的な効果は高いだろう。

 ただし価値基準には個人差があるので、安易に他人と比較して無理に切り詰める必要はない。教会への寄付にしても、精神的な安定や人間関係の維持に必要なら無理に切り捨てるべきではないと思う。反動が出るからだ。

 自慢できないが、筆者は家計簿は付けない。常に支出を監視すると逆にストレスになって購買行動に走りがちだからだ。やはり大事なのは無理に支出を切り詰めることではなく、必要かどうかをよく判断することではないだろうか。

(加山恵美)


この記事は、Tech総研/リクルートの記事を再編集して掲載しています


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